4:30 PM - 7:00 PM
[R4-P-6] Roll-up structure due to the collision of Izu arc revealed from the shear sense of the Sanbagawa metamorphic rocks along the MTL in the Akaishi area
Keywords: Roll-up structure, shear sense, Sanbagawa schists, Akaishi area
目的:中部日本に存在する三波川帯,秩父帯,および四万十帯は赤石山地を境として屈曲しており,さらに一般走向傾斜は赤石岳付近を境界として赤石山地南部では北東-南西走向・北西傾斜,北部では南-北走向・東傾斜に変化している.松島 (1973, 1997) によると,日本海の開裂に引き続く伊豆-小笠原孤の衝突により,これら3帯は“逆くの字型”にねじり曲がるだけでなく,北部がまくれ上がったとしている.まくれ上がりが起こっているとすると,中央構造線に近接する三波川帯に記録されている変成時の延性剪断作用のセンスも北部では逆転しているはずである.そこで本論では,長野県伊那地域と静岡県天竜地域の両地域に存在する三波川変成岩の延性剪断変形について調査を行ったので,その結果をここに報告する.
方法:各地域で採取した三波川結晶片岩類である泥質片岩・緑色片岩に見られる片理面に直交かつ伸長線構造に平行なXZ薄片を作成し,鏡下観察に基づいて剪断センスを決定した.剪断センスを決定するのに用いた主な剪断指標は,泥質片岩はシアバンド,石英形態ファブリック,そして白雲母フィッシュ,緑色片岩はシアバンドのみである.
結果と結論:伊那地域では24試料の中で剪断センスが観察できた22試料のうち,17試料が上盤北ずれ,5試料が上盤南ずれであり,全体として上盤北ずれが優勢であった.またピッチの範囲はおおよそ10~30°に収まった.同様に静岡県天竜地域では34試料の中で剪断センスが観察できた29試料のうち,22試料が上盤西ずれ,7試料が上盤東ずれであった.ピッチの範囲は沢ごとによってばらつきが見られたものの,全体としては上盤西ずれが優勢であり,これは四国や関東の三波川帯で報告されている剪断センスの結果と調和的である (例えば, Wallis et al., 1992; 阿部ほか, 2001).また,伊那地域の外帯構成層の大部分は基本的に東傾斜であり,上下判定できる四万十帯の砂岩泥岩互層部は逆転していることが知られている(河内ほか,1983).以上の結果と先行研究の報告から,赤石山地のまくれ上がりモデルは,三波川変成岩の剪断センスから見ても妥当なものであると考えられる.
参考文献
阿部龍巳・高木秀雄・島田耕史・木村慎治・池山恵介・宮下 敦, 2001, 関東山地三波川変成岩類の延性剪断変形.地質雑,107,337-353.
河内洋祐・湯浅真人・片田正人,1983,市野瀬地域の地質,地域地質研究報告(5万分の1地質図幅).地質調査所,70p.
松島信幸(1973): 赤石山地の中央構造線. 「中央構造線」(杉山隆二編), 9-27, 東海大学出版会
松島信幸(1997): 赤石山地形成論-ポスト和田変動と中央構造線のまくれ上がりについて-. 飯田市美術博物館研究紀要, 7, 145-162.
Wallis, S.R., Banno, S. and Radvanec, M, 1992, Kinematic, structure and relationship to metamorphism of the east-west flow in the Sambagawa Belt, southwest Japan. The Island Arc, 1, 176-185.
方法:各地域で採取した三波川結晶片岩類である泥質片岩・緑色片岩に見られる片理面に直交かつ伸長線構造に平行なXZ薄片を作成し,鏡下観察に基づいて剪断センスを決定した.剪断センスを決定するのに用いた主な剪断指標は,泥質片岩はシアバンド,石英形態ファブリック,そして白雲母フィッシュ,緑色片岩はシアバンドのみである.
結果と結論:伊那地域では24試料の中で剪断センスが観察できた22試料のうち,17試料が上盤北ずれ,5試料が上盤南ずれであり,全体として上盤北ずれが優勢であった.またピッチの範囲はおおよそ10~30°に収まった.同様に静岡県天竜地域では34試料の中で剪断センスが観察できた29試料のうち,22試料が上盤西ずれ,7試料が上盤東ずれであった.ピッチの範囲は沢ごとによってばらつきが見られたものの,全体としては上盤西ずれが優勢であり,これは四国や関東の三波川帯で報告されている剪断センスの結果と調和的である (例えば, Wallis et al., 1992; 阿部ほか, 2001).また,伊那地域の外帯構成層の大部分は基本的に東傾斜であり,上下判定できる四万十帯の砂岩泥岩互層部は逆転していることが知られている(河内ほか,1983).以上の結果と先行研究の報告から,赤石山地のまくれ上がりモデルは,三波川変成岩の剪断センスから見ても妥当なものであると考えられる.
参考文献
阿部龍巳・高木秀雄・島田耕史・木村慎治・池山恵介・宮下 敦, 2001, 関東山地三波川変成岩類の延性剪断変形.地質雑,107,337-353.
河内洋祐・湯浅真人・片田正人,1983,市野瀬地域の地質,地域地質研究報告(5万分の1地質図幅).地質調査所,70p.
松島信幸(1973): 赤石山地の中央構造線. 「中央構造線」(杉山隆二編), 9-27, 東海大学出版会
松島信幸(1997): 赤石山地形成論-ポスト和田変動と中央構造線のまくれ上がりについて-. 飯田市美術博物館研究紀要, 7, 145-162.
Wallis, S.R., Banno, S. and Radvanec, M, 1992, Kinematic, structure and relationship to metamorphism of the east-west flow in the Sambagawa Belt, southwest Japan. The Island Arc, 1, 176-185.