128th JGS: 2021

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Oral

R22 [Regular Session]History of the Earth

[3ch201-10] R22 [Regular Session]History of the Earth

Mon. Sep 6, 2021 8:00 AM - 11:30 AM ch2 (ch2)

Chiar:Kento 1 Motomura, Yuki Tomimatsu, Anju Sakuma

9:15 AM - 9:30 AM

[R22-O-5] Formation of modern iron formation: Formation mechanism of iron oxyhydroxide chimney mound and iron oxyhydroxide sediments
--Satsuma Iwo-jima, Kagoshima Prefecture --

*Shoichi Kiyokawa1,6,7, koki hori1,2, naoya sakamoto1,3, takashi kuratomi1,4, Shusaku Goto5, minoru Ikehara6 (1. Kyushu Univ. Earth and Planetary Sciences, 2. OYO Corporation, 3. Kawasaki Geological Engineering Co., Ltd., 4. Japan Petroleum Exploration Co., Ltd, 5. National Institute of Advanced Industrial Science and Technology, 6. Center for Advanced Marine Core Research, Kochi University, 7. University of Johannesburg, Dept. Geology)

Keywords:Archean, Banded Iron Formation, Iron stone, Satsuma Iwo-jima

薩摩硫黄島は九州南沖約50 kmに位置する火山島であり,鬼界カルデラの北西縁に位置する.島の周辺海域には酸性熱水が流出しており,海水と混合することで褐色〜乳白色の海水がみられる.特に島南部の長浜湾は溶存鉄や遊離CO2に富む,pH 4.4 ~ 5.5程度の弱酸性の熱水 (四ヶ浦・田崎, 2001;坂元, 2015) が供給され,析出した鉄酸化物が海底に堆積し,海底湧水部分では水酸化鉄チムニーの存在が明らかになってきた(e.g., Kiyokawa and Ueshiba, 2015, Kiyokawa et al., 2021).
 本発表では,長浜湾における熱水湧出場の特定やチムニーマウンドおよび堆積層における鉄の酸化・沈殿プロセスについて,水酸化鉄の形成・沈殿・沈殿後の続成最初期状況について検討を行った.コア試料は潜水により取得し,堆積物トラップは半年ごとに追加しながら,連続9xrd年間の試料を取得しており,実際の地層に残される堆積層との比較を行っている.取得した試料は,すぐに高知大学海洋総合コアセンターに運び,冷蔵して保存し,記載,CTスキャン,化学分析を行っている.海水の分析: ICP-OES, 結晶構造:XRD(ともに九州大学)を使用した.
 海底湧出場所の特定のために,湾内の船付き場(East and West sites)および海岸線における赤外線サーモグラフィドローン探査を行った.結果,今まで明らかでなかった湾内の複数箇所で熱水噴出源が特定され,弱酸性熱水が海水面に広がる様子が見られた.また水質の測定では,海水面付近付近では相対的に低いpH,ORP,EC値と高い濁度を示し,特にpHと濁度値は強い相関を示し,表層付近でpHは最小で濁度は最大であった.海中カメラの水塊画像においても,表層では濁りが強く,海底付近(pH≈8)では析出物の凝集が進み,濁りが弱くなっている.
 Eastサイトでは,チムニーマウンドが形成されており,比較的古いマウンドについてCTスキャン,薄片観察,電顕観察,微生物(DNA)解析などを行った.マウンドには,細いパイプ上の熱水の抜け後がみられ,パイプはバクテリア形体をした水酸化鉄で形成されていた.水酸化鉄部分は,鉄還元バクテリアに特有のツイストをした組織を持ち,Zetaproteobacteria (Mariprofundus ferrooxydans : Hoshino et al., 2016)である. 一方,Westサイトでは.1-2mの水酸化鉄沈殿層が確認されている.本層の水酸化鉄には,バクテリアの痕跡がほとんどなく,水酸化鉄コロイドや火山性細粒堆積物が互層をする.
 海底表層コア試料(約40 cm:2020年10月取得)について間隙水元素測定を行った結果,海底表層から下に向かってpHの値は海水に近い7.5から熱水に近い5.8程度まで下がり,FeやMn,Siといった元素の濃度が増加した.さらに別の海底コア試料(2020年取得)から採取した試料のXRDを行った結果,堆積物上部(10~20 cmbsf)からはゲーサイト,それ以深からはシデライトのピークが得られた.このシデライトはSEM観察においてこのシデライトは菱形の自形を表していた. つまり,Westサイトでは水塊表層付近では鉄の無機酸化が生じ,まず,水酸化鉄の初生物やゲーサイトの前駆体であるフェリハイドライトとして個体析出する.海水との混合により生じるpHの上昇は,沈殿途中の水酸化鉄の凝集を強く支配していると考えられる.沈殿後,表層付近で一部はゲーサイトに変化し,20-40cmほどから非晶質の水酸化鉄堆積物の再還元・もしくは2価鉄を含む温泉水によりシデライトの形成が考えられる.シデライト結晶は堆積物内でより成長していると考えられる.これは,太古代で見られるシデライトBIFにおいても,堆積直後にはすでに形成可能であることを示唆している.
 このように,薩摩硫黄島長浜湾では,2価鉄を含む温泉水の流出により,1)微生物が寄与した水酸化鉄チムニーの形成,2)化学的な水酸化鉄形成がみられる.また,海岸線には,水酸化鉄をまとった砂(グラニュール)が広がっている.長浜湾の鉄沈殿物は,太古代/原生代のBIF, GIF, 顕生代の鉄層などの堆積場を考える上で重要な化学的・生物学的なヒントが観察される.