[PF31] 人はなぜ「ながら勉強」をするのか
学習に対する印象による「ながら習慣」への影響
キーワード:ながら勉強、学習習慣
問題と目的
「ながら勉強」とは,学習とは直接関連のない行為を並行的に行いながら学習に取り組むことと考えられている。今日の携帯型音楽機器やスマートフォンの発展による音楽聴取の容易さも手伝い,「ながら勉強」は頻繁に見かける行為となっている。「ながら勉強」はありふれた光景であり, 珍しいものではない。人はなぜこのような行為をおこなうのかを実証的に明らかにしたい。
本研究の目的は以下の2つである。1つは, 「ながら勉強」がどのような学習内容でおこなわれているか, また, どのように行われているかを調べることである。そしてもう1つは, どのような要因が「ながら勉強」の習慣に影響を与えているかを探ることである。
方 法
参加者 関西の私立大学の大学生240名(男性42名,女性195名,不明3名)。
調査時期 2018年10月
質問紙 「ながら勉強」のおこない方に関する18項目(BGMの効果に関する6項目,学習内容に関する11項目,BGMの種類に関する3項目),普段の音楽および学習習慣に関する4項目,日常的注意経験に関する4項目,「ながら勉強」の印象に関する4項目,「ながら勉強」の経験に関する6項目,学習時間に関する4項目,学習環境や音楽以外の「ながら勉強」に関する7項目によって成る質問紙を作成した。
結 果
「ながら勉強」をおこなう学習内容
現在の「ながら勉強」の習慣によって参加者を「ながら群」「非ながら群」「中間群」の3つに分類し,「ながら群」に関してどのような学習行為で「ながら勉強」をおこなうかを調べた。最も「ながら勉強」をおこなうと回答した人が多かったのは「ノート整理」であった。対して,最も「ながら勉強」をおこなわない学習内容は「作文」で71.8%が「ながら勉強」をおこなわないと回答した。
「ながら勉強」の印象
「ながら勉強」を良いことであると思うかどうかたずねたところ,全体の27.9%が良いことだと思うと回答し,38.4%が思わないと回答した。また,「ながら勉強」をやめたほうが良いと思うかどうかに対しては,35.4%がやめたほうが良いと回答した。
「ながら勉強」の効果
インタビュー調査の結果から,「ながら勉強」をおこなう理由を「遮断」「高揚」「沈静」「集中」「導入」の5つに分類し,それらを「ながら勉強」の効果とした。
「ながら群」に関してどの効果をより感じているのかを調べたところ,最もよく感じていたのは音楽を聞くことによって勉強へのモチベーションがあがるという「高揚」の効果であった。次に,周りの音を遮断する「遮断」の効果が多かった。
勉強への印象による「ながら習慣」の差
実態調査から,「ながら群」は勉強をするという嫌な行為に向き合う際に音楽を聞くという好きな行為を平行し,ネガティブな感情を軽減しようとしている可能性が示唆された。これを確かめるために,勉強をすることが好きかどうかによって「ながら勉強」の習慣に差があるかを調べた。t検定をおこなったところ,有意な差が見られた(t=2.17, df=59.93, p<.05)。平均の差を見ると,勉強をすることが好きではないと感じているほど,「ながら勉強」をおこなっていることが明らかになった。
考 察
「ながら勉強」を良いことであると感じている人は決して多くない。しかし,「ながら勉強」をしている人を見たことがあるかという質問には91.3%が「あてはまる」「ややあてはまる」と回答しており,「ながら勉強」が珍しい行為ではないことが示された。
勉強に対する好悪によって,「ながら勉強」の習慣に差が見られるかを調べたところ,勉強が好きでない方が,「ながら勉強」をよくおこなうことが分かった。また,「ながら群」は音楽が勉強中に気分を盛り上げたり,周囲の音を遮断したりするという効果をよく感じていることが明らかになった。これらのことから,「ながら群」は,勉強にポジティブに向き合うための効果を期待して音楽を聞いていることが示唆された。
今回の調査によって,勉強への印象によって「ながら勉強」の習慣に差がみられることが明らかになった。今後は,「ながら勉強」の習慣と学習時間や勉強への集中の度合などとの関連を調査し,実際に音楽を聞くという行為が勉強へ向き合う助けとなっているのかどうかを調べたい。
