[PF26] 人工知能による自律性支援認識可能性の検討
Keywords:自律性支援、人工知能、英会話
問題と背景
選択の自由や論理的な根拠を与え,ネガティブな感情にも共感するといった行動は自律性支援と定義され,自律的な学習意欲を育む代表的な方法として挙げられる (Deci & Ryan, 2000)。近年,人工知能 (Artificial Intelligence, AI) による学習支援が学習効果に与える影響について注目が集まっている (Stickler & Hamper, 2015; Fryer et al., 2016)。もしAIが人間のように自律性支援をすることができれば,自律的な学習意欲を育む環境をより全面的に構築できると考えられる。
しかし,生徒が教師の自律性支援を認識できない場合,自律性支援による学習意欲や学業成績への影響は大幅に弱まると指摘されている (安藤, 2001)。 AIが自律性支援を行うことは技術的には困難ではないが,その自律性支援は生徒側から認識されることができるかどうかは不明である。そのため,本研究ではAIによる自律性支援の認識可能性を検討した。また,E-learningを行う際に,単純な音声や文字よりも人間のようなインタフェースがあったほうが,学習者の動機づけが高いと報告されているため(Johnson, Rickel & Lester, 2000),本研究ではAIによる自律性支援に対する認識は写真の有り無しによって変わるかどうかも検討した。
方 法
実験参加者 大学生169名 (女性112名、平均年齢19.87才)
実験協力者 英語が流暢な留学生6名 (中国人2名,韓国人1名,インド人1名,フランス人1名,ガーナ人1名)
実験デザイン 3 (写真なし人間/写真ありAI/写真なしAI)×2 (自律性支援あり/自律性支援なし)の実験者間デザイン
測定内容 認識した自律性支援Learning Climate Questionnaire (Williams & Deci, 1996)
材料 ノートパソコン2台(Let's note SZ), 英文テキスト読み上げサイト(Google Translate), ネット電話サービス (Google Hangouts).
手続き 別々の部屋にいる参加者と留学生がパソコンを用いて,英会話を10分間行った。人間パートナー条件の参加者には,日本に来たばかりの留学生と英語で会話すると教示した。会話する際に,参加者のパソコンの画面に人影を相手のプロフィル写真として表示した。AIパートナー参加者には,開発されたばかりの会話型のAIと英会話を練習すると教示したが,実は別の部屋で留学生がグーグル翻訳を使って会話を行った。写真ありAIパートナー条件の参加者には,白人女性のイラストをプロフィル写真として表示した。写真なしAIパートナー条件の参加者には,人影が表示されていた。また,自律性支援なし条件では,留学生が会話のトピックを決めて,参加者とそれについて会話をしていた。自律性支援あり条件では第一に,参加者は英会話のパートナーとお互いに自己紹介をした。第二に,パートナーが参加者のネガティブな感情を認めるようにした。第三に,参加者が英会話のトピックを選択した。第四に,会話終了後参加者は努力について褒められた。そのあと,参加者の認識した自律性支援を測定した。
結果と考察
Table 1は各条件認識した自律性支援の平均値及び標準偏差を示した。AIによる自律性支援の認識可能性及びAIによる自律性支援に対する認識は写真の有り無しによって変わるかどうかを検討するため,一元配置分散分析を行った。その結果,自律性支援あり条件のほうが認識した自律性支援が有意に高かった (F (1, 157) = 33.925, p < .001, Partial〖 η〗^2= .178)。また,パートナーの主効果が有意であったため (F (2, 157) = 21.774, p < .001, Partial〖 η〗^2= .217), Scheffeの多重比較を行った。その結果,人間条件は写真ありAI条件と写真なしAI条件よりそれぞれ0.1%水準で有意に高く,写真ありAI条件は写真なしAI条件より10%水準で高かった。有意な交互作用は見られなかった。
以上の結果から,参加者は会話の相手が人工知能であると教示される場合でも,相手による自律性支援を認識できることが分かった。特に,顔画像をつけたほうが,人工知能による自律性支援はより認識されやすい傾向があった。今後の研究では,人工知能による自律性支援が学習者の学習意欲やパフォーマンスに与える影響について,人間による自律性支援の効果と比較すべきだろう。
