[PH47] ポジティブな事ほど簡単に覚えられると錯覚する
個人差としての抑うつ傾向の検討
キーワード:学習容易性判断、感情価、抑うつ傾向
問題と目的
感情価のある項目は,自分の能力以上に思い出しやいと判断し,簡単に覚えられると判断するといわれている(Takahashi,2018; Zimmarman & Kelly, 2010)。さらに,個人差の要因も検討され,Takahashi(2018)は,抑うつ傾向者は不快項目に対して,中性語よりも簡単に覚えられると判断することを報告した。しかし,Takahashi(2018)は不快語と中性語の比較にとどまっており,想起可能性を過大評価は不快項目のみで生じる現象であるかどうかは明確ではない。
そこで本研究は,Takahashi(2018)と同様の手続きで,不快語を快語に変更した。
方 法
実験参加者 参加者は関東圏内の私立大学生50名(女性:29名,年齢範囲20-23歳,中央値21歳)であった。デザインは抑うつ傾向2(抑うつ傾向群 vs. 統制群:間)×単語の感情価2(快 vs. 中性:内)の二要因混合計画であった。
材料 抑うつ尺度として,日本語版BDI-II(小嶋・古川,2003)を使用した。単語刺激として,日本語版ANEW(本間,2014)の漢字二字の名詞から,快単語と中性単語をそれぞれ24語ずつの合計48語使用した。
手続き 単語提示段階では単語を3秒間提示し,その間,参加者は「提示された単語の覚えやすさを判断してください。」という教示で学習容易性判断を(0-100を10刻みの11件法で回答)行い,単語提示直後に1秒以内で回答した。全ての学習容易性判断終了後に3分間の挿入課題をはさみ,単語の自由再生を行った。
結果と考察
記憶成績 再生率を従属変数として,抑うつ傾向2(抑うつ傾向群 vs. 統制群:間)×感情価 2(快 vs. 中性:内)の二要因分散分析を行った。結果として,抑うつ傾向の有意な主効果がみられた(F(1, 48)= 4.54, p <.05, η2p = .13)。また,感情価の主効果は有意ではなかった(F(1, 48)= 1.21, p = .33 , η2p = .05)。交互作用は有意ではなかった(F(1, 48)= 1.03, p < .42, η2p = .04)。
メタ記憶判断 既学習判断を従属変数として,抑うつ傾向2(抑うつ傾向群 vs. 統制群:間)×感情価 2(快 vs. 中性:内)の二要因分散分析を行った。結果として,抑うつと感情価の交互作用は有意であった(F(1, 48)= 7.43, p < .01 , η2p = .12)。単純主効果も有意であった。多重比較の結果,統制群において,快語は中性語よりも思い出せると判断した(t(45) = 2.43, p < .01, d = .34)。また中性語において,統制群よりも抑うつ傾向群の方が思い出せると判断した(t (96) = 2.13, p < .05, d = 0.44)(Figure 1)。
この結果から,抑うつ傾向者の学習容易性判断の過大評価は不快項目特有の現象であるということが示唆された。統制群が快項目において,中性語よりも容易性を過大評価した要因として,快項目に自己関連づけが生じたことが考えられる。今後の展望として,不快項目と快項目が中性項目に与えるプレ/ポストディクション効果を検討する必要がある。
感情価のある項目は,自分の能力以上に思い出しやいと判断し,簡単に覚えられると判断するといわれている(Takahashi,2018; Zimmarman & Kelly, 2010)。さらに,個人差の要因も検討され,Takahashi(2018)は,抑うつ傾向者は不快項目に対して,中性語よりも簡単に覚えられると判断することを報告した。しかし,Takahashi(2018)は不快語と中性語の比較にとどまっており,想起可能性を過大評価は不快項目のみで生じる現象であるかどうかは明確ではない。
そこで本研究は,Takahashi(2018)と同様の手続きで,不快語を快語に変更した。
方 法
実験参加者 参加者は関東圏内の私立大学生50名(女性:29名,年齢範囲20-23歳,中央値21歳)であった。デザインは抑うつ傾向2(抑うつ傾向群 vs. 統制群:間)×単語の感情価2(快 vs. 中性:内)の二要因混合計画であった。
材料 抑うつ尺度として,日本語版BDI-II(小嶋・古川,2003)を使用した。単語刺激として,日本語版ANEW(本間,2014)の漢字二字の名詞から,快単語と中性単語をそれぞれ24語ずつの合計48語使用した。
手続き 単語提示段階では単語を3秒間提示し,その間,参加者は「提示された単語の覚えやすさを判断してください。」という教示で学習容易性判断を(0-100を10刻みの11件法で回答)行い,単語提示直後に1秒以内で回答した。全ての学習容易性判断終了後に3分間の挿入課題をはさみ,単語の自由再生を行った。
結果と考察
記憶成績 再生率を従属変数として,抑うつ傾向2(抑うつ傾向群 vs. 統制群:間)×感情価 2(快 vs. 中性:内)の二要因分散分析を行った。結果として,抑うつ傾向の有意な主効果がみられた(F(1, 48)= 4.54, p <.05, η2p = .13)。また,感情価の主効果は有意ではなかった(F(1, 48)= 1.21, p = .33 , η2p = .05)。交互作用は有意ではなかった(F(1, 48)= 1.03, p < .42, η2p = .04)。
メタ記憶判断 既学習判断を従属変数として,抑うつ傾向2(抑うつ傾向群 vs. 統制群:間)×感情価 2(快 vs. 中性:内)の二要因分散分析を行った。結果として,抑うつと感情価の交互作用は有意であった(F(1, 48)= 7.43, p < .01 , η2p = .12)。単純主効果も有意であった。多重比較の結果,統制群において,快語は中性語よりも思い出せると判断した(t(45) = 2.43, p < .01, d = .34)。また中性語において,統制群よりも抑うつ傾向群の方が思い出せると判断した(t (96) = 2.13, p < .05, d = 0.44)(Figure 1)。
この結果から,抑うつ傾向者の学習容易性判断の過大評価は不快項目特有の現象であるということが示唆された。統制群が快項目において,中性語よりも容易性を過大評価した要因として,快項目に自己関連づけが生じたことが考えられる。今後の展望として,不快項目と快項目が中性項目に与えるプレ/ポストディクション効果を検討する必要がある。