[PF24] 教育環境として課題がある学級集団におけるソーシャルスキルと承認感との関連
キーワード:ソーシャルスキル、教育環境として課題がある学級集団、承認感
問題と目的
武蔵・河村(2015)は,ソーシャルスキルは学級集団の状態によって差があり,親和的な学級と比べて教育環境として課題がある学級集団ではソーシャルスキルが発揮されていないことを明らかにしている。日本の学級集団について,河村(2010)は最低1年間メンバーが固定され,1日の大半を過ごし,学習面や生活面で子ども同士がかかわることが多い共同体の特性をもった閉鎖集団である日本の学級集団は,子どもたち一人一人に与える影響は,プラス面でもマイナス面でもとても大きいと指摘している。これらのことから親和的な学級と比べて教育環境として課題がある学級集団ではマイナスの影響があると思われる。さらに相川(2009)はソーシャルスキルの概念は一人の個人だけではなく,他者との相互作用場面を問題にしようすると指摘している。以上のことから親和的な学級と比べて教育環境として課題がある学級集団の相互作用場面では,ある児童がソーシャルスキルを発揮しても,相手や周りの児童はソーシャルスキルを発揮しないといったことが起こりやすいと考えられる。
河村(2003)は,小学生の学校生活においてソーシャルスキルが承認感に関係していることを明らかにしている。しかし,教育環境として課題がある学級集団において,ある児童がソーシャルスキルを発揮しても相手や周りの児童はソーシャルスキルを発揮しないといったことが起こりやすいと考えると,ソーシャルスキルの発揮は承認感と関連するのであろうか。教育環境として課題がある学級集団では,承認感とソーシャルスキルとの関連がなくなる,あるいは関連が弱くなる可能性が考えられるのではないだろうか。また,河村(2003)の先行研究から10年以上時間が経っており,学級集団の現状が変化している可能性も考えられるだろう。これらのことから本研究では,教育環境として課題がある学級集団における承認感とソーシャルスキルとの関連を明らかにする。
方 法
調査時期 2017年11月から12月に調査を実施。
調査対象 河村・武蔵(2015)は,集団の発達段階における学級集団状態の目安として,「親和的なまとまりのある学級集団」で満足群に50~60%の児童生徒がいる段階以前をかたさの見られる学級集団・ゆるみの見られる学級集団などとしており,本研究では,満足群の児童が50%に満たない学級を教育環境として課題がある学級集団とし,A県のA・B・C小学校320人(男子162人・女子158人)を対象とした。
測定用具 河村(1999)が作成した学級生活満足度尺度は承認感と被侵害感の計12項目から構成されており,本研究では,この中の承認感の項目を活用した。ソーシャルスキルについては,河村(2001)により開発された「児童が学級生活で必要とされるソーシャルスキル尺度を用いた。具体的には,友人の気分を害さないように配慮する,既存の関係を維持するという「配慮スキル」と,自分から新たな人間関係を形成したり深めたりするなどの「かかわりのスキル」により,児童の学級生活で活用しているソーシャルスキルの発揮の度合いを4件法で測定している質問紙である。
調査手続き 調査は集団方式で行われ,担任教師の指示のもと実施された。質問紙の回答の際に,担任教師がこの調査は成績とは関係ないことを児童に伝え,調査を行った。以上の手続きについては,学校長に調査の許可の求め,承諾を得て行った。
結 果
教育環境として課題がある学級集団におけるソーシャルスキルの発揮と承認感との関連を検討するために,ソーシャルスキル尺度の「配慮スキル得点」と「かかわりのスキル得点」および学級満足度尺度の「承認得点」の相関を算出した(Table 1)。その結果,「配慮スキル得点」および「かかわりのスキル得点」と「承認得点」との間に比較的強い正の相関が認められた。
考 察
教育環境として課題がある学級集団におけるソーシャルスキルの発揮は承認感と関連することからソーシャルスキルを発揮している児童は承認感が高く,ソーシャルスキルを発揮していない児童は承認感が低い。教育環境として課題がある学級集団においてソーシャルスキルの発揮は承認感に関連するにもかかわらず,親和的な学級と比べてソーシャルスキルが発揮されていない。教育環境として課題がある学級集団で児童のソーシャルスキル発揮を促す取組が必要だと考えられる。
