[PH21] 中学生はどのようなふり返りを行うか
学習内容と学習方法に関する記述の分析から
キーワード:学習、ふり返り
問題と目的
学習でのふり返りは,学んだ事柄を学習者の頭の中で整理し,知識の定着や知識の活用を促す上で有効な活動である。Zimmerman(1998)は,学習の目標が達成されたかや成否の原因をふり返るという内省段階を,学習を主体的に進める人の特徴の1つとしている。また,市川(1993)は,問題解決後に教訓を引き出しておくことを教訓帰納と呼んでおり,教訓を引き出すことで,その後の問題解決が促進されることを指摘している。
学校でふり返りを求める指導法の1つに,学習事項について分かったことや分からなかったことなどをふり返りシートに書くという方法がある。これにより,学習者は学習後にいつでも学んだことを見ることができ,学習におけるポイントを思い出しやすくなる。
そこで本研究では,ふり返りシートを用いて授業のふり返りを行っている学校の生徒の実際のふり返りシートの記述内容を1~3学期にわたって分析し,生徒のふり返りの実態を把握することを目的とする。特に,学習内容のみならず,学習方法についてのふり返りの重要性が指摘されていることから(市川,2000),分析において,内容面と学習方法面を分けて分析を行う。
方 法
対象者 中国地方の公立A中学校(小規模校)の中学生12人(1年生5人,2年生4人,3年生3人)を対象とした。
分析方法 生徒が書いたふり返りシートのうち,授業内容のふり返りを分析対象とした。該当箇所には,「どこまで分かったか」,「学習方法で上手くいったこと」などを記入するようになっていた。学習内容については,何も書いていない記述をC,授業の結論のみを記した記述をB,結論に加えその理由を書いた記述などをAとした。学習方法については,何も書いていない記述をC,抽象的に記した記述をB,具体的に記した記述をAとした。分析では,ルーブリック別に評価した記述を,「分かったこと」と「学習方法」で集計し,学期別に基準ごとの記述数を算出した。
結果と考察
分かったことに関する結果をFigure 1に示した。学期で比率に違いがあるかを調べるため,Kruskal-Wallis検定を行ったところ,有意な差は見られなかった(χ2 = 1.76, n.s.)。図を見ると,1年を通してCの記述が多かった。これは,そもそも授業の感想の記述が多く,授業内容に関する記述があまり見られなかったためである。このことから,生徒自身は単なる感想と学習内容のふり返りの違いを十分認識していない可能性が示唆される。
学習方法についても同様の分析を行ったところ,結果は有意であった(χ2 = 33.93,p < .01)。多重比較を行ったところ,3学期の方が1・2学期よりも平均ランクが高く(それぞれp < .01),1学期の方が2学期よりも平均ランクが高かった(p < .05)。図から,特に,3学期のAとBの記述比率が増加していることが分かる。当該学校の教員に聞いたところ,3学期に,ふり返りの前に,授業者が本時の学習のポイントを意識させる指導を行ったとのことであった。とはいえ,値自体は3学期であっても必ずしも高いといえるものではないため,そのため,介入を長期的に行うなど更なる指導の必要性が示唆される。
学習でのふり返りは,学んだ事柄を学習者の頭の中で整理し,知識の定着や知識の活用を促す上で有効な活動である。Zimmerman(1998)は,学習の目標が達成されたかや成否の原因をふり返るという内省段階を,学習を主体的に進める人の特徴の1つとしている。また,市川(1993)は,問題解決後に教訓を引き出しておくことを教訓帰納と呼んでおり,教訓を引き出すことで,その後の問題解決が促進されることを指摘している。
学校でふり返りを求める指導法の1つに,学習事項について分かったことや分からなかったことなどをふり返りシートに書くという方法がある。これにより,学習者は学習後にいつでも学んだことを見ることができ,学習におけるポイントを思い出しやすくなる。
そこで本研究では,ふり返りシートを用いて授業のふり返りを行っている学校の生徒の実際のふり返りシートの記述内容を1~3学期にわたって分析し,生徒のふり返りの実態を把握することを目的とする。特に,学習内容のみならず,学習方法についてのふり返りの重要性が指摘されていることから(市川,2000),分析において,内容面と学習方法面を分けて分析を行う。
方 法
対象者 中国地方の公立A中学校(小規模校)の中学生12人(1年生5人,2年生4人,3年生3人)を対象とした。
分析方法 生徒が書いたふり返りシートのうち,授業内容のふり返りを分析対象とした。該当箇所には,「どこまで分かったか」,「学習方法で上手くいったこと」などを記入するようになっていた。学習内容については,何も書いていない記述をC,授業の結論のみを記した記述をB,結論に加えその理由を書いた記述などをAとした。学習方法については,何も書いていない記述をC,抽象的に記した記述をB,具体的に記した記述をAとした。分析では,ルーブリック別に評価した記述を,「分かったこと」と「学習方法」で集計し,学期別に基準ごとの記述数を算出した。
結果と考察
分かったことに関する結果をFigure 1に示した。学期で比率に違いがあるかを調べるため,Kruskal-Wallis検定を行ったところ,有意な差は見られなかった(χ2 = 1.76, n.s.)。図を見ると,1年を通してCの記述が多かった。これは,そもそも授業の感想の記述が多く,授業内容に関する記述があまり見られなかったためである。このことから,生徒自身は単なる感想と学習内容のふり返りの違いを十分認識していない可能性が示唆される。
学習方法についても同様の分析を行ったところ,結果は有意であった(χ2 = 33.93,p < .01)。多重比較を行ったところ,3学期の方が1・2学期よりも平均ランクが高く(それぞれp < .01),1学期の方が2学期よりも平均ランクが高かった(p < .05)。図から,特に,3学期のAとBの記述比率が増加していることが分かる。当該学校の教員に聞いたところ,3学期に,ふり返りの前に,授業者が本時の学習のポイントを意識させる指導を行ったとのことであった。とはいえ,値自体は3学期であっても必ずしも高いといえるものではないため,そのため,介入を長期的に行うなど更なる指導の必要性が示唆される。