選択の自由や論理的な根拠を与え,ネガティブな感情にも共感するといった行動は自律性支援と定義され,自律的な学習意欲を育む代表的な方法として挙げられる (Deci & Ryan, 2000)。近年,人工知能 (Artificial Intelligence, AI) による学習支援が学習効果に与える影響について注目が集まっている (Stickler & Hamper, 2015; Fryer et al., 2016)。もしAIが人間のように自律性支援をすることができれば,自律的な学習意欲を育む環境をより全面的に構築できると考えられる。
しかし,生徒が教師の自律性支援を認識できない場合,自律性支援による学習意欲や学業成績への影響は大幅に弱まると指摘されている (安藤, 2001)。 AIが自律性支援を行うことは技術的には困難ではないが,その自律性支援は生徒側から認識されることができるかどうかは不明である。そのため,本研究ではAIによる自律性支援の認識可能性を検討した。また,E-learningを行う際に,単純な音声や文字よりも人間のようなインタフェースがあったほうが,学習者の動機づけが高いと報告されているため(Johnson, Rickel & Lester, 2000),本研究ではAIによる自律性支援に対する認識は写真の有り無しによって変わるかどうかも検討した。
方 法
実験参加者 大学生169名 (女性112名、平均年齢19.87才)
実験協力者 英語が流暢な留学生6名 (中国人2名,韓国人1名,インド人1名,フランス人1名,ガーナ人1名)
実験デザイン 3 (写真なし人間/写真ありAI/写真なしAI)×2 (自律性支援あり/自律性支援なし)の実験者間デザイン
測定内容 認識した自律性支援Learning Climate Questionnaire (Williams & Deci, 1996)
材料 ノートパソコン2台(Let's note SZ), 英文テキスト読み上げサイト(Google Translate), ネット電話サービス (Google Hangouts).
手続き 別々の部屋にいる参加者と留学生がパソコンを用いて,英会話を10分間行った。人間パートナー条件の参加者には,日本に来たばかりの留学生と英語で会話すると教示した。会話する際に,参加者のパソコンの画面に人影を相手のプロフィル写真として表示した。AIパートナー参加者には,開発されたばかりの会話型のAIと英会話を練習すると教示したが,実は別の部屋で留学生がグーグル翻訳を使って会話を行った。写真ありAIパートナー条件の参加者には,白人女性のイラストをプロフィル写真として表示した。写真なしAIパートナー条件の参加者には,人影が表示されていた。また,自律性支援なし条件では,留学生が会話のトピックを決めて,参加者とそれについて会話をしていた。自律性支援あり条件では第一に,参加者は英会話のパートナーとお互いに自己紹介をした。第二に,パートナーが参加者のネガティブな感情を認めるようにした。第三に,参加者が英会話のトピックを選択した。第四に,会話終了後参加者は努力について褒められた。そのあと,参加者の認識した自律性支援を測定した。
結果と考察
Table 1は各条件認識した自律性支援の平均値及び標準偏差を示した。AIによる自律性支援の認識可能性及びAIによる自律性支援に対する認識は写真の有り無しによって変わるかどうかを検討するため,一元配置分散分析を行った。その結果,自律性支援あり条件のほうが認識した自律性支援が有意に高かった (F (1, 157) = 33.925, p < .001, Partial〖 η〗^2= .178)。また,パートナーの主効果が有意であったため (F (2, 157) = 21.774, p < .001, Partial〖 η〗^2= .217), Scheffeの多重比較を行った。その結果,人間条件は写真ありAI条件と写真なしAI条件よりそれぞれ0.1%水準で有意に高く,写真ありAI条件は写真なしAI条件より10%水準で高かった。有意な交互作用は見られなかった。
以上の結果から,参加者は会話の相手が人工知能であると教示される場合でも,相手による自律性支援を認識できることが分かった。特に,顔画像をつけたほうが,人工知能による自律性支援はより認識されやすい傾向があった。今後の研究では,人工知能による自律性支援が学習者の学習意欲やパフォーマンスに与える影響について,人間による自律性支援の効果と比較すべきだろう。