武蔵・河村(2015)は,ソーシャルスキルは学級集団の状態によって差があり,親和的な学級と比べて教育環境として課題がある学級集団ではソーシャルスキルが発揮されていないことを明らかにしている。日本の学級集団について,河村(2010)は最低1年間メンバーが固定され,1日の大半を過ごし,学習面や生活面で子ども同士がかかわることが多い共同体の特性をもった閉鎖集団である日本の学級集団は,子どもたち一人一人に与える影響は,プラス面でもマイナス面でもとても大きいと指摘している。これらのことから親和的な学級と比べて教育環境として課題がある学級集団ではマイナスの影響があると思われる。さらに相川(2009)はソーシャルスキルの概念は一人の個人だけではなく,他者との相互作用場面を問題にしようすると指摘している。以上のことから親和的な学級と比べて教育環境として課題がある学級集団の相互作用場面では,ある児童がソーシャルスキルを発揮しても,相手や周りの児童はソーシャルスキルを発揮しないといったことが起こりやすいと考えられる。
河村(2003)は,小学生の学校生活においてソーシャルスキルが承認感に関係していることを明らかにしている。しかし,教育環境として課題がある学級集団において,ある児童がソーシャルスキルを発揮しても相手や周りの児童はソーシャルスキルを発揮しないといったことが起こりやすいと考えると,ソーシャルスキルの発揮は承認感と関連するのであろうか。教育環境として課題がある学級集団では,承認感とソーシャルスキルとの関連がなくなる,あるいは関連が弱くなる可能性が考えられるのではないだろうか。また,河村(2003)の先行研究から10年以上時間が経っており,学級集団の現状が変化している可能性も考えられるだろう。これらのことから本研究では,教育環境として課題がある学級集団における承認感とソーシャルスキルとの関連を明らかにする。
方 法
調査時期 2017年11月から12月に調査を実施。
調査対象 河村・武蔵(2015)は,集団の発達段階における学級集団状態の目安として,「親和的なまとまりのある学級集団」で満足群に50~60%の児童生徒がいる段階以前をかたさの見られる学級集団・ゆるみの見られる学級集団などとしており,本研究では,満足群の児童が50%に満たない学級を教育環境として課題がある学級集団とし,A県のA・B・C小学校320人(男子162人・女子158人)を対象とした。
測定用具 河村(1999)が作成した学級生活満足度尺度は承認感と被侵害感の計12項目から構成されており,本研究では,この中の承認感の項目を活用した。ソーシャルスキルについては,河村(2001)により開発された「児童が学級生活で必要とされるソーシャルスキル尺度を用いた。具体的には,友人の気分を害さないように配慮する,既存の関係を維持するという「配慮スキル」と,自分から新たな人間関係を形成したり深めたりするなどの「かかわりのスキル」により,児童の学級生活で活用しているソーシャルスキルの発揮の度合いを4件法で測定している質問紙である。
調査手続き 調査は集団方式で行われ,担任教師の指示のもと実施された。質問紙の回答の際に,担任教師がこの調査は成績とは関係ないことを児童に伝え,調査を行った。以上の手続きについては,学校長に調査の許可の求め,承諾を得て行った。
結 果
教育環境として課題がある学級集団におけるソーシャルスキルの発揮と承認感との関連を検討するために,ソーシャルスキル尺度の「配慮スキル得点」と「かかわりのスキル得点」および学級満足度尺度の「承認得点」の相関を算出した(Table 1)。その結果,「配慮スキル得点」および「かかわりのスキル得点」と「承認得点」との間に比較的強い正の相関が認められた。
考 察
教育環境として課題がある学級集団におけるソーシャルスキルの発揮は承認感と関連することからソーシャルスキルを発揮している児童は承認感が高く,ソーシャルスキルを発揮していない児童は承認感が低い。教育環境として課題がある学級集団においてソーシャルスキルの発揮は承認感に関連するにもかかわらず,親和的な学級と比べてソーシャルスキルが発揮されていない。教育環境として課題がある学級集団で児童のソーシャルスキル発揮を促す取組が必要だと考えられる。