[PH24] 高校生の認知主義的・非認知主義的学習観と指示依存志向が成績に与える影響
主な進路先が異なる学校間の比較
Keywords:学習観、成績、学校間
問題と目的
効果的な学習方法についての信念を包括的に測定する尺度として,植阪・瀬尾・市川(2006)は,認知主義的学習観と非認知主義的学習観という2つの上位概念と8つの下位尺度からなる学習観の構造を提案している。さらに植阪ら(2006)は認知主義的学習観が数学の成績と有意な正の相関を,非認知主義的学習観が成績と有意な負の相関を持つことを報告している。本研究では,言語習得のために学習量が伴う英語における,学習観と成績の関係の検討,および入試を経て進学する高校において,学習観の分布に違いがあるか比較する。
また,学校現場では「先生の指示通りにしていれば学習が成立する,効率的に学習ができる」という依存的な学習観の存在が実感されているが,先行研究では取り上げられてこなかった。そこで本研究では,教師の指示に依存し,かつ非認知主義的学習観が強い信念について検討する。
方 法
調査時期 2018年11月に実施した。
調査協力者 千葉県内の公立高校3校の1年生877名(ほぼ全員の進路先が大学である高校A,進路先が多い順に,大学・専門学校・就職となる高校B,就職・専門学校・大学となる高校C)
質問紙 植阪ら(2006)の尺度(8志向3項目ずつ)の一部の表現を,英語の教科を想定し修正した。指示依存の信念を測る2項目(例 学校や塾の授業外では,学校や塾の先生に言われた宿題だけをやっていれば良い)とその逆転項目(4項目),および学校の英語の成績をたずねた。
手続き 各教室で教師が読む教示文を作成し,その指示のもと,英語の学習を思い浮かべながら質問紙に回答してもらった。
結 果
認知主義的・非認知主義的学習観を測る項目に対し,下位尺度ごとに合計得点を算出後,因子分析を行った。その結果,植阪ら(2006)と同様に2因子に分かれた。そのため第1因子を認知主義的学習観,第2因子を非認知主義的学習観とした。
また,教師の指示に依存している信念を問う項目と逆転項目,および非認知主義的学習観の全項目に対して因子分析を行った。その結果,教師の指示に依存している信念を問う項目・丸暗記志向・結果重視志向の項目と,逆転項目の2因子に分かれたため,指示依存志向(8項目)と非指示依存志向(4項目)と命名した。
成績との関連 意味理解・思考過程重視・方略・失敗活用の4志向を認知主義的学習観,丸暗記・結果重視・物量・環境設定の4志向を非認知主義的学習観として合計得点を算出し,学校での英語の成績との相関を検討した。その結果,認知主義的学習観と成績との間に有意な正の相関が認められたが,非認知主義的学習観との間には相関が認められなかった。また,指示依存志向と成績との間に関しては,有意な負の相関が見られた。
学校間の比較 4件法の尺度得点が3,4を高群,1,2を低群に分類し,各校の学習観の割合を調べた。その結果,認知主義的学習観の高群の割合が,高校ABC(「調査協力者」を参照)の順に高く,非認知主義的学習観および指示依存志向の高群の割合が,高校CBAの順に高いことが示された。(Table1)
考 察
植阪ら(2006)の,数学を想定した研究では,非認知主義的学習観全体,およびその下位尺度である丸暗記・結果重視志向で,成績との間に負の相関が見られた。しかし英語を想定した本研究では,負の相関は見られなかった。これは英語の特性上,暗記や学習量が定期テストで有効に働き,結果として成績につながったためと考えられる。指示依存志向と成績との間に認められた有意な負の相関(r=-.070)は,非常に弱いものであった。指示依存志向は,丸暗記・結果重視志向により成績が向上し難いものの,前述した様に英語の特性が学校での成績に有効に作用した結果,わずかな負の相関を示したのではないかと考えられる。
