[PH65] 高校生のソーシャルスキルをイラストで測る新たなアプローチ
キーワード:ソーシャルスキル、高校生、OECD
問題と目的
OECD(2015)は,社会性と情動のスキルの育成を重視している。OECDの国際学力評価プログラム(PISA)は,15歳(日本では高校1年生に相当)を対象とした国際調査である。PISAでは,協調問題解決能力という包括的な能力が測定されており,その一部にソーシャルスキルがある。このような社会的背景を踏まえて,本研究では,イラストを用いて特定のストーリーを描きそのストーリーにおいて高校生が発揮するソーシャルスキルを測るIllustration-Based Social Skills Test (IBSST) を作成する。このテストは,ソーシャルスキルに関する諸研究(e.g.,新川・富家,2015)を参考に,Figure 1の理論モデルにある6つのソーシャルスキルを測定できることを仮定した。
方 法
調査回答者 調査回答者は,オンライン調査会社のモニターである高校1年生412名(男女206名ずつ,Mage=15.81,SD=0.40)であった。
Illustration-Based Social Skills Test(IBSST) このテストは,42個のストーリーと,各ストーリーで取りうる4つの行動から成る課題遂行型テストであった。このテストでは,各ストーリーで友人やクラスメイトが登場し,彼らに対する4つの行動選択肢(質問項目)それぞれについて,「する」「しない」の2件法で回答を求めた。
結果と考察
Figure 1の理論モデルにある6つのスキル因子それぞれについて,bi-factorモデル(e.g.,坂本,2018)を仮定した確認的因子分析を行った。その結果,関係開始スキルと情動調整スキルの2つのスキル因子に関するモデルのみが,十分なモデル適合を示した。関係開始スキルは,4つのストーリーから成り,この因子の適合度指標は,GFI=.96,AGFI=.93,CFI=.94,RMSEA=.04であった。他方,情動調整スキルは,7つのストーリーから成り,この因子の適合度指標は,GFI=.92,AGFI=.89,CFI=.88,RMSEA=.04であった。これらの2つのスキル因子それぞれにおける行動選択肢すべての因子負荷量は.50未満であり,それほど高い値ではなかった。従って,Illustration-Based Social Skills Testには改良の余地がある。
本研究で作成したIllustration-Based Social Skills Testは,2件法で回答を求めており,2値データを扱っていた。そのため,分析結果が妥当であるか否か議論する必要がある。今後は,妥当な統計学的分析手法を用いて,理論モデルにある6つのソーシャルスキルを測定するのが望ましい。
主要引用文献
新川広樹・富家直明 (2015). 児童生徒の学
年・学校段階に応じたソーシャルスキル尺度の開発: 学校現場におけるコミュニケーション教育への活用に向けて 北海道医療大学心理科学部研究紀要, 11, 1-25.
付 記
本研究は,NPO法人教育テスト研究センター(CRET)における研究活動の一環として行ったものである。
OECD(2015)は,社会性と情動のスキルの育成を重視している。OECDの国際学力評価プログラム(PISA)は,15歳(日本では高校1年生に相当)を対象とした国際調査である。PISAでは,協調問題解決能力という包括的な能力が測定されており,その一部にソーシャルスキルがある。このような社会的背景を踏まえて,本研究では,イラストを用いて特定のストーリーを描きそのストーリーにおいて高校生が発揮するソーシャルスキルを測るIllustration-Based Social Skills Test (IBSST) を作成する。このテストは,ソーシャルスキルに関する諸研究(e.g.,新川・富家,2015)を参考に,Figure 1の理論モデルにある6つのソーシャルスキルを測定できることを仮定した。
方 法
調査回答者 調査回答者は,オンライン調査会社のモニターである高校1年生412名(男女206名ずつ,Mage=15.81,SD=0.40)であった。
Illustration-Based Social Skills Test(IBSST) このテストは,42個のストーリーと,各ストーリーで取りうる4つの行動から成る課題遂行型テストであった。このテストでは,各ストーリーで友人やクラスメイトが登場し,彼らに対する4つの行動選択肢(質問項目)それぞれについて,「する」「しない」の2件法で回答を求めた。
結果と考察
Figure 1の理論モデルにある6つのスキル因子それぞれについて,bi-factorモデル(e.g.,坂本,2018)を仮定した確認的因子分析を行った。その結果,関係開始スキルと情動調整スキルの2つのスキル因子に関するモデルのみが,十分なモデル適合を示した。関係開始スキルは,4つのストーリーから成り,この因子の適合度指標は,GFI=.96,AGFI=.93,CFI=.94,RMSEA=.04であった。他方,情動調整スキルは,7つのストーリーから成り,この因子の適合度指標は,GFI=.92,AGFI=.89,CFI=.88,RMSEA=.04であった。これらの2つのスキル因子それぞれにおける行動選択肢すべての因子負荷量は.50未満であり,それほど高い値ではなかった。従って,Illustration-Based Social Skills Testには改良の余地がある。
本研究で作成したIllustration-Based Social Skills Testは,2件法で回答を求めており,2値データを扱っていた。そのため,分析結果が妥当であるか否か議論する必要がある。今後は,妥当な統計学的分析手法を用いて,理論モデルにある6つのソーシャルスキルを測定するのが望ましい。
主要引用文献
新川広樹・富家直明 (2015). 児童生徒の学
年・学校段階に応じたソーシャルスキル尺度の開発: 学校現場におけるコミュニケーション教育への活用に向けて 北海道医療大学心理科学部研究紀要, 11, 1-25.
付 記
本研究は,NPO法人教育テスト研究センター(CRET)における研究活動の一環として行ったものである。