日本教育心理学会第61回総会

講演情報

ポスター発表

[PF] ポスター発表 PF(01-67)

2019年9月15日(日) 16:00 〜 18:00 3号館 1階 (カフェテリア)

在席責任時間
奇数番号16:00~17:00
偶数番号17:00~18:00

[PF20] 保育士養成課程の保育実習事前指導(施設)におけるアクティブラーニングを意図した授業の影響

ワールドカフェの実施前後による施設実習自己効力感,施設実習不安,主体的な学習態度の変化

増南太志 (埼玉学園大学)

キーワード:アクティブラーニング、保育実習事前指導(施設)、実習に対する不安

問題と目的
 保育士養成課程の施設実習では,被虐待児や障害児者等との関りが求められることから,多くの学生が,実習前に不安を抱えやすく,意欲の低下につながることがある。アクティブラーニングの手法の1つであるワールドカフェは,カフェに近いくつろいだ雰囲気の中でディスカッション等を行うものであり,実習の事後指導で,学生へのポジティブな成果がみられることが報告されている。本研究は,ワールドカフェの実施前後で,施設実習自己効力感、施設実習不安、主体的な学習態度にどのような変化があるのかを検討した。
方  法
調査対象:A大学保育士養成課程に在籍する2年次生40名(男性12名,女性28名,19歳8か月~20歳7か月)。全員が実習未経験であった。
授業方法及び調査:2017年度に行われた実習事前指導のうち,11月29日(1回目)と12月6日(2回目)を著者が担当した際に本研究の実践と調査を行った。
 1回目の授業では,指導前調査として,後述する調査を実施し,ワールドカフェの手順を解説した後,その際用いる資料の作成を各自で行った。ディスカッションの材料となる資料は,施設の利用者の様子が示された複数の写真から,「気づいたこと」を書き込むというものであった。
 2回目の授業では,ワールドカフェを実施し,2回分の授業のまとめを行い,指導後調査として,後述する調査を再度実施した。
ワールドカフェの手順:①第1ラウンドでは,ディスカッションをしながら,各グループのテーブルに用意された模造紙に,各自の考えを文章やイラストで自由に表現した。②第2ラウンドでは,テーブルホスト以外のメンバーが,他のテーブルに分散するように移動した。テーブルホストが第1ラウンドの話し合いの内容を新メンバーに説明した後,再度ディスカッションを行いながら,模造紙に内容を追加した。③ギャラリーウォークでは,全員が自由に各テーブルを見て回り,内容を確認しながら,必要に応じて写真を撮るなどした。④第3ラウンドでは,最初のメンバーに戻り,第2ラウンドの話し合いの内容を共有した。
調査項目:施設実習自己効力感尺度(施設理解,利用者理解,向上心),施設実習不安尺度(事前理解,人間関係,活動内容)、主体的な学習態度尺度を調べるための項目を実施した。いずれも4件法であった。
結  果
各尺度の信頼性:指導前及び指導後調査の各尺度の信頼性を確認するため,クロンバックのα係数を算出した。本研究では信頼性の基準を0.7とした(Table 1)。その結果,指導前の「人間関係」が0.7を下回ったため,以降の分析では除外した。
指導効果の確認:施設実習自己効力感尺度,施設実習不安尺度,主体的な学習態度尺度に対して,指導の効果を確認するため,対応ありのt検定を行った(Table 2)。その結果,施設実習自己効力感尺度の「利用者理解」「向上心」が指導前よりも指導後で有意に高い値であり,効果量も中程度であった。「施設理解」は有意傾向であった。施設実習不安尺度については「事前理解」が指導後において有意に低く,効果量も中程度であった。「活動内容」は有意な変化は認められなかったが,効果量は小程度の大きさであった。「主体的な学習態度」は指導後において有意に高い値であり,効果量も中程度であった。
考  察
 ワールドカフェ実施の前後で,施設実習自己効力感の高まり,施設実習不安の低下,主体的な学習態度の向上が確認された。施設実習不安尺度の「活動内容」については,有意な変化は認められなかったものの,小程度の効果量が認められたため,サンプルサイズが小さいために有意な変化が現れなかった可能性がある。そのため,人数を増やしてより正確な分析を行う必要がある。