[PF46] 子育てをする親の認知行動的タイプの差異が子どもの適応行動に及ぼす影響
Keywords:養育行動、随伴性知覚、育児信念
問題と目的
従来,子どもの適応行動を増加させるような子育てをする親の状態像として,育児ストレスの低い親や望ましい養育行動を遂行できる親などが示されている(足達他,2000)。
一方,そのような親であっても,実際の親子の相互作用を踏まえると親の関わりが子どもの適応行動の増加に必ずしも機能しないことが指摘されている(久保・岩坂,2013)。この背景として,親側の育児に対する価値観などを示す育児信念(清水,2003)や,養育行動後の子どもの反応の予測を示す随伴性知覚(野口,2003),子どもの行動に対する認知(中谷・中谷,2006)などの要因によって,実際には親子の相互作用が機能していない可能性があると考えられる。
しかしながら,これらの要因がどのような様相によって親子の相互作用に影響を及ぼすかは必ずしも明らかにされていない。そこで本研究では,親の認知行動的特徴のタイプが子どもの適応行動に及ぼす影響を検討することを目的とした。
方 法
調査対象者 関東の幼稚園および保育園に在籍する3歳から6歳(平均年齢5.0±0.9歳)の幼児の母親235名(平均年齢36.8±5.6歳)を分析対象とした。
調査材料 (a) 機能的養育行動:養育スキル尺度(立元他,2001)を本研究にて一部改変,(b)随伴性知覚:養育スキル尺度(立元他,2001)における養育行動の頻度得点と,子どもの反応得点の差分値,(c)育児信念尺度:本研究にて作成,(d) 育児ストレス反応尺度(日下部・坂野,2001),(e)子どもの行動に対する認知(中谷・中谷,2006),(f)サポート知覚:育児ソーシャルサポート尺度(原口・手島,2006),(g)育児エフィカシー尺度(田坂,2003),(h) 幼児版子どもの社会的行動評価尺度(立元,2011)を用いた。
倫理的配慮 本研究は早稲田大学「人を対象とする研究に関する倫理審査委員会」の承認を得て実施された(承認番号:2018-288)。
結果と考察
親の各認知行動的要因に対してWard法による階層的クラスタ分析を行った。その結果,3つの解釈可能なクラスタが得られた(Figure 1)。第1クラスタは,随伴性知覚や育児サポート,エフィカシーが高いことから「良好型」(n = 31),第2クラスタは,子どもの反応をポジティブに捉えることができることから「受容型」(n = 125),第3クラスタは,育児ストレスが高く,子どもの反応をネガティブに捉える傾向にあるため,「消極型」(n = 79)と解釈した。また,各クラスタを独立変数,子どもの適応行動を従属変数とした一要因分散分析を行ったところ,クラスタの主効果が有意であり(F (2,232) = 9.94, p < .001),多重比較の結果,「良好型」が「受容型」や「消極型」に比べて,子どもの適応行動を有意に予測することが示された(p < .001)。
以上の結果から,子どもの適応行動の増加を考えると,親の状態像として子どもの反応をポジティブに捉えられるということは必ずしも機能的ではなく,子どもの反応を適切に予測しながら機能的な養育行動を遂行できるかどうかが重要であると考えられる。そのため今後は,さまざまな認知行動的特徴をもつ親の状態像も踏まえた子育て支援にも焦点を当てる必要があると考えられる。
従来,子どもの適応行動を増加させるような子育てをする親の状態像として,育児ストレスの低い親や望ましい養育行動を遂行できる親などが示されている(足達他,2000)。
一方,そのような親であっても,実際の親子の相互作用を踏まえると親の関わりが子どもの適応行動の増加に必ずしも機能しないことが指摘されている(久保・岩坂,2013)。この背景として,親側の育児に対する価値観などを示す育児信念(清水,2003)や,養育行動後の子どもの反応の予測を示す随伴性知覚(野口,2003),子どもの行動に対する認知(中谷・中谷,2006)などの要因によって,実際には親子の相互作用が機能していない可能性があると考えられる。
しかしながら,これらの要因がどのような様相によって親子の相互作用に影響を及ぼすかは必ずしも明らかにされていない。そこで本研究では,親の認知行動的特徴のタイプが子どもの適応行動に及ぼす影響を検討することを目的とした。
方 法
調査対象者 関東の幼稚園および保育園に在籍する3歳から6歳(平均年齢5.0±0.9歳)の幼児の母親235名(平均年齢36.8±5.6歳)を分析対象とした。
調査材料 (a) 機能的養育行動:養育スキル尺度(立元他,2001)を本研究にて一部改変,(b)随伴性知覚:養育スキル尺度(立元他,2001)における養育行動の頻度得点と,子どもの反応得点の差分値,(c)育児信念尺度:本研究にて作成,(d) 育児ストレス反応尺度(日下部・坂野,2001),(e)子どもの行動に対する認知(中谷・中谷,2006),(f)サポート知覚:育児ソーシャルサポート尺度(原口・手島,2006),(g)育児エフィカシー尺度(田坂,2003),(h) 幼児版子どもの社会的行動評価尺度(立元,2011)を用いた。
倫理的配慮 本研究は早稲田大学「人を対象とする研究に関する倫理審査委員会」の承認を得て実施された(承認番号:2018-288)。
結果と考察
親の各認知行動的要因に対してWard法による階層的クラスタ分析を行った。その結果,3つの解釈可能なクラスタが得られた(Figure 1)。第1クラスタは,随伴性知覚や育児サポート,エフィカシーが高いことから「良好型」(n = 31),第2クラスタは,子どもの反応をポジティブに捉えることができることから「受容型」(n = 125),第3クラスタは,育児ストレスが高く,子どもの反応をネガティブに捉える傾向にあるため,「消極型」(n = 79)と解釈した。また,各クラスタを独立変数,子どもの適応行動を従属変数とした一要因分散分析を行ったところ,クラスタの主効果が有意であり(F (2,232) = 9.94, p < .001),多重比較の結果,「良好型」が「受容型」や「消極型」に比べて,子どもの適応行動を有意に予測することが示された(p < .001)。
以上の結果から,子どもの適応行動の増加を考えると,親の状態像として子どもの反応をポジティブに捉えられるということは必ずしも機能的ではなく,子どもの反応を適切に予測しながら機能的な養育行動を遂行できるかどうかが重要であると考えられる。そのため今後は,さまざまな認知行動的特徴をもつ親の状態像も踏まえた子育て支援にも焦点を当てる必要があると考えられる。