128th JGS: 2021

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Oral

R4 [Regular Session]Metamorphic rocks and tectonics

[1ch314-18] R4 [Regular Session]Metamorphic rocks and tectonics

Sat. Sep 4, 2021 2:30 PM - 4:00 PM ch3 (ch3)

Chiar:Kentaro Yoshida, Tomoki Taguchi, Tatsuro Adachi

2:45 PM - 3:15 PM

[R4-O-2] [Invited]Igneous, metamorphic and deformation history of the Ryoke Belt (Mikawa area, Japan) - A petrochronological study

*Tetsuo Kawakami1, Tomoe Ichino1, Keiichi Kazuratachi1, Shuhei Sakata2, Kota Takatsuka1 (1. Kyoto University, 2. The University of Tokyo)

Keywords:Continental crust, Metamorphism, Petrochronology, U-Pb zircon dating, ductile deformation

ペトロクロノロジーと野外地質調査を組み合わせた研究手法を用いて、領家帯三河地域における深成-変成-変形履歴を読み取る研究を行った。Bt帯からGrt-Crd帯までの変成分帯として記録された広域変成作用のうち、珪線石安定領域における部分溶融を伴う高度変成は約97 Ma~約89 Maまでの間、中部地殻深度(~ 21-14 km)で続いていた。約87 Maには珪線石-紅柱石脈が形成されていることから550 ℃以上のサブソリダス条件に変成度は下降していたと考えられ、87-75 Ma花崗岩類がGrt-Crd帯の最下部に貫入するまでサブソリダスな条件は継続していた。Grt-Crd帯の約79Maのペグマタイト脈が変形同時の産状を示すこと、81-75 Ma花崗岩類が変形していること、そして81-75 Ma花崗岩類はMTLに沿うように50 km以上にわたって分布していることから、81-75 Ma花崗岩類の貫入はGrt-Crd帯最下部の中部地殻における広域的なスケールの延性変形を引き起こしたと考えられる。Grt-Crd帯のミグマタイトには81-75 Ma花崗岩類の貫入同時期のジルコンのオーバーグロウスが見られるものがある。従って、三河地域のGrt-Crd帯の広域変成作用は複数相の変成・変形からなると言える。このような広域変成作用よりも若い片麻状花崗岩類のGrt-Crd帯への貫入と、貫入同時の変成・変形作用は、青山高原地域(Kawakami et al., 2019)や柳井地域(Skrzypek et al., 2016)では認められていない。従って、三河地域より西方地域のGrt-Crd帯では複数相の広域変成・変形のオーバープリントは起きていないと思われる。

広域変成作用の変成分帯で示される約97 Maから約75 Ma頃までの地殻断面のうち高変成度部は、約75-69 Maまでに傾斜しながら約13-9 kmまで上昇し、そこに変成分帯を横断するように75-69 Ma花崗岩類が貫入した(Takatsuka et al., 2018)。従って、約97 Maから約75 Ma頃までの地殻断面に斜交して上書きするように、約70Ma頃の地殻断面の記録が保存されている。約70 Maの三河地域の地殻断面(上部地殻のみが露出)は75-69 Ma花崗岩類とその接触変成帯、および濃飛流紋岩で代表される。75-69 Ma花崗岩類の中で最大のバソリスであり、約75-69 Maの年代幅を持つ伊奈川花崗閃緑岩の周囲にはミグマタイト帯が発達するが、そのミグマタイト中のジルコンリムは約74 Maを与える。また、伊奈川花崗閃緑岩の周囲の変成岩中に貫入する変形同時のペグマタイト脈は約70Maの年代を与える。これらのことから、伊奈川花崗閃緑岩の貫入が、周囲の接触変成帯における局所的な部分溶融と延性変形のきっかけとなったと考えられる。

本研究により、熱い地殻へのパルス状の花崗岩類の貫入は、様々な深度で広域的・局所的な延性変形を引き起こすきっかけとなることがわかった。エピソディックな花崗岩類の上・中部地殻への貫入は地殻の強度をコントロールする重要な要因の1つである。

引用文献
Kawakami et al., 2019, Lithos, 338–339, 189–203.
Skrzypek et al., 2016, Lithos, 260, 9-27.
Takatsuka et al., 2018, Lithos, 308–309, 428–445.