2:30 PM - 2:45 PM
[R4-O-1] Progressive metamorphism and attribution of metamorphic rocks from the Seto Inland Sea, South of Yamaguchi Prefecture
Keywords:Ryoke belt, Isograd, Biotite K-Ar age
研究目的 山口県南部には、中生代の地質帯が広く分布する。それらは主に三畳紀高圧型変成岩類、白亜紀高温型変成岩類および白亜紀火成岩類(深成岩、火山岩)である。講演者らは、これまで山口県南部下松市~防府市沖の大島半島・粭島、大津島そして野島に産する泥質片岩に着目して変成作用の特徴、変成温度・圧力条件および変成年代について検討してきた。本発表は、これまでに得られたデータに笠戸島(Beppu & Okudaira, 2006)のデータを加えて整理し、この地域に分布する変成岩類の変成温度・圧力条件と黒雲母K–Ar年代から,変成作用の特徴や帰属を議論する。
地質概要 調査地域には泥質片岩が卓越し、珪質片岩や変成チャートをレンズ状岩体やブロックとして伴う。また、野島の北部には枕状構造が発達した変玄武岩ブロックが分布する。その他、石灰岩や石灰珪質片岩も少量伴われる。
岩石記載 泥質片岩は細粒で片理面が発達し、線構造も認められる。主な変成鉱物は黒雲母(Bt)、白雲母(Ms)、菫青石(Crd)、ザクロ石(Grt)、紅柱石(And)で、緑泥石(Chl)やカリ長石(Kfs)を伴う。各地域で北から南へ以下の組み合わせを示す。
笠戸島:Ms+Bt±Grt、Ms+Bt+Crd+Kfs±Grt、Ms+Bt+Grt+Kfs
大島半島・粭島:Bt±Ms、Bt+Crd±Ms、Bt+Crd+Grt±Kfs、Bt+Ms+And
大津島:Bt±Ms、Bt+Grt±Ms、Bt+Crd+And、Bt+Crd±Ms
野島:Bt+Ms±Chl±Grt、Bt+Ms+Grt+Kfs
K-Ar年代 粭島と野島の泥質片岩から黒雲母を分離し、K-Ar年代を測定した。その結果、粭島90.1±2.1Ma、野島92.1±2.1Maという冷却年代を得た。
変成分帯 変成鉱物組み合わせの変化から、笠戸島、大島半島・粭島および大津島は北部の黒雲母帯と南部の菫青石帯に分帯される。一方、野島は北部が黒雲母帯で、南部がザクロ石帯に分帯された。泥質片岩の化学組成は、野島のザクロ石帯とそれ以外の菫青石帯でFe/Fe+Mg(XFe)値とMn/Fe+Mg+Mn(XMn)値が異なり、いずれも野島産の岩石が最も高い。この傾向はザクロ石の組成でも同じである。従って、野島にザクロ石帯が存在するのは、泥質片岩の化学組成が高XFe・XMn値であることによると考えらえる。
ピーク時の変成温度と圧力 Beppu and Okudaira(2006)は笠戸島の領家帯変成岩について研究し、菫青石帯の変成温度・圧力条件として550℃、250MPaを見積もった。一方,野島産ザクロ石帯の変成岩類についても、480-530℃、180-300MPaが見積もられた。すなわち、菫青石帯とザクロ石帯の変成度はほぼ同じであると考えられる。
変成岩類の帰属 大島半島北部、粭島および大津島は、これまで高圧型変成作用を受けた周防帯とされてきた。本研究では、これらの地域から菫青石や紅柱石を見出し、鉱物組み合わせ,変成温度・圧力条件および黒雲母K–Ar年代から,山口県南部の笠戸島から野島に産する変成岩類は領家帯に帰属すると考えられる。一方、黒雲母帯と菫青石帯(ザクロ石帯)のアイソグラッドの位置は、大島半島・粭島から大津島は連続するが、笠戸島と野島には連続しない。この原因について、この地域の熱構造形成後の変形によって改変された可能性がある。
引用文献
芥川祐樹・大和田正明(2018)山口県南部に産する低圧型変成岩類の変形・変成作用.日本地質学会学術大会講演要旨(札幌).
