日本教育心理学会第61回総会

Presentation information

ポスター発表

[PH] ポスター発表 PH(01-65)

Mon. Sep 16, 2019 1:00 PM - 3:00 PM 3号館 1階 (カフェテリア)

在席責任時間
奇数番号13:00~14:00
偶数番号14:00~15:00

[PH16] キャリア教育における振り返りの効果

一枚ポートフォリオ評価(OPPA)を使用して

原瑞穂 (山梨大学)

Keywords:キャリア教育、振り返り、OPPA

はじめに
 本学の全学共通科目である「人間形成論」は,250名の一斉授業形式で,偉業を成し遂げた講師の話を聞く形をとるものである。この授業の効果を検証するために,学生に毎回の授業の振り返りを書かせることによって,個々の内省を深める試みを行った。
目  的
 本研究では,キャリア教育の授業における振り返りの方法が,学生の授業内容の受け止め方やその後の行動へどのように影響するのかを検証し,より効果的な振り返りを検討することを目的とする。
方  法
時期 平成30年4月から8月。
対象者 平成30年前期に本学の全学共通教養科目の「人間形成論」の受講学生249名の内,未提出者と内容の不備な者11名を除いた238名を調査対象とした。
手続 調査は授業中に実施し,調査前に調査対象者に調査の趣旨と個人情報及び結果の取り扱いに関する説明を行った。回答をもって同意が得られたと判断した。
調査内容 振り返りシートとして,OPPA原版,OPPA改定版,感想シートを使用した。OPPA原版は毎回一番大切だと思ったことを,OPPA改定版は,加えてそれについて考えたことを,感想シートは単に感想を書くものであった。OPPAには毎回教員からのフィードバックがあるが,感想シートは提出するだけであった。
結  果
 まず,OPPA原版は,発現数が175語と最も多く,「深まった」「意識が変化した」など,考えを深め,行動につながっていることが分かる。OPPA改定版は,発現数が132語であり,「〇〇が必要」「〇〇ができた」など,単純な感想が多く,続いて考える内容が多かった。感想シートは,発現数が105語とOPPAより少な目であり,積極的な行動への意識を表す内容が多かった。結果をTable 1に示す。
考  察
 教員からのフィードバックの有無により,記述内容に違いが出ることが示唆された。OPPA使用の学生の発現数も多く,語彙も豊富で記述内容も多彩であった。OPPAにおける教員からのコメントや印などがコミュニケーションの手段となり,授業態度に良い影響を及ぼしていると考えられる。また,OPPAの質問事項は,指示的でない方がより自由に記述されることが示された。一方,感想シート使用の学生は,積極的な内容が多かったが,発現数が少なかった。教員からのフィードバックがないために集中度が低下し,記述内容が平坦になると考えられる。また,授業以外の内容や講師への批評などが多くなる傾向が見られた。感想シートをチェックして毎回返却するなどの方法をとらない限り,実施の意味を持たない可能性がある。
 以上のことから,キャリア教育における振り返りは,双方向性のあるものがより効果的であることが確認された。また,学生の内省を深めるためには,振り返りシートの内容,質問の文言を吟味する必要があることが示された。