10:45 AM - 11:00 AM
[R13-O-9] Detailed seafloor morphology and geological structure in the southern part of the Okinawa Trough north off Ishigaki Island
Keywords:Okinawa Trough, Yaeyama Graben, Normal fault, Seafloor morphology, Multi-channel Seismic Reflection Survey
大陸縁辺に位置する背弧海盆の発達形式の解明は、リソスフェアの発達を理解するための重要な事項と考えられる。大陸縁辺のリフト状態の背弧海盆は沖縄トラフとブランズフィールド海峡に限定されているため、現在のそのような変形の希少性のためによく理解されていない。沖縄トラフ南部では、1.5 Maから断続的なリフティングが発生していると考えられている(Sibuet et al., 1998)。沖縄トラフ南部・八重山海底地溝周辺ではArai et al. (2017)及びNishizawa et al. (2019)により、沖縄トラフを充填するトラフ充填堆積層の構造や八重山海底地溝周辺の地質構造などが最新の反射法地震探査結果に基づいてまとめられている。なかでも、Arai et al. (2017)では八重山海底地溝直下でのマグマ貫入構造の存在、およびトラフ充填堆積層部分に低速であり、かつ低反射率を示す領域を発見し、マグマ溜まりの存在を指摘している。沖縄トラフ南部の現在の状態を明らかにするべく、2021年1月に海洋研究開発機構の学術研究船「白鳳丸」によるKH-21-3航海にて統合的な海洋地質・地球物理学的調査を実施した。KH-21-3航海ではピストンコアリングやヒートフロー観測などの停船観測と反射法地震探査などの航走観測を実施した。なかでも、航走観測では海底地形調査、マルチチャネル反射法地震(MCS)探査、サブボトムプロファイラー探査、地磁気観測(プロトン磁力計及び船上3成分磁力計)、船上重力観測、およびXCTD観測を実施した。MCS探査では、2基の355立方インチGIガン(総容積710立方インチ)と1,200 m, 48chストリーマーケーブルを使用した。また、プロトン磁力計による地磁気観測では船体磁化の影響を避けるために、船体から約290 m後方で磁力計本体を曳航した。
海底地形調査によって、20 mグリッドの非常に高精度な海底地形データを作成することができ、詳細な海底地形が明らかになった。八重山海底地溝周辺では、おおよそ東西走向のリニアメントが無数に発達している。八重山海底地溝の南方の沖縄トラフ部分にはこれまで未記載の比高約100 mの地形的高まりが2体存在していることが初めて明らかになった。MCS探査では沖縄トラフ南部の地質構造を海底下約2秒の範囲を明らかにできた。沖縄トラフは島弧から連続する基盤層とトラフ充填堆積層の2つに大きく区分できた。上位のトラフ充填堆積層は概ね水平成層で非常に連続的な内部反射面を示す。石垣海丘群の東縁部を通る箇所では、周囲の堆積層と内部反射面が異なる散乱した反射パターンが認められ、これらは火山性物質から構成されると解釈できる。Arai et al. (2017) で指摘されたマグマ貫入構造に相当する箇所では、マグマ貫入に関連する反射面や堆積層の変形が認められた。なお、前述した2体の地形的高まりはこのマグマ貫入構造と隣接する。地形的高まりの内部構造は非常に不鮮明であることから下部からの貫入の存在が示唆されるが、磁気異常観測値では周辺のトラフ充填堆積層部分と同様の値を示している。加えて、八重山海底地溝周辺やトラフ底部分では正断層の発達が多数認められ、その多くが海底面に到達していることから活動的な正断層であることが示唆される。
本発表では沖縄トラフ南部の詳細な海底地形、地質構造および今回発見した地形的高まり周辺の地下構造について現段階の解釈を紹介する。また、2021年8月に実施した新青丸KS-21-17航海の結果についても一部紹介する予定である。
引用文献
Arai, R. et al. (2017) J. Geophys. Res., 122, 622–641; Nishizawa, A. et al. (2019) Earth, Planets and Space, 71:21; Sibuet, J.C. et al. (1998) J Geophys Res., 103, 30245–30267.
海底地形調査によって、20 mグリッドの非常に高精度な海底地形データを作成することができ、詳細な海底地形が明らかになった。八重山海底地溝周辺では、おおよそ東西走向のリニアメントが無数に発達している。八重山海底地溝の南方の沖縄トラフ部分にはこれまで未記載の比高約100 mの地形的高まりが2体存在していることが初めて明らかになった。MCS探査では沖縄トラフ南部の地質構造を海底下約2秒の範囲を明らかにできた。沖縄トラフは島弧から連続する基盤層とトラフ充填堆積層の2つに大きく区分できた。上位のトラフ充填堆積層は概ね水平成層で非常に連続的な内部反射面を示す。石垣海丘群の東縁部を通る箇所では、周囲の堆積層と内部反射面が異なる散乱した反射パターンが認められ、これらは火山性物質から構成されると解釈できる。Arai et al. (2017) で指摘されたマグマ貫入構造に相当する箇所では、マグマ貫入に関連する反射面や堆積層の変形が認められた。なお、前述した2体の地形的高まりはこのマグマ貫入構造と隣接する。地形的高まりの内部構造は非常に不鮮明であることから下部からの貫入の存在が示唆されるが、磁気異常観測値では周辺のトラフ充填堆積層部分と同様の値を示している。加えて、八重山海底地溝周辺やトラフ底部分では正断層の発達が多数認められ、その多くが海底面に到達していることから活動的な正断層であることが示唆される。
本発表では沖縄トラフ南部の詳細な海底地形、地質構造および今回発見した地形的高まり周辺の地下構造について現段階の解釈を紹介する。また、2021年8月に実施した新青丸KS-21-17航海の結果についても一部紹介する予定である。
引用文献
Arai, R. et al. (2017) J. Geophys. Res., 122, 622–641; Nishizawa, A. et al. (2019) Earth, Planets and Space, 71:21; Sibuet, J.C. et al. (1998) J Geophys Res., 103, 30245–30267.