「ながら勉強」とは,学習とは直接関連のない行為を並行的に行いながら学習に取り組むことと考えられている。今日の携帯型音楽機器やスマートフォンの発展による音楽聴取の容易さも手伝い,「ながら勉強」は頻繁に見かける行為となっている。「ながら勉強」はありふれた光景であり, 珍しいものではない。人はなぜこのような行為をおこなうのかを実証的に明らかにしたい。
本研究の目的は以下の2つである。1つは, 「ながら勉強」がどのような学習内容でおこなわれているか, また, どのように行われているかを調べることである。そしてもう1つは, どのような要因が「ながら勉強」の習慣に影響を与えているかを探ることである。
方 法
参加者 関西の私立大学の大学生240名(男性42名,女性195名,不明3名)。
調査時期 2018年10月
質問紙 「ながら勉強」のおこない方に関する18項目(BGMの効果に関する6項目,学習内容に関する11項目,BGMの種類に関する3項目),普段の音楽および学習習慣に関する4項目,日常的注意経験に関する4項目,「ながら勉強」の印象に関する4項目,「ながら勉強」の経験に関する6項目,学習時間に関する4項目,学習環境や音楽以外の「ながら勉強」に関する7項目によって成る質問紙を作成した。
結 果
「ながら勉強」をおこなう学習内容
現在の「ながら勉強」の習慣によって参加者を「ながら群」「非ながら群」「中間群」の3つに分類し,「ながら群」に関してどのような学習行為で「ながら勉強」をおこなうかを調べた。最も「ながら勉強」をおこなうと回答した人が多かったのは「ノート整理」であった。対して,最も「ながら勉強」をおこなわない学習内容は「作文」で71.8%が「ながら勉強」をおこなわないと回答した。
「ながら勉強」の印象
「ながら勉強」を良いことであると思うかどうかたずねたところ,全体の27.9%が良いことだと思うと回答し,38.4%が思わないと回答した。また,「ながら勉強」をやめたほうが良いと思うかどうかに対しては,35.4%がやめたほうが良いと回答した。
「ながら勉強」の効果
インタビュー調査の結果から,「ながら勉強」をおこなう理由を「遮断」「高揚」「沈静」「集中」「導入」の5つに分類し,それらを「ながら勉強」の効果とした。
「ながら群」に関してどの効果をより感じているのかを調べたところ,最もよく感じていたのは音楽を聞くことによって勉強へのモチベーションがあがるという「高揚」の効果であった。次に,周りの音を遮断する「遮断」の効果が多かった。
勉強への印象による「ながら習慣」の差
実態調査から,「ながら群」は勉強をするという嫌な行為に向き合う際に音楽を聞くという好きな行為を平行し,ネガティブな感情を軽減しようとしている可能性が示唆された。これを確かめるために,勉強をすることが好きかどうかによって「ながら勉強」の習慣に差があるかを調べた。t検定をおこなったところ,有意な差が見られた(t=2.17, df=59.93, p<.05)。平均の差を見ると,勉強をすることが好きではないと感じているほど,「ながら勉強」をおこなっていることが明らかになった。
考 察
「ながら勉強」を良いことであると感じている人は決して多くない。しかし,「ながら勉強」をしている人を見たことがあるかという質問には91.3%が「あてはまる」「ややあてはまる」と回答しており,「ながら勉強」が珍しい行為ではないことが示された。
勉強に対する好悪によって,「ながら勉強」の習慣に差が見られるかを調べたところ,勉強が好きでない方が,「ながら勉強」をよくおこなうことが分かった。また,「ながら群」は音楽が勉強中に気分を盛り上げたり,周囲の音を遮断したりするという効果をよく感じていることが明らかになった。これらのことから,「ながら群」は,勉強にポジティブに向き合うための効果を期待して音楽を聞いていることが示唆された。
今回の調査によって,勉強への印象によって「ながら勉強」の習慣に差がみられることが明らかになった。今後は,「ながら勉強」の習慣と学習時間や勉強への集中の度合などとの関連を調査し,実際に音楽を聞くという行為が勉強へ向き合う助けとなっているのかどうかを調べたい。