[PF42] 大学生のSense of Coherenceと自己肯定感の関係
主観的幸福感と抑うつに対するSOCの独自性の確認
キーワード:Sense of Coherence、自己肯定感、大学生
問題と目的
第3期教育振興基本計画(文部科学省,2018)では,第2期教育振興基本計画で用いられていた自尊感情(自尊心)という用語ではなく,自己肯定感という用語が登場している。自己肯定感とは,「自己に対して肯定的で,好ましく思うような態度や感情」(田中,2005,p.175)と定義され,自尊心が含んでいる自己への尊敬の要素を含まないものである。自己肯定感は自尊心よりも,より日本人に適した概念であると考えられる(田中,2005)。
Sense of Coherence(SOC)とは,「ストレス対処能力」とされ,身体的・精神的健康を予測する概念である(山崎,2008)。SOCは,「その人に浸みわたった,ダイナミックではあるが持続する確信の感覚によって表現される世界(生活世界)規模の志向性」と定義される(Antonovsky,1987 山崎・吉井監訳 2001,p.21)。
本研究では,SOCと自己肯定感の関係について,自己肯定感によってSOCがどの程度説明されるのかを確認する。その上で,SOCと主観的幸福感,SOCと抑うつとの関係について,SOCは自己肯定感には含まれていない独自の効果を有しているか否かを検討する。これにより教育場面でSOCに注目する有効性を指摘することが本研究の目的である。
方 法
調査時期 2018年11月初頭〜中旬
被調査者 地方国立A大学と関西圏の私立B大学の大学生293名
分析対象者 調査に同意し,不適切な回答や欠損値がなかった233名(男性:115名,女性:115名,性別不詳者3名,平均年齢19.23歳(SD=1.15))
調査内容(本稿で報告しないものは省略)
1.人生の志向性に関する質問票(Antonovsky,1987 山崎・吉井監訳 2001) 29項目7件法。
2.日本版主観的幸福感尺度(曽我部・本村,2010) 4項目4件法を7件法で使用。
3.自己肯定感尺度Ver.2(田中,2005) 8項目
4.邦訳版the Center for Epidemiologic Studies Depression Scale(島・鹿野・北村・浅井,1985) 20項目4件。
倫理審査 大阪大学大学院人間科学研究科教育学系の研究倫理審査を経て,倫理的に配慮し研究を行った。
結 果
各尺度についてα係数を算出した結果,α=.79〜.86の値が確認された。また,自己肯定感を説明変数,SOCを目的変数とした単回帰分析を実施した。分析に先立って,各変数の標準化を行なった。その結果,標準変回帰係数はβ=.77(p≤.001)であり,決定係数はR2=.59であった。次に,自己肯定感とSOCを説明変数,主観的幸福感を目的変数とした階層的重回帰分析と,自己肯定感とSOCを説明変数,抑うつを目的変数とした階層的重回帰分析 を実施した。結果をTable 1に示す。
考 察
単回帰分析の結果から,SOCと自己肯定感は強い正の相関関係にあり,自己肯定感でSOCの分散の約59%が説明されたことから,SOCは自己肯定感を相当程度含有している可能性が示唆された。
主観的幸福感に対する階層的重回帰分析の結果から,Step 1 の決定係数はR2=.49であることから,主観的幸福感の約49%が自己肯定感の要素によって説明可能であり,Step 2 の決定係数は R2=.54 であることから,増分の約5%が SOCの独自の要素によって新たに説明可能になった部分であると考えられた。
また,抑うつに対する階層的重回帰分析の結果から,Step 1 の決定係数は R2=.45であることから,抑うつの約45%が自己肯定感の要素によって説明可能であり,Step 2 の決定係数はR2=.56であることから,増分の約11%がSOCの独自の要素によって新たに説明可能になった部分であると考えられた。
以上の結果から,SOCは主観的幸福感と抑うつに対して,自己肯定感には含まれていない独自の効果を有している可能性が示唆された。
第3期教育振興基本計画(文部科学省,2018)では,第2期教育振興基本計画で用いられていた自尊感情(自尊心)という用語ではなく,自己肯定感という用語が登場している。自己肯定感とは,「自己に対して肯定的で,好ましく思うような態度や感情」(田中,2005,p.175)と定義され,自尊心が含んでいる自己への尊敬の要素を含まないものである。自己肯定感は自尊心よりも,より日本人に適した概念であると考えられる(田中,2005)。
Sense of Coherence(SOC)とは,「ストレス対処能力」とされ,身体的・精神的健康を予測する概念である(山崎,2008)。SOCは,「その人に浸みわたった,ダイナミックではあるが持続する確信の感覚によって表現される世界(生活世界)規模の志向性」と定義される(Antonovsky,1987 山崎・吉井監訳 2001,p.21)。
本研究では,SOCと自己肯定感の関係について,自己肯定感によってSOCがどの程度説明されるのかを確認する。その上で,SOCと主観的幸福感,SOCと抑うつとの関係について,SOCは自己肯定感には含まれていない独自の効果を有しているか否かを検討する。これにより教育場面でSOCに注目する有効性を指摘することが本研究の目的である。
方 法
調査時期 2018年11月初頭〜中旬
被調査者 地方国立A大学と関西圏の私立B大学の大学生293名
分析対象者 調査に同意し,不適切な回答や欠損値がなかった233名(男性:115名,女性:115名,性別不詳者3名,平均年齢19.23歳(SD=1.15))
調査内容(本稿で報告しないものは省略)
1.人生の志向性に関する質問票(Antonovsky,1987 山崎・吉井監訳 2001) 29項目7件法。
2.日本版主観的幸福感尺度(曽我部・本村,2010) 4項目4件法を7件法で使用。
3.自己肯定感尺度Ver.2(田中,2005) 8項目
4.邦訳版the Center for Epidemiologic Studies Depression Scale(島・鹿野・北村・浅井,1985) 20項目4件。
倫理審査 大阪大学大学院人間科学研究科教育学系の研究倫理審査を経て,倫理的に配慮し研究を行った。
結 果
各尺度についてα係数を算出した結果,α=.79〜.86の値が確認された。また,自己肯定感を説明変数,SOCを目的変数とした単回帰分析を実施した。分析に先立って,各変数の標準化を行なった。その結果,標準変回帰係数はβ=.77(p≤.001)であり,決定係数はR2=.59であった。次に,自己肯定感とSOCを説明変数,主観的幸福感を目的変数とした階層的重回帰分析と,自己肯定感とSOCを説明変数,抑うつを目的変数とした階層的重回帰分析 を実施した。結果をTable 1に示す。
考 察
単回帰分析の結果から,SOCと自己肯定感は強い正の相関関係にあり,自己肯定感でSOCの分散の約59%が説明されたことから,SOCは自己肯定感を相当程度含有している可能性が示唆された。
主観的幸福感に対する階層的重回帰分析の結果から,Step 1 の決定係数はR2=.49であることから,主観的幸福感の約49%が自己肯定感の要素によって説明可能であり,Step 2 の決定係数は R2=.54 であることから,増分の約5%が SOCの独自の要素によって新たに説明可能になった部分であると考えられた。
また,抑うつに対する階層的重回帰分析の結果から,Step 1 の決定係数は R2=.45であることから,抑うつの約45%が自己肯定感の要素によって説明可能であり,Step 2 の決定係数はR2=.56であることから,増分の約11%がSOCの独自の要素によって新たに説明可能になった部分であると考えられた。
以上の結果から,SOCは主観的幸福感と抑うつに対して,自己肯定感には含まれていない独自の効果を有している可能性が示唆された。