日本教育心理学会第61回総会

講演情報

ポスター発表

[PH] ポスター発表 PH(01-65)

2019年9月16日(月) 13:00 〜 15:00 3号館 1階 (カフェテリア)

在席責任時間
奇数番号13:00~14:00
偶数番号14:00~15:00

[PH11] 青年期に親を亡くした子どもの亡き親との対話について

田佳潤1, 横山恭子2 (1.上智大学大学院, 2.上智大学)

キーワード:青年期、親との死別、故人との対話

問題と目的
 従来の悲哀過程に関する仮説においては,死別後の故人との関係について,故人との絆を断ち切ることが重要だと主張されてきた(Freud,1917/1970;Bowlby,1980/1981)。しかし,近年の悲哀過程に関する仮説においては,故人との絆を維持することが正常であると主張されている(Klass et al.,1996; Worden,2008/2011)。故人との絆を維持する方法は様々であり,中でも,故人との対話については,多くの遺された人が行っており(Shilverman,2000;坂口・柏木ら,2001),いくつかの心理療法においても技法として用いられている(Shear et al.,2005; 倉戸,2013)。その一方,その内容についてはほとんど整理や検討がされていない。
 他方で,青年期に親と死別するという体験は,進路や人生観,アイデンティティ等その後の人生に大きな影響を及ぼすということが示されている(金子ら,2007;倉西,2010)。しかし,青年期を対象とした親との死別に関する研究や支援は比較的少ない。
 そこで,本研究では,青年期に親を亡くした子どもの亡き親との対話について,その内容や変化のプロセスについて明らかにすることを目的とする。
方  法
研究協力者:青年期(13~22歳)に親を病気で亡くし,現在20歳以上である男女9名であった(男性3名,女性6名)。
調査方法:同意を得られた研究対象者に対して,約2時間の半構造化面接を行った。主な質問項目は基本情報(年齢,職業,家族構成,生育歴・職歴),死別体験について(死別対象,死因,死別時の年齢),亡き親との対話をするとき・方法・内容,亡き親との対話をするとき・方法・内容の変化,亡き親との対話の意味づけであった。
分析方法:修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(M-GTA)による分析を行った。
結  果
 分析の結果,10の概念と6のカテゴリーが生成された。結果図についてはFigure 1にて示す。以下,≪ ≫は概念名,【 】はカテゴリー名,「 」は研究協力者が語った内容,“ ”は研究協力者と亡き親との間で交わされた対話の内容を示している。
考  察
1. 感情の揺れ動きの自覚と現実検討
 “なんで死んだの”といった言葉によって亡き親を≪責め立てる≫ことや≪親の死への問いかけ≫をすることで,親の死そのものを追求していくことは,親の死に対して正面から向き合い,消化していくことであると考えられる。遺された子どもは,亡き親との対話によって亡き親に対する自分の感情を自覚していく。さらに,対話において返事が返ってこないという体験を積み重ねていくことは,もう現実には亡き親が存在しないということを理解し受け入れていくことに繋がっていく。
2. 亡き親との関係の修復
 青年期は第二次反抗期が出現する時期である。この時期に親を亡くすことによって遺された子どもは,生前の親に対する反抗について罪悪感を抱く。遺された子どもは,≪謝罪≫をすると同時に「許してくれる」ことを想定していた。それは,許されたいという期待を背景に,対話で≪謝罪≫と許しを繰り返す中で,次第に自分を許していき,罪悪感や自責感は和らいでいた。
3. 意図的・非意図的な絆の確認と維持
 多くの遺された子どもが,亡き親からの反応を期待することなく【聞き手としての亡き親に対する語りかけ】をしていた背景には,対話によって亡き親との絆を確認し,亡き親との絆を維持しようとする目的があるようであった。また,【≪夢の世界における日常的対話≫】についても,亡き親との絆を非意図的に再確認することにつながっていた。