[PH45] 児童生徒における非構造的ダイエット行動に対する認知行動的特徴の影響の発達的変化
Keywords:ダイエット行動、児童生徒、発達差
問題と目的
体格指数BMIの基準値以下であるにもかかわらずダイエット行動に従事する,過剰なダイエット行動は,摂食障害の重要なリスク因子であり(Striegel-Moore, 1993),その低年齢化が問題となっている。
従来,ダイエット行動に影響を及ぼす代表的な要因として,自分の体型を過剰に「太っている」と認知する「ボディイメージの歪み」があることが示されている(Shafran et al.,2002)。一方,ボディイメージの歪みが必ずしもダイエット行動に直接的に影響を及ぼしていない可能性も示唆されている(田邊他,2017)。この原因として,親からのやせに対する社会的圧力(山下,2013)や,それをどのように認知しているのかといった要因によって,ダイエット行動に直接的に影響していない可能性が考えられる。しかしながら,これらの認知的要因がダイエット行動に及ぼす影響は必ずしも体系的に明らかにされているとは言いがたい。また,過剰なダイエット行動低減のための介入方法の選択においては,認知的発達段階を踏まえる必要性が指摘されている(山下,2013)。しかしながらどのような認知的発達段階の子どもに対して,どのような介入がより効果があるのかに関しては,一貫した研究知見が得られていない。
そこで本研究では,小中学生,高校生を対象に,認知的要因が過剰なダイエット行動に及ぼす影響の発達的変化について検討することを目的とした。
方 法
調査対象者:関東の公立小中学校,高校に在籍する小学生82名(女子41名,男子40名,その他1名,平均年齢11.0±0.7歳),中学生110名(女子50名,男子60名,平均年齢13.7±0.5歳),高校生50名(女子13名,男子36名,その他1名,平均年齢16.5±0.6歳)のデータを分析対象とした。
調査材料:(a)親の圧力を感じている程度:VASを用い,本研究にて作成,(b)ダイエット行動の程度:ダイエット行動尺度(松本他,1997),(c)ボディイメージの歪み:J-BSS-Ⅱ〜Ⅳ(鈴木,2007)および体格指数によって算出した。
倫理的配慮:本研究は,早稲田大学「人を対象とする研究に関する倫理審査委員会」の承認を得て実施された(承認番号:2018-109)。なお,本研究のデータセットは,Kato et al.(2019)と一部重複があるが,本報告は異なる研究目的において未発表のデータを中心に報告する。
結果と考察
発達段階(小学生,中学生,高校生)を独立変数,ボディイメージの歪みを従属変数とした分散分析を行った結果,発達段階による有意な差はなかった。また,発達段階およびボディイメージの歪みの程度(高群,低群)を独立変数,非構造的ダイエットの程度を従属変数とした2要因分散分析を行った結果,いずれの発達段階においても,ボディイメージの歪みによる,過剰なダイエット行動得点の差がみられなかった(Figure 1)。また,各発達段階において,親の圧力を受け取る程度(高群,低群)およびボディイメージの歪み群を独立変数とした2要因分散分析を行った。その結果,中学生において親の圧力を受け取る程度が高い群は,有意に非構造的ダイエット得点が高いことが示された(F (1,46)= 3.03,p < .10)。
これらの結果から,従来の研究においてはボディイメージの歪みがダイエット行動を引き起こしているという知見が前提とされていたが,ボディイメージの歪みにかかわらず,親の圧力を感じやすいことによって,過剰なダイエット行動に従事しやすいことが相応に大きな要因になっていると考えられる。すなわち,認知発達段階によってボディイメージの歪みが変化するのではなく,子ども個人の家庭環境や認知的要因などが関係している可能性があると考えられる。したがって過剰なダイエット行動の低減を目指した介入においては,このような特徴も踏まえたアセスメントに応じて介入を考えていく必要があると考えられる。
体格指数BMIの基準値以下であるにもかかわらずダイエット行動に従事する,過剰なダイエット行動は,摂食障害の重要なリスク因子であり(Striegel-Moore, 1993),その低年齢化が問題となっている。
従来,ダイエット行動に影響を及ぼす代表的な要因として,自分の体型を過剰に「太っている」と認知する「ボディイメージの歪み」があることが示されている(Shafran et al.,2002)。一方,ボディイメージの歪みが必ずしもダイエット行動に直接的に影響を及ぼしていない可能性も示唆されている(田邊他,2017)。この原因として,親からのやせに対する社会的圧力(山下,2013)や,それをどのように認知しているのかといった要因によって,ダイエット行動に直接的に影響していない可能性が考えられる。しかしながら,これらの認知的要因がダイエット行動に及ぼす影響は必ずしも体系的に明らかにされているとは言いがたい。また,過剰なダイエット行動低減のための介入方法の選択においては,認知的発達段階を踏まえる必要性が指摘されている(山下,2013)。しかしながらどのような認知的発達段階の子どもに対して,どのような介入がより効果があるのかに関しては,一貫した研究知見が得られていない。
そこで本研究では,小中学生,高校生を対象に,認知的要因が過剰なダイエット行動に及ぼす影響の発達的変化について検討することを目的とした。
方 法
調査対象者:関東の公立小中学校,高校に在籍する小学生82名(女子41名,男子40名,その他1名,平均年齢11.0±0.7歳),中学生110名(女子50名,男子60名,平均年齢13.7±0.5歳),高校生50名(女子13名,男子36名,その他1名,平均年齢16.5±0.6歳)のデータを分析対象とした。
調査材料:(a)親の圧力を感じている程度:VASを用い,本研究にて作成,(b)ダイエット行動の程度:ダイエット行動尺度(松本他,1997),(c)ボディイメージの歪み:J-BSS-Ⅱ〜Ⅳ(鈴木,2007)および体格指数によって算出した。
倫理的配慮:本研究は,早稲田大学「人を対象とする研究に関する倫理審査委員会」の承認を得て実施された(承認番号:2018-109)。なお,本研究のデータセットは,Kato et al.(2019)と一部重複があるが,本報告は異なる研究目的において未発表のデータを中心に報告する。
結果と考察
発達段階(小学生,中学生,高校生)を独立変数,ボディイメージの歪みを従属変数とした分散分析を行った結果,発達段階による有意な差はなかった。また,発達段階およびボディイメージの歪みの程度(高群,低群)を独立変数,非構造的ダイエットの程度を従属変数とした2要因分散分析を行った結果,いずれの発達段階においても,ボディイメージの歪みによる,過剰なダイエット行動得点の差がみられなかった(Figure 1)。また,各発達段階において,親の圧力を受け取る程度(高群,低群)およびボディイメージの歪み群を独立変数とした2要因分散分析を行った。その結果,中学生において親の圧力を受け取る程度が高い群は,有意に非構造的ダイエット得点が高いことが示された(F (1,46)= 3.03,p < .10)。
これらの結果から,従来の研究においてはボディイメージの歪みがダイエット行動を引き起こしているという知見が前提とされていたが,ボディイメージの歪みにかかわらず,親の圧力を感じやすいことによって,過剰なダイエット行動に従事しやすいことが相応に大きな要因になっていると考えられる。すなわち,認知発達段階によってボディイメージの歪みが変化するのではなく,子ども個人の家庭環境や認知的要因などが関係している可能性があると考えられる。したがって過剰なダイエット行動の低減を目指した介入においては,このような特徴も踏まえたアセスメントに応じて介入を考えていく必要があると考えられる。