10:45 AM - 11:00 AM
[R10-O-2] Age-specific characteristics of late Cambrian Furongian microbialites in North China: key to deciphering the changes from Cambrian to Ordovician biota
Keywords:Cambrian, Ordovician, microbialite, diversification
“カンブリア爆発”とオルドビス紀生物大放散(Great Ordovician Biodiversification Event: GOBE)は共に古生代前半に見られる生物の“放散現象”として知られている.前者は高次分類群での多様性で,後者は低次分類群での多様化で表現される場合が多い.相当する期間は,前者では前期から中期カンブリア紀であるのに対し,後者ではオルドビス紀全般に渡る.従って,両放散現象の関係を知るには後期カンブリア紀における生物相の情報が鍵になる.本発表では,北中国山東省に広く分布する炒米店層(芙蓉世[排碧期,江山期,第十期])の微生物岩の特性に注目する.
微生物岩は炒米店層のとくに下部から中部にかけて発達し,典型的な「柱状・ドーム状ストロマトライト」の他に,「複雑に分岐する形状を示すストロマトライト(“maceriate microbialite”)」や「ドーム状スロンボライト」で特徴付けられる.微生物岩は巨視的には数十cmから数m規模のバイオハームやバイオストロームを形成する.微生物岩の本体部はしばしば強くドロマイト化作用を被っている.ストロマトライトのコラム部は,ミクライト部と骨針を欠くメッシュ状・バーミフォーム状の海綿組織部の互層,石灰質微生物のGirvanellaやミクライト質のクロッツから構成される.微生物岩の本体部間は,ミクライト,ペロイド状粒子,三葉虫の生砕片などで充填される.炒米店層では石灰質扁平礫岩が頻繁に認められるが,微生物岩が石灰質扁平礫岩を基盤として,その直上に形成される場合もある.炒米店層よりも下位の張夏層(後期鳥溜期〜前期古丈期)の微生物岩は,石灰質微生物であるEpiphytonが走光性を示しながら集合し,スロンボライトを形成する場合が多い.局所的に,骨針を有し外形が明瞭なanthaspidellid lithistid海綿(Rankenella)やカンブリア紀サンゴ類(Cambroctoconus)が豊富に産出する.部分的に形成されているストロマトライト中では,炒米店層と同様にミクライト部と海綿組織部が認められる.
排碧期にはSteptoean positive carbon isotope excursion (SPICE)事変で代表される顕生累代の中でも最大規模の海洋無酸素事変が生じ,それに伴い大気中の酸素濃度が飛躍的に高くなっている.また,プランクトンの劇的な多様化(Plankton Revolution)が起きている(Saltzman et al., 2011).芙蓉世では無酸素および硫化(euxinic)条件の海洋環境が支配的であり(Gill et al., 2011),大型の造礁骨格生物がきわめて乏しい.現生海綿類の本体中には多種多様な微生物類が宿っており,海綿のみを対象にしてその生理的・代謝的な特性を議論することは困難である.カンブリア紀においても共存していた微生物類の活動による海綿本体の選択的な溶解や分解作用が,微生物岩を構成するミクライト,ペロイド状粒子,クロッツなどの生成と深く関与した可能性がある.その場合,ストロマトライト中のラミナ状組織の形成も「海綿と微生物類との共同体内での相互作用」の観点から調べていく必要がある.炒米店層の生物相は,還元環境下でも生息できる微生物類や骨格生物との関係から,張夏層とは別というよりも張夏層からの“生き残り”とも考えられる.炒米店層の生物相を“カンブリア爆発”による生物相の絶滅事変による結果と捉えるのか,GOBEの始まりと考えるのかは,今後,カンブリア紀からオルドビス紀にかけての生物相の放散現象の実態を考えていく際の鍵となる.
引用文献
Gill et al. (2011) Geochemical evidence for widespread euxinia in the later Cambrian ocean. Nature, 469, 80-83.
Saltzman et al. (2011) Pulse of atmospheric oxygen during the late Cambrian. PNAS, 108, 10, 3876-3881.
微生物岩は炒米店層のとくに下部から中部にかけて発達し,典型的な「柱状・ドーム状ストロマトライト」の他に,「複雑に分岐する形状を示すストロマトライト(“maceriate microbialite”)」や「ドーム状スロンボライト」で特徴付けられる.微生物岩は巨視的には数十cmから数m規模のバイオハームやバイオストロームを形成する.微生物岩の本体部はしばしば強くドロマイト化作用を被っている.ストロマトライトのコラム部は,ミクライト部と骨針を欠くメッシュ状・バーミフォーム状の海綿組織部の互層,石灰質微生物のGirvanellaやミクライト質のクロッツから構成される.微生物岩の本体部間は,ミクライト,ペロイド状粒子,三葉虫の生砕片などで充填される.炒米店層では石灰質扁平礫岩が頻繁に認められるが,微生物岩が石灰質扁平礫岩を基盤として,その直上に形成される場合もある.炒米店層よりも下位の張夏層(後期鳥溜期〜前期古丈期)の微生物岩は,石灰質微生物であるEpiphytonが走光性を示しながら集合し,スロンボライトを形成する場合が多い.局所的に,骨針を有し外形が明瞭なanthaspidellid lithistid海綿(Rankenella)やカンブリア紀サンゴ類(Cambroctoconus)が豊富に産出する.部分的に形成されているストロマトライト中では,炒米店層と同様にミクライト部と海綿組織部が認められる.
排碧期にはSteptoean positive carbon isotope excursion (SPICE)事変で代表される顕生累代の中でも最大規模の海洋無酸素事変が生じ,それに伴い大気中の酸素濃度が飛躍的に高くなっている.また,プランクトンの劇的な多様化(Plankton Revolution)が起きている(Saltzman et al., 2011).芙蓉世では無酸素および硫化(euxinic)条件の海洋環境が支配的であり(Gill et al., 2011),大型の造礁骨格生物がきわめて乏しい.現生海綿類の本体中には多種多様な微生物類が宿っており,海綿のみを対象にしてその生理的・代謝的な特性を議論することは困難である.カンブリア紀においても共存していた微生物類の活動による海綿本体の選択的な溶解や分解作用が,微生物岩を構成するミクライト,ペロイド状粒子,クロッツなどの生成と深く関与した可能性がある.その場合,ストロマトライト中のラミナ状組織の形成も「海綿と微生物類との共同体内での相互作用」の観点から調べていく必要がある.炒米店層の生物相は,還元環境下でも生息できる微生物類や骨格生物との関係から,張夏層とは別というよりも張夏層からの“生き残り”とも考えられる.炒米店層の生物相を“カンブリア爆発”による生物相の絶滅事変による結果と捉えるのか,GOBEの始まりと考えるのかは,今後,カンブリア紀からオルドビス紀にかけての生物相の放散現象の実態を考えていく際の鍵となる.
引用文献
Gill et al. (2011) Geochemical evidence for widespread euxinia in the later Cambrian ocean. Nature, 469, 80-83.
Saltzman et al. (2011) Pulse of atmospheric oxygen during the late Cambrian. PNAS, 108, 10, 3876-3881.