[PG46] Relative Autonomy Indexによる登校への動機づけの検討
(1)小学生について
キーワード:登校への動機づけ
問題と目的
小中学生の登校への動機づけは,自己決定理論に則って「外的理由」「取入れ的理由」「同一化的理由」「内発的理由」の4因子構造を成すことが明らかとなっている(五十嵐・茅野, 2018a)。また,自己決定性の高い登校への動機づけは,不登校傾向の低さと関連する(五十嵐・茅野, 2017;2018b)などの知見も見出されている。しかしながら,岡田(2005)は,動機づけの自己決定性を測定する際,より正規性を満たしやすいRAI(Relative Autonomy Index)を活用することが有用であると述べている。これは,自己決定性の程度を表すものとして,Grolnick & Ryan(1989)などが提唱しているものである。しかしながら登校への動機づけに関してはRAIによる検討がなされておらず,五十嵐・茅野(2018a)も今後の課題として指摘している。よって本研究では,登校への動機づけをRAIの観点から検討し,学校生活や不登校傾向との関連を検証することを目的とする。特に,本稿では小学生について報告する。
方 法
調査対象 調査対象はA県内の小学校2校に通う小学生4~6年生296名(4年生男子31名,4年生女子54名,5年生男子42名,5年生女子52名,6年生男子56名,6年生女子61名)であった。
調査内容 (1)登校への動機づけ尺度(五十嵐・茅野, 2018a):「外的理由」「取入れ的理由」「同一化的理由」「内発的理由」の4因子から成る。4件法。この尺度をもとに,岡田(2005)などが示す計算式((− 2×外的理由)+(− 1×取入れ的理由)+(1×同一化的理由)+(2×内発的理由))を用いて,RAIを算出する。取り得る値の範囲は,-9~+9である。(2)学校生活尺度(江村・大久保, 2012):「教師との関係」「友人との関係」「学業」の3因子から成る。4件法。(3)不登校傾向尺度(五十嵐, 2015):「全般的な登校意欲の喪失傾向」「享楽的活動の優先傾向」「心理的な不調傾向」の3因子から成る。4件法。
調査時期および実施方法 2016年10月上旬~12月中旬に,学級内において,調査協力者である担任が無記名で一斉に実施し,その場で回答・回収された。
結果と考察
1.RAIによる群分け
まず,対象者のRAIを算出し,それをもとに対象者を群分けすることとした。群分けにあたっては,まずRAIが負の値である者を抽出した。その後,RAIの正の値の中央値である4.5を基準に対象者をさらに群分けした。その結果,RAIが負の値である者(外的動機づけ傾向群)が30名,RAIが0.0~4.5である者(内的動機づけ傾向低群)が77名,RAIが4.5~9.0である者(内的動機づけ傾向高群)が189名であった。
2.RAI群による学校生活および不登校傾向の違い
RAI群によって学校生活および不登校傾向に違いがあるかを明らかにするため,RAI群を要因とする1要因分散分析を実施した。その結果,RAIが高い群ほど学校生活を良好に捉え,不登校傾向が低い(F[2/295]=21.02~98.18, p<.001)ことが明らかとなった。
3.RAI群による学校生活と不登校傾向との関連の違い
RAI群によって学校生活と不登校傾向との関連性に違いがあるかを明らかにするため,RAI群別に学校生活と不登校傾向とのピアソンの積率相関係数を算出した(Table 1)。その結果,教師との関係が不登校傾向を低減させるのは,登校への動機づけが高い場合に限られることが示された。また,登校への動機づけが低い場合には,学業のみが不登校傾向を低減させることも示された。さらに,友人との関係が良好である場合に「享楽的活動の優先傾向」が高まってしまう場合は,内発的動機づけ傾向低群に限られることも示された。このように,不登校傾向の増減に関与する学校生活の状況は,登校への動機づけによって異なることが示された。
小中学生の登校への動機づけは,自己決定理論に則って「外的理由」「取入れ的理由」「同一化的理由」「内発的理由」の4因子構造を成すことが明らかとなっている(五十嵐・茅野, 2018a)。また,自己決定性の高い登校への動機づけは,不登校傾向の低さと関連する(五十嵐・茅野, 2017;2018b)などの知見も見出されている。しかしながら,岡田(2005)は,動機づけの自己決定性を測定する際,より正規性を満たしやすいRAI(Relative Autonomy Index)を活用することが有用であると述べている。これは,自己決定性の程度を表すものとして,Grolnick & Ryan(1989)などが提唱しているものである。しかしながら登校への動機づけに関してはRAIによる検討がなされておらず,五十嵐・茅野(2018a)も今後の課題として指摘している。よって本研究では,登校への動機づけをRAIの観点から検討し,学校生活や不登校傾向との関連を検証することを目的とする。特に,本稿では小学生について報告する。
方 法
調査対象 調査対象はA県内の小学校2校に通う小学生4~6年生296名(4年生男子31名,4年生女子54名,5年生男子42名,5年生女子52名,6年生男子56名,6年生女子61名)であった。
調査内容 (1)登校への動機づけ尺度(五十嵐・茅野, 2018a):「外的理由」「取入れ的理由」「同一化的理由」「内発的理由」の4因子から成る。4件法。この尺度をもとに,岡田(2005)などが示す計算式((− 2×外的理由)+(− 1×取入れ的理由)+(1×同一化的理由)+(2×内発的理由))を用いて,RAIを算出する。取り得る値の範囲は,-9~+9である。(2)学校生活尺度(江村・大久保, 2012):「教師との関係」「友人との関係」「学業」の3因子から成る。4件法。(3)不登校傾向尺度(五十嵐, 2015):「全般的な登校意欲の喪失傾向」「享楽的活動の優先傾向」「心理的な不調傾向」の3因子から成る。4件法。
調査時期および実施方法 2016年10月上旬~12月中旬に,学級内において,調査協力者である担任が無記名で一斉に実施し,その場で回答・回収された。
結果と考察
1.RAIによる群分け
まず,対象者のRAIを算出し,それをもとに対象者を群分けすることとした。群分けにあたっては,まずRAIが負の値である者を抽出した。その後,RAIの正の値の中央値である4.5を基準に対象者をさらに群分けした。その結果,RAIが負の値である者(外的動機づけ傾向群)が30名,RAIが0.0~4.5である者(内的動機づけ傾向低群)が77名,RAIが4.5~9.0である者(内的動機づけ傾向高群)が189名であった。
2.RAI群による学校生活および不登校傾向の違い
RAI群によって学校生活および不登校傾向に違いがあるかを明らかにするため,RAI群を要因とする1要因分散分析を実施した。その結果,RAIが高い群ほど学校生活を良好に捉え,不登校傾向が低い(F[2/295]=21.02~98.18, p<.001)ことが明らかとなった。
3.RAI群による学校生活と不登校傾向との関連の違い
RAI群によって学校生活と不登校傾向との関連性に違いがあるかを明らかにするため,RAI群別に学校生活と不登校傾向とのピアソンの積率相関係数を算出した(Table 1)。その結果,教師との関係が不登校傾向を低減させるのは,登校への動機づけが高い場合に限られることが示された。また,登校への動機づけが低い場合には,学業のみが不登校傾向を低減させることも示された。さらに,友人との関係が良好である場合に「享楽的活動の優先傾向」が高まってしまう場合は,内発的動機づけ傾向低群に限られることも示された。このように,不登校傾向の増減に関与する学校生活の状況は,登校への動機づけによって異なることが示された。