4:30 PM - 7:00 PM
[R9-P-7] (entry) Microplastic sedimentology of grain size and grain shape
Keywords:Microplastics, Marine sediment, Stokes' law
近年,プラスチックによる海洋汚染が社会問題となっている.廃棄されるプラスチックのうち多くが海洋に流出していると推定されており(Jambeck et al., 2015)それらが細かく砕かれマイクロプラスチック(MP)として世界各地の海洋に拡散し続けている.またプラスチック汚染が海洋生態系に与える影響や人間の健康への影響について懸念が高まっている.このような海洋におけるプラスチック汚染の実態は,世界各地で調査が行われているが,その多くのゆくえがわかっておらず深海での影響や海洋での挙動も不明である.
一般的にMPは,河川などを通じて陸上から海洋に運搬され,海面や中層を浮遊して徐々に沈降し,深海底に到達すると予想される.しかし砂や粘土といった堆積物粒子の運搬を考えたとき,海流による移動,津波・地震・洪水による混濁流,海底地形などの影響を受けており,MPも同じような影響を受け海洋に拡散していることが考えられる.実際,世界中での様々な深海環境における観測されたMP繊維の存在量を見たとき海底谷・海溝・コンターライトドリフトでMPの量が多いことがわかっている(Ian et al., 2020).このことからもMPの海底分布を説明するには,海面からの垂直方向の沈降によってのみ説明されるのではなく粒子の堆積学的な運搬過程を背景として検討する必要があると考えられる.
プラスチックの密度は0.9~2.2 g/cm3程度である.それらは海底で運搬されるとき,さまざまな粒子とともに移動,堆積する.一般的に,堆積学の特にベッドフォームなどの実験では石英砂での結果が示されており,MPの海底での挙動を堆積学的に考えるためには,MPと同一の挙動を示す石英砂の粒径が重要な概念となる.このように,さまざまな粒子を石英砂にしたときの堆積物粒子の運搬・堆積環境などを議論した研究例として,廣木(2015)がある.ここでは,重力流が卓越する有孔虫化石殻に着目し,有孔虫化石殻と砂粒子の粒度分布を分析・比較することで,堆積物の由来・来歴についての議論を行っている.
そこで本研究では, MPの堆積物粒子としての側面に着目し,実験を通して,MPの進行速度を求め,沈降粒径を算出し,石英粒子の粒径との比較を行った.今回の沈降実験は,廣木(2015)を参考にし,それを小規模にしたものである. 実験はプラスチックを用意し,顕微鏡を用いて実測粒径を計測する.沈降速度は,1000 ml メスシリンダーを用いて測定した.メスシリンダーには,2本の赤線を引き,30㎝の計測区間を設けた.室温メスシリンダーに常温の水を満たし,その中に 1 個ずつ投入し,線から線を通過する時間を測定した.その後,得られた沈降速度か沈降粒径を求めるために,Gibbs et al. (1971)の計算式を用いた. また,海底で見つかっているMPの多くが繊維状であることや板状・粒状などさまざまな形状があると考えられる.そのためさまざまな形状のプラスチックを用いて実験を行った. その結果,ほとんどのMPが実測粒径よりも沈降粒径の方が小さい傾向を示した.今回,使用したプラスチックの密度は,1.04~1.41 g/cm3程度であり.石英の密度 2.65 g/cm3 より小さいため沈降粒形が小さくなっている.また形状の違いも沈降粒形に影響を及ぼすと容易に推測される.本発表では,それらの実験結果を指し示すとともに,粒子形状についての考察についても報告したい.さらに,実際に採取された堆積物での実例についても報告する予定である.
文献
廣木(2015) 日本古生物学会, 98, 17-27. Ian et al. (2020) Science, 368, 1140-1145. Jambeck et al. (2015), Science, 347, 768-771. Gibbs et al. (1971) Journal of Sedimentary Petrology, 41, 7-18.
一般的にMPは,河川などを通じて陸上から海洋に運搬され,海面や中層を浮遊して徐々に沈降し,深海底に到達すると予想される.しかし砂や粘土といった堆積物粒子の運搬を考えたとき,海流による移動,津波・地震・洪水による混濁流,海底地形などの影響を受けており,MPも同じような影響を受け海洋に拡散していることが考えられる.実際,世界中での様々な深海環境における観測されたMP繊維の存在量を見たとき海底谷・海溝・コンターライトドリフトでMPの量が多いことがわかっている(Ian et al., 2020).このことからもMPの海底分布を説明するには,海面からの垂直方向の沈降によってのみ説明されるのではなく粒子の堆積学的な運搬過程を背景として検討する必要があると考えられる.
プラスチックの密度は0.9~2.2 g/cm3程度である.それらは海底で運搬されるとき,さまざまな粒子とともに移動,堆積する.一般的に,堆積学の特にベッドフォームなどの実験では石英砂での結果が示されており,MPの海底での挙動を堆積学的に考えるためには,MPと同一の挙動を示す石英砂の粒径が重要な概念となる.このように,さまざまな粒子を石英砂にしたときの堆積物粒子の運搬・堆積環境などを議論した研究例として,廣木(2015)がある.ここでは,重力流が卓越する有孔虫化石殻に着目し,有孔虫化石殻と砂粒子の粒度分布を分析・比較することで,堆積物の由来・来歴についての議論を行っている.
そこで本研究では, MPの堆積物粒子としての側面に着目し,実験を通して,MPの進行速度を求め,沈降粒径を算出し,石英粒子の粒径との比較を行った.今回の沈降実験は,廣木(2015)を参考にし,それを小規模にしたものである. 実験はプラスチックを用意し,顕微鏡を用いて実測粒径を計測する.沈降速度は,1000 ml メスシリンダーを用いて測定した.メスシリンダーには,2本の赤線を引き,30㎝の計測区間を設けた.室温メスシリンダーに常温の水を満たし,その中に 1 個ずつ投入し,線から線を通過する時間を測定した.その後,得られた沈降速度か沈降粒径を求めるために,Gibbs et al. (1971)の計算式を用いた. また,海底で見つかっているMPの多くが繊維状であることや板状・粒状などさまざまな形状があると考えられる.そのためさまざまな形状のプラスチックを用いて実験を行った. その結果,ほとんどのMPが実測粒径よりも沈降粒径の方が小さい傾向を示した.今回,使用したプラスチックの密度は,1.04~1.41 g/cm3程度であり.石英の密度 2.65 g/cm3 より小さいため沈降粒形が小さくなっている.また形状の違いも沈降粒形に影響を及ぼすと容易に推測される.本発表では,それらの実験結果を指し示すとともに,粒子形状についての考察についても報告したい.さらに,実際に採取された堆積物での実例についても報告する予定である.
文献
廣木(2015) 日本古生物学会, 98, 17-27. Ian et al. (2020) Science, 368, 1140-1145. Jambeck et al. (2015), Science, 347, 768-771. Gibbs et al. (1971) Journal of Sedimentary Petrology, 41, 7-18.