Beppu, Y. and Okudaira, T. (2006) Geology and metamorphic zonation of the Ryoke Metamorphic Belt on Kasado-jima Island, SW Japan. Journal of Mineralogocal and Petrological Sciences. 101, 240-253.
地質概要 調査地域には泥質片岩が卓越し、珪質片岩や変成チャートをレンズ状岩体やブロックとして伴う。また、野島の北部には枕状構造が発達した変玄武岩ブロックが分布する。その他、石灰岩や石灰珪質片岩も少量伴われる。
岩石記載 泥質片岩は細粒で片理面が発達し、線構造も認められる。主な変成鉱物は黒雲母(Bt)、白雲母(Ms)、菫青石(Crd)、ザクロ石(Grt)、紅柱石(And)で、緑泥石(Chl)やカリ長石(Kfs)を伴う。各地域で北から南へ以下の組み合わせを示す。
笠戸島:Ms+Bt±Grt、Ms+Bt+Crd+Kfs±Grt、Ms+Bt+Grt+Kfs
大島半島・粭島:Bt±Ms、Bt+Crd±Ms、Bt+Crd+Grt±Kfs、Bt+Ms+And
大津島:Bt±Ms、Bt+Grt±Ms、Bt+Crd+And、Bt+Crd±Ms
野島:Bt+Ms±Chl±Grt、Bt+Ms+Grt+Kfs
K-Ar年代 粭島と野島の泥質片岩から黒雲母を分離し、K-Ar年代を測定した。その結果、粭島90.1±2.1Ma、野島92.1±2.1Maという冷却年代を得た。
変成分帯 変成鉱物組み合わせの変化から、笠戸島、大島半島・粭島および大津島は北部の黒雲母帯と南部の菫青石帯に分帯される。一方、野島は北部が黒雲母帯で、南部がザクロ石帯に分帯された。泥質片岩の化学組成は、野島のザクロ石帯とそれ以外の菫青石帯でFe/Fe+Mg(XFe)値とMn/Fe+Mg+Mn(XMn)値が異なり、いずれも野島産の岩石が最も高い。この傾向はザクロ石の組成でも同じである。従って、野島にザクロ石帯が存在するのは、泥質片岩の化学組成が高XFe・XMn値であることによると考えらえる。
ピーク時の変成温度と圧力 Beppu and Okudaira(2006)は笠戸島の領家帯変成岩について研究し、菫青石帯の変成温度・圧力条件として550℃、250MPaを見積もった。一方,野島産ザクロ石帯の変成岩類についても、480-530℃、180-300MPaが見積もられた。すなわち、菫青石帯とザクロ石帯の変成度はほぼ同じであると考えられる。
変成岩類の帰属 大島半島北部、粭島および大津島は、これまで高圧型変成作用を受けた周防帯とされてきた。本研究では、これらの地域から菫青石や紅柱石を見出し、鉱物組み合わせ,変成温度・圧力条件および黒雲母K–Ar年代から,山口県南部の笠戸島から野島に産する変成岩類は領家帯に帰属すると考えられる。一方、黒雲母帯と菫青石帯(ザクロ石帯)のアイソグラッドの位置は、大島半島・粭島から大津島は連続するが、笠戸島と野島には連続しない。この原因について、この地域の熱構造形成後の変形によって改変された可能性がある。
引用文献
芥川祐樹・大和田正明(2018)山口県南部に産する低圧型変成岩類の変形・変成作用.日本地質学会学術大会講演要旨(札幌).
Beppu, Y. and Okudaira, T. (2006) Geology and metamorphic zonation of the Ryoke Metamorphic Belt on Kasado-jima Island, SW Japan. Journal of Mineralogocal and Petrological Sciences. 101, 240-253.