日本教育心理学会第61回総会

講演情報

ポスター発表

[PH] ポスター発表 PH(01-65)

2019年9月16日(月) 13:00 〜 15:00 3号館 1階 (カフェテリア)

在席責任時間
奇数番号13:00~14:00
偶数番号14:00~15:00

[PH27] 対異文化態度尺度の作成と信頼性・妥当性の検討

今井真理 (東京外国語大学大学院)

キーワード:異文化間コミュニケーション、英語教育、尺度開発

問題と目的
 情報通信技術の発展による,異質な他者とのコミュニケーションを取る場面の増加に伴い,英語を用いて異質な他者とコミュニケーションを取ることのできる「グローバル人材」の育成が学校現場に求められている(文部科学省, 2011)。このような交流は異文化間コミュニケーションと呼ばれ(Hall, 1973),これを円滑に行うためには,相手の文化的背景などを考慮し,相手が何を言おうとしているかを推し量る必要がある。
他者の意見を正確に推し量るためには,他者の文化的背景に対してより寛容であることが求められる。したがって,日本人英語学習者の異文化間コミュニケーションには,異文化に対する態度が影響を及ぼすと考えられる。他者に対する態度を測定する尺度として,高坂(2010)の異質拒否傾向が挙げられる。しかしこれは同性友人という限定的な相手に対する態度であり,異質な他者に対する態度を測るものではない。そこで本研究では,異文化間コミュニケーションに対する態度を測る尺度を新たに作成することを目的とする。
方  法
調査時期 2018年9月下旬。
調査協力者 都内私立大学1-4年生134名(Mage = 19.54, SD = 1.12)を対象に質問紙調査を行った。欠測がある回答を除いた125名(Mage = 19.52, SD = 1.12)のデータについて分析を行った。
手続き 無記名の個人記入形式の質問紙を配布し,一斉に実施した。
倫理的配慮 調査実施時に,回答は任意である旨,回答を拒否・中断することができる旨,回答を拒否・中断しても不利益は生じない旨等を,口頭及び紙面にて伝えた。
調査内容 デモグラフィック項目を尋ねた後,以下の3つの尺度について尋ねた。各項目への回答は5件法で求めた。
 1. 対異文化態度(22項目) 異質拒否傾向尺度(高坂,2010)や,Hall(1973)の異文化間コミュニケーション論を参考に,異文化間コミュニケーションに対する態度に関する項目(22項目)を作成した。項目作成後,心理学・英語教育学を専門とする大学院生1名の確認を得て,内容的妥当性を確保した。各項目への回答は,先行研究を参考に,「初対面の人と話すことについて,以下の項目は,あなたの気持ちや考えにどの程度あてはまりますか」という教示のもと求めた。2. 異質拒否傾向(11項目) 高坂(2010)の異質拒否傾向尺度を用いた。3. 「寛容さ」(10項目) 加藤・谷口(2009)の許し尺度の下位尺度「寛容さ」を用いた。
結  果
 対異文化態度尺度について,探索的因子分析(最尤法・promax回転)により因子構造を検討した。固有値の減衰状況から2因子解が妥当であると考えられた。2因子解を当てはめて因子分析をしたところ,因子負荷が.60未満の項目が8項目見られたため,同項目を削除し再度因子分析を行った。
 その結果,第1因子では「自分と同じ価値観の人とだけつきあいたい」など,異質な他者とは距離を置こうとする傾向に関する項目8項目が高い因子負荷を示していた。このことから,「異文化拒否傾向」(M = 2.38, SD = 0.76)と名付けた。
 第2因子では,「自分とは気があわない人とも関わってみたい」など,異質な他者と関わりたいとする傾向に関する項目5項目が高い因子負荷を示していた。このことから,「異文化寛容傾向」(M = 3.51, SD = 0.75)と名付けた。
 α係数を算出したところ,異文化拒否傾向がα = .89,異文化寛容傾向がα = .84と,いずれも十分な信頼性が認められた。
 相関分析を行ったところ,異質拒否傾向は,異文化拒否傾向との間に有意な強い正の相関が(r = .78,p < .01),異文化寛容傾向との間には有意な中程度の負の相関が見られた(r = -.55,p < .01)。また,異文化寛容傾向と「寛容さ」との間には,有意な弱い正の相関が見られた(r = .29,p < .01)。以上のことから,対異文化態度尺度には一定程度の妥当性があると判断した。
考  察
 本研究は,異文化間コミュニケーションに対する態度を測る対異文化態度尺度を新たに作成することを目的とした。
 因子分析の結果,異文化拒否傾向と異文化寛容傾向という2つの因子に分かれたことから,異文化拒否傾向の反対は必ずしも異文化寛容傾向であるとは限らないということが,本研究で明らかになった。このことから,二元論的に捉えるのではなく,異文化拒否傾向と異文化拒否傾向は一個人のなかに併存しうる特性であると捉える必要があると考えられる。