128th JGS: 2021

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Oral

R22 [Regular Session]History of the Earth

[3ch201-10] R22 [Regular Session]History of the Earth

Mon. Sep 6, 2021 8:00 AM - 11:30 AM ch2 (ch2)

Chiar:Kento 1 Motomura, Yuki Tomimatsu, Anju Sakuma

9:30 AM - 9:45 AM

[R22-O-6] Mapping of biomarkers in the 2.7 Ga sedimentary rocks by MALDI-TOFMS

*Hiroki Saito1, Kosei Yamaguchi2, Akira Iziri3, Tomoyo Okumura4 (1. Toho University Graduate School, 2. Toho University, 3. Kobe University, 4. Kochi University)

Keywords:biomarker, black shale, cyanobacteria, MALDI-TOFMS

酸素発生型光合成はいつ始まったのか? 初期地球の大気—海洋—生命システムの進化において極めて重要であるこの疑問の回答は、まだ得られていない。シアノバクテリアとされる微化石様構造を持つ炭質物は約35億年前のチャートから発見されているが(例:Schopf, 1993)、その起源には疑問が呈されている(例:Brasier et al., 2002)。約27億年前の黒色頁岩よりシアノバクテリア起源とされるバイオマーカー (2α-メチルホパン)が報告されているが(Brocks et al., 1999)、これは後の時代の混入(石油の流入や掘削や貯蔵中に混入)である可能性が示唆された(Rasmussen et al., 2008; Brocks, 2011)こともあり、酸素発生型光合成バクテリアの化石記録については議論が続いている(Sessions et al., 2009)。従来のバイオマーカー分析では、岩石粉末から有機溶媒で有機物を抽出するために岩石中の位置情報が失われるので、それが堆積時の微生物の死骸由来(現地性)か、堆積後に石油等の流体として導入された汚染由来か、あるいは試料採取時・保管時・分析時による汚染由来かが、判断ができない。そこで本研究では、医療用に開発された「イメージング質量分析」(iMscope; 原理はMALDI-TOFMS)という新手法を初めて地質試料に応用し、バイオマーカーの位置情報を伴う「その場測定」を行い、その起源を探ることを目指す。本研究では、標準試料2α+2β-,17α(H)-21β(H)-2-Methylhopane、オーストラリア北西部で掘削された約27億年前の黒色頁岩2種(WRL1、RHDH2A)、同地域Tumbiana 層で掘削された約27億年前のストロマトライト炭酸塩岩(ABDP#10)、を用いた。作成した薄片試料から岩石の薄膜を剥離して測定用のステンレス板に張り付け、海洋研究開発機構高知コア研究所のiMscopeを用いて、バイオマーカーの二次元マッピングを行った。まずは、標準試料がきちんとマッピングできるかどうかを確認するための測定を行った。標準試料をメタノールで溶いた400pmol/μLの標準溶液を調製し、黒色頁岩の薄片を張り付けたステンレス板の薄片部分と金属部分の直径1mm程度の微小領域を凹ませ、それぞれのクレーター様の穴に標準試料溶液を滴下した。薄片部分では標準試料を滴下した周辺部を、金属部分では目視により確認した標準試料の塗布の有無が顕著な範囲を、それぞれ測定した。その結果、上記の薄片部分と金属部分の両方において、標準試料を塗布した部分にのみm/z=368.4のピークが検出され、2メチルホパンのフラグメントはm/z=368.4をメインとして検出されることがわかった。先行研究ではホパンのフラグメントはm/z=191.2とされてきたが、今回の標準試料測定ではこのm/z=191.2のピークを検出することはできなかった。これは、本研究のiMScopeと従来法のGC-MSのイオン化の方法の違いによるものと考えられる。本研究は、MALDI-TOFMSによりシアノバクテリアのバイオマーカーとされる2メチルホパンを初めて検出した例となる。 他の掘削試料では、約27億年前の浅海性黒色頁岩RHDH2A、深海性黒色頁岩WRL1、含ストロマトライト炭酸塩岩ABDP#10の複数の試料において、m/z=368.4が初生的な堆積構造に沿う局所的な分布を示していることを確認することができた。このことは、2メチルホパンが堆積構造に沿う微生物(の死骸)の局所的な分布をしていることを反映し、かつ、後の時代の混入ではなく堆積時に集積したものであることを強く示唆する。
ReferencesBrasier, M.D. et al. (2002) Nature 416, 76–81.Brocks, J.J. et al. (1999) Science 285, 1033-1036. Brocks, J.J. (2011) Geochim. Cosmochim. Acta 75, 3196-3213.Rasmussen, B. et al. (2008) Nature 455, 1101-1104.Schopf, J.W (1993) Science 260, 640-646. Sessions, A.L. et al. (2009) Current Biol. 19, R567-R574.