[PG56] 大学生における過去のネガティブ経験の肯定的意味づけに至る過程とその支援
ハーディネスの高低に着目して
キーワード:ハーディネス、肯定的意味づけ、大学生
目 的
人は人生の中で様々なネガティブな経験をするが,時間の経過とともに受容され肯定的意味を持つようになることは様々な研究から明らかになっているが,過去にネガティブな経験をした大学生がどのような過程で肯定的意味づけに至ったかについての研究はあまり見られない。また高島(2019)はハーディネス概念が外傷体験後成長感(PTG)に影響を与えていると示した。
そこで本研究では,過去にネガティブな体験をした大学生が,その経験に肯定的意味づけをして立ち直り,PTGを獲得する過程をハーディネスの高低の視点から検討する。
方 法
参加者 大学生210名(男性83名,女性127名,平均年齢21.01歳,SD=1.80)に質問紙調査を行った。
手続き 初めにネガティブ経験の有無について回答を求めた。ここでは大学生への心理的負担や不快感を生じさせる可能性を考慮し “学業に関すること”“人間関係のこと”“継続して行ってきたこと”“その他”という領域からの回答を求めた。さらにそのネガティブ経験を本調査者に語ることができるかの回答も求めた。
またハーディネスの高低については東條・佐々木(2004)の大学生用ハーディネス尺度の27項目を4件法で回答させた。
そして質問紙調査において経験を語ることができると回答した大学生の中から,ハーディネス得点の高かった2名と低かった1名に対して一対一の半構造化面接を3回行った。初回面接ではつらい時期の対処法,つらくなくなり始めたきっかけ,どのように成長できたと思うかについて具体的な過程を調査し,その内容を整理したものを2回目の面接で確認を求め加筆を行い,3回目の面接では語りの内容の最終確認を求めた。
結果と考察
1)大学生の過去のネガティブ経験に関する調査
大学生が今までに体験したネガティブ経験について上に示す4つの領域で回答を求めた結果,選択された経験は順に27名,143名,29名,11名であった。この結果についてχ2検定を行ったところχ2 (3)=211.71,p<.01であり各領域における多重比較においても学業<人間関係,継続<人間関係,その他<人間関係であったことから,人間関係に関するネガティブ経験が最も多かった。
2)大学生の肯定的意味づけに至る径路の検討
面接調査については,質問紙調査において最も多かった「人間関係のこと」を選択した大学生3名に面接を行い,複線径路モデル図(TEM図)を作成した(Figure 1)。
ネガティブな経験をした大学生は一度その経験について熟考・反芻することで自分なりの解決策を講じるものの,それでも対処できないと分かった際に信頼できる他者に自己開示をすることで他者からサポートやアドバイスを受け,そのサポートやアドバイスを元に前向きな熟考をし始める。そうすることで当事者を悩ませていた問題が解決し,PTGを獲得するという径路が今回の調査からは導かれた。
ハーディネス得点の高低では,PTGの獲得に至る径路の違いは見受けられなかったが,ハーディネス得点の低かった1名の語りと,高かった2名の語りを比較すると,ハーディネス得点の低かった者は問題からの逃避をより長い時間行っていたことが明らかとなった。
本面接調査からは3名全員において自己開示による他者からの支援を受けたことでPTGが獲得されたことから,PTGの獲得には自己開示およびソーシャル・サポートによる支援の重要性が示唆された。具体的支援方法についてはさらなる調査が必要となるだろう。
人は人生の中で様々なネガティブな経験をするが,時間の経過とともに受容され肯定的意味を持つようになることは様々な研究から明らかになっているが,過去にネガティブな経験をした大学生がどのような過程で肯定的意味づけに至ったかについての研究はあまり見られない。また高島(2019)はハーディネス概念が外傷体験後成長感(PTG)に影響を与えていると示した。
そこで本研究では,過去にネガティブな体験をした大学生が,その経験に肯定的意味づけをして立ち直り,PTGを獲得する過程をハーディネスの高低の視点から検討する。
方 法
参加者 大学生210名(男性83名,女性127名,平均年齢21.01歳,SD=1.80)に質問紙調査を行った。
手続き 初めにネガティブ経験の有無について回答を求めた。ここでは大学生への心理的負担や不快感を生じさせる可能性を考慮し “学業に関すること”“人間関係のこと”“継続して行ってきたこと”“その他”という領域からの回答を求めた。さらにそのネガティブ経験を本調査者に語ることができるかの回答も求めた。
またハーディネスの高低については東條・佐々木(2004)の大学生用ハーディネス尺度の27項目を4件法で回答させた。
そして質問紙調査において経験を語ることができると回答した大学生の中から,ハーディネス得点の高かった2名と低かった1名に対して一対一の半構造化面接を3回行った。初回面接ではつらい時期の対処法,つらくなくなり始めたきっかけ,どのように成長できたと思うかについて具体的な過程を調査し,その内容を整理したものを2回目の面接で確認を求め加筆を行い,3回目の面接では語りの内容の最終確認を求めた。
結果と考察
1)大学生の過去のネガティブ経験に関する調査
大学生が今までに体験したネガティブ経験について上に示す4つの領域で回答を求めた結果,選択された経験は順に27名,143名,29名,11名であった。この結果についてχ2検定を行ったところχ2 (3)=211.71,p<.01であり各領域における多重比較においても学業<人間関係,継続<人間関係,その他<人間関係であったことから,人間関係に関するネガティブ経験が最も多かった。
2)大学生の肯定的意味づけに至る径路の検討
面接調査については,質問紙調査において最も多かった「人間関係のこと」を選択した大学生3名に面接を行い,複線径路モデル図(TEM図)を作成した(Figure 1)。
ネガティブな経験をした大学生は一度その経験について熟考・反芻することで自分なりの解決策を講じるものの,それでも対処できないと分かった際に信頼できる他者に自己開示をすることで他者からサポートやアドバイスを受け,そのサポートやアドバイスを元に前向きな熟考をし始める。そうすることで当事者を悩ませていた問題が解決し,PTGを獲得するという径路が今回の調査からは導かれた。
ハーディネス得点の高低では,PTGの獲得に至る径路の違いは見受けられなかったが,ハーディネス得点の低かった1名の語りと,高かった2名の語りを比較すると,ハーディネス得点の低かった者は問題からの逃避をより長い時間行っていたことが明らかとなった。
本面接調査からは3名全員において自己開示による他者からの支援を受けたことでPTGが獲得されたことから,PTGの獲得には自己開示およびソーシャル・サポートによる支援の重要性が示唆された。具体的支援方法についてはさらなる調査が必要となるだろう。