[PG55] 職場体験学習において事業所側が抱える課題についての検討
Keywords:職場体験学習、事業所、半構造化インタビュー
問題の所在及び目的
職場体験学習は生徒が事業所などの職場で働くことを通じて,職業や仕事の実施について体験したり,働く人々と接したりする学習活動である。生徒にとって職場体験学習は望ましい勤労観・職業観を身に付ける機会であり,事業所にとって次代を担う人材の育成をする機会であることを文部科学省(2005)で強調されている。寺崎(2009)では販売,福祉,建築,製造,飲食,農林漁業の事業所を対象に調査を行い,職場体験学習は指導員をつけることによる生産効率の低下を招くと事業所の負担について述べている。本研究では先行研究で対象となっていない,職場体験学習を受け入れている役場が抱える課題について明らかにすることを目的とする。
調査及び分析の方法
職場体験学習として中学生を受け入れている事業所の一つであるA県のB町役場を調査対象とした。2018年12月に,今年度指導にあたった男性1名に対して30分程度の半構造化インタビューを行った。半構造化インタビューでは職場体験学習の受け入れの実情について質問を行った。得られた回答をリライトし,意味のあると判断した64文(3480語)を分析対象として,M- GTA(木下2007)の手法を参考に1概念化(文の意味のまとまりで分類),2カテゴリーの統合(概念を整理),3確認,4修正,5再確認という手順でカテゴリーを分類した。妥当性を本研究に関心を持つ2名と研究者1名で一致率によって検討した。一致率は73.3%であった。
結 果
Table 1にカテゴリーの出現数(実数)を示す。半構造化インタビューで得られた回答は事業所に
関する内容の「事業所」と生徒に関する内容の「生徒」の2つのカテゴリーに分類した。「事業所」のカテゴリーについて「受け入れ」では事業所から中学校に対して生徒の人数を制限せずに3名程度受け入れていることがわかった。「悩み」では事務作業が中心の事業所であるため生徒に業務について説明することができるが体験させることはできないこと,「工夫」ではイベントがある部署に生徒が配属するよう時間調整を行っていることがわかった。「生徒」のカテゴリーの「職場」では生徒の担当の職場,「活動」ではオリエンテーションを含む生徒が活動した内容,「様子」では活動中の生徒の様子があった。「成長」では体験の最終日や事後報告の発表会での感想から窺える生徒の成長について事業所の語りがあった。
考 察
「悩み」より事業所は生徒に普段行っている業務についての説明をすることはできるが職場体験学習の趣旨に沿うのかという不安を抱いていた。この「悩み」を解決するために,「工夫」より事業所は事前に各課の予定を調査したり当日の時間調整をしたりして生徒がなるべく多くの業務を体験できるようにしていた。事業所は職場体験学習で生徒がより良い体験ができるよう,尚且つ趣旨に沿うように体験中心の活動にしようとすると準備が不可欠となり様々な工夫も必要となる。職場体験学習において事業所が抱える課題は「悩み」を解消するために「工夫」が増え,場合によっては「悩み」が解消されず積み重なっていくことなのではないだろうか。また,「成長」より生徒が学習したということが窺えるため,事業所は職場体験学習に対して好印象を持っていると考えられる。
今後の課題として他の事業所にも調査を実施することで職場体験学習における様々な事業所の課題を明らかにしていきたい。
職場体験学習は生徒が事業所などの職場で働くことを通じて,職業や仕事の実施について体験したり,働く人々と接したりする学習活動である。生徒にとって職場体験学習は望ましい勤労観・職業観を身に付ける機会であり,事業所にとって次代を担う人材の育成をする機会であることを文部科学省(2005)で強調されている。寺崎(2009)では販売,福祉,建築,製造,飲食,農林漁業の事業所を対象に調査を行い,職場体験学習は指導員をつけることによる生産効率の低下を招くと事業所の負担について述べている。本研究では先行研究で対象となっていない,職場体験学習を受け入れている役場が抱える課題について明らかにすることを目的とする。
調査及び分析の方法
職場体験学習として中学生を受け入れている事業所の一つであるA県のB町役場を調査対象とした。2018年12月に,今年度指導にあたった男性1名に対して30分程度の半構造化インタビューを行った。半構造化インタビューでは職場体験学習の受け入れの実情について質問を行った。得られた回答をリライトし,意味のあると判断した64文(3480語)を分析対象として,M- GTA(木下2007)の手法を参考に1概念化(文の意味のまとまりで分類),2カテゴリーの統合(概念を整理),3確認,4修正,5再確認という手順でカテゴリーを分類した。妥当性を本研究に関心を持つ2名と研究者1名で一致率によって検討した。一致率は73.3%であった。
結 果
Table 1にカテゴリーの出現数(実数)を示す。半構造化インタビューで得られた回答は事業所に
関する内容の「事業所」と生徒に関する内容の「生徒」の2つのカテゴリーに分類した。「事業所」のカテゴリーについて「受け入れ」では事業所から中学校に対して生徒の人数を制限せずに3名程度受け入れていることがわかった。「悩み」では事務作業が中心の事業所であるため生徒に業務について説明することができるが体験させることはできないこと,「工夫」ではイベントがある部署に生徒が配属するよう時間調整を行っていることがわかった。「生徒」のカテゴリーの「職場」では生徒の担当の職場,「活動」ではオリエンテーションを含む生徒が活動した内容,「様子」では活動中の生徒の様子があった。「成長」では体験の最終日や事後報告の発表会での感想から窺える生徒の成長について事業所の語りがあった。
考 察
「悩み」より事業所は生徒に普段行っている業務についての説明をすることはできるが職場体験学習の趣旨に沿うのかという不安を抱いていた。この「悩み」を解決するために,「工夫」より事業所は事前に各課の予定を調査したり当日の時間調整をしたりして生徒がなるべく多くの業務を体験できるようにしていた。事業所は職場体験学習で生徒がより良い体験ができるよう,尚且つ趣旨に沿うように体験中心の活動にしようとすると準備が不可欠となり様々な工夫も必要となる。職場体験学習において事業所が抱える課題は「悩み」を解消するために「工夫」が増え,場合によっては「悩み」が解消されず積み重なっていくことなのではないだろうか。また,「成長」より生徒が学習したということが窺えるため,事業所は職場体験学習に対して好印象を持っていると考えられる。
今後の課題として他の事業所にも調査を実施することで職場体験学習における様々な事業所の課題を明らかにしていきたい。