また,非認知主義的学習観と英語の成績との間に有意な負の相関はないが,主な進路先が異なる高校ABCによって学習観の割合が順に異なった。
効果的な学習方法についての信念を包括的に測定する尺度として,植阪・瀬尾・市川(2006)は,認知主義的学習観と非認知主義的学習観という2つの上位概念と8つの下位尺度からなる学習観の構造を提案している。さらに植阪ら(2006)は認知主義的学習観が数学の成績と有意な正の相関を,非認知主義的学習観が成績と有意な負の相関を持つことを報告している。本研究では,言語習得のために学習量が伴う英語における,学習観と成績の関係の検討,および入試を経て進学する高校において,学習観の分布に違いがあるか比較する。
また,学校現場では「先生の指示通りにしていれば学習が成立する,効率的に学習ができる」という依存的な学習観の存在が実感されているが,先行研究では取り上げられてこなかった。そこで本研究では,教師の指示に依存し,かつ非認知主義的学習観が強い信念について検討する。
方 法
調査時期 2018年11月に実施した。
調査協力者 千葉県内の公立高校3校の1年生877名(ほぼ全員の進路先が大学である高校A,進路先が多い順に,大学・専門学校・就職となる高校B,就職・専門学校・大学となる高校C)
質問紙 植阪ら(2006)の尺度(8志向3項目ずつ)の一部の表現を,英語の教科を想定し修正した。指示依存の信念を測る2項目(例 学校や塾の授業外では,学校や塾の先生に言われた宿題だけをやっていれば良い)とその逆転項目(4項目),および学校の英語の成績をたずねた。
手続き 各教室で教師が読む教示文を作成し,その指示のもと,英語の学習を思い浮かべながら質問紙に回答してもらった。
結 果
認知主義的・非認知主義的学習観を測る項目に対し,下位尺度ごとに合計得点を算出後,因子分析を行った。その結果,植阪ら(2006)と同様に2因子に分かれた。そのため第1因子を認知主義的学習観,第2因子を非認知主義的学習観とした。
また,教師の指示に依存している信念を問う項目と逆転項目,および非認知主義的学習観の全項目に対して因子分析を行った。その結果,教師の指示に依存している信念を問う項目・丸暗記志向・結果重視志向の項目と,逆転項目の2因子に分かれたため,指示依存志向(8項目)と非指示依存志向(4項目)と命名した。
成績との関連 意味理解・思考過程重視・方略・失敗活用の4志向を認知主義的学習観,丸暗記・結果重視・物量・環境設定の4志向を非認知主義的学習観として合計得点を算出し,学校での英語の成績との相関を検討した。その結果,認知主義的学習観と成績との間に有意な正の相関が認められたが,非認知主義的学習観との間には相関が認められなかった。また,指示依存志向と成績との間に関しては,有意な負の相関が見られた。
学校間の比較 4件法の尺度得点が3,4を高群,1,2を低群に分類し,各校の学習観の割合を調べた。その結果,認知主義的学習観の高群の割合が,高校ABC(「調査協力者」を参照)の順に高く,非認知主義的学習観および指示依存志向の高群の割合が,高校CBAの順に高いことが示された。(Table1)
考 察
植阪ら(2006)の,数学を想定した研究では,非認知主義的学習観全体,およびその下位尺度である丸暗記・結果重視志向で,成績との間に負の相関が見られた。しかし英語を想定した本研究では,負の相関は見られなかった。これは英語の特性上,暗記や学習量が定期テストで有効に働き,結果として成績につながったためと考えられる。指示依存志向と成績との間に認められた有意な負の相関(r=-.070)は,非常に弱いものであった。指示依存志向は,丸暗記・結果重視志向により成績が向上し難いものの,前述した様に英語の特性が学校での成績に有効に作用した結果,わずかな負の相関を示したのではないかと考えられる。
また,非認知主義的学習観と英語の成績との間に有意な負の相関はないが,主な進路先が異なる高校ABCによって学習観の割合が順に異なった。