[P206] 自然災害伝承碑と住民の防災意識
埼玉県加須市のカスリーン台風を事例にして
キーワード:自然災害伝承碑、防災意識、台風
本稿の目的は,自然災害伝承碑が住民の防災意識に対してどのような機能を有しているのかについて考察を加えることであった。埼玉県加須市におけるカスリーン台風による被害を伝える伝承碑に焦点を当てた。加須市内の2地区の自主防災会が実施した利根川堤防決壊を知る経験者による体験談を分析の対象とした。両資料より決壊を示す経験者の発言を一文ごとに抽出した。68個の発言は,【決壊情報の伝達】と【決壊場所の特定】という大カテゴリーが得られた。後者には「決壊口」のカテゴリーが含まれた。水害経験者にとっては,知覚的・表象的に現存する災害の具体的内実を明確にしようとする語り(事象化)でありつつも,聞き手は,伝承碑である「決潰口跡」を媒介して,「あの場所で決壊したのだ」と事象を理解できることを示した。