4:30 PM - 7:00 PM
[R23-P-2] (entry) Assessment of the level of activity of advective transport through fractures in Neogene mudstone by comparison between stable isotope compositions of fracture and pore waters
Keywords:Sedimentary rocks, Fractures, Advective transport, Stable water isotopes, Horonobe
ある端成分をもつ水が岩石中の亀裂に沿って流れている場合、亀裂内の水(亀裂水)の安定同位体比(δD, δ18O)は、亀裂周辺の岩石マトリクス内に含まれる間隙水に比べてより当該端成分に近い値を示すと推定される(図(a))。一方、亀裂水が停滞している場合には、亀裂と岩石マトリクスの間における拡散によって、亀裂水と間隙水の安定同位体比は類似した値を示すと推定される(図(b))。以上の推定の妥当性を検証するために、北海道幌延地域の新第三紀泥岩を対象として、鉛直ボーリング孔(HDB-5, -6, -9, PB-V01)の長期揚水により得られた亀裂水と揚水区間周辺の岩石コア中の間隙水とで安定同位体比を比較した。
HDB-5孔の深度28~250 mおよびHDB-9孔の深度27~83 mでは、亀裂水および間隙水の安定同位体比が天水(最終氷期の天水/最終氷期以降の天水)の端成分にもっとも近い値を示し、かつ亀裂水の安定同位体比は間隙水に比べて天水の端成分により近い値を示した。このことは、天水がもっとも浸透しているHDB-5および-9孔の浅部領域において、亀裂に沿った天水の移流が生じていることを示唆する。一方、HDB-6孔およびPB-V01孔において天水がもっとも浸透していると考えられる深度(それぞれ、280~313 mおよび183~277 m)や、各孔のそれ以外の深度領域では、亀裂水の安定同位体比は周辺深度の間隙水の値と同程度であった。これらの領域では、亀裂に沿った天水の移流が現在は生じていないことが示唆される。
水の安定同位体比を利用した成分分離(寺本ほか, 2006)および亀裂水中でのトリチウムの検出から、本研究の対象深度における地下水は化石海水と最終氷期に浸透した天水の混合により形成され、HDB-5および-9孔の浅部領域のみに最終氷期以降(現在)の天水が浸透していると推測される。このことは、同領域において亀裂に沿った天水の移流が生じているという本研究の推定結果と整合的であり、天水の移流の程度に関する評価手法の妥当性を支持するものである。HDB-5および-9孔の浅部領域では淡水水頭が静水圧よりもやや離れた値を示しており、相対的に高い動水勾配のために天水の移流が生じていると考えられる。本研究により得られた知見は、地層処分の安全評価において、亀裂や断層に沿った地下水の移流の程度を評価するのに役立てることができる。
引用文献:寺本ほか (2006), 応用地質, vol.47, No.2, pp.68-76.
HDB-5孔の深度28~250 mおよびHDB-9孔の深度27~83 mでは、亀裂水および間隙水の安定同位体比が天水(最終氷期の天水/最終氷期以降の天水)の端成分にもっとも近い値を示し、かつ亀裂水の安定同位体比は間隙水に比べて天水の端成分により近い値を示した。このことは、天水がもっとも浸透しているHDB-5および-9孔の浅部領域において、亀裂に沿った天水の移流が生じていることを示唆する。一方、HDB-6孔およびPB-V01孔において天水がもっとも浸透していると考えられる深度(それぞれ、280~313 mおよび183~277 m)や、各孔のそれ以外の深度領域では、亀裂水の安定同位体比は周辺深度の間隙水の値と同程度であった。これらの領域では、亀裂に沿った天水の移流が現在は生じていないことが示唆される。
水の安定同位体比を利用した成分分離(寺本ほか, 2006)および亀裂水中でのトリチウムの検出から、本研究の対象深度における地下水は化石海水と最終氷期に浸透した天水の混合により形成され、HDB-5および-9孔の浅部領域のみに最終氷期以降(現在)の天水が浸透していると推測される。このことは、同領域において亀裂に沿った天水の移流が生じているという本研究の推定結果と整合的であり、天水の移流の程度に関する評価手法の妥当性を支持するものである。HDB-5および-9孔の浅部領域では淡水水頭が静水圧よりもやや離れた値を示しており、相対的に高い動水勾配のために天水の移流が生じていると考えられる。本研究により得られた知見は、地層処分の安全評価において、亀裂や断層に沿った地下水の移流の程度を評価するのに役立てることができる。
引用文献:寺本ほか (2006), 応用地質, vol.47, No.2, pp.68-76.