128th JGS: 2021

Presentation information

Oral

R22 [Regular Session]History of the Earth

[3ch201-10] R22 [Regular Session]History of the Earth

Mon. Sep 6, 2021 8:00 AM - 11:30 AM ch2 (ch2)

Chiar:Kento 1 Motomura, Yuki Tomimatsu, Anju Sakuma

10:45 AM - 11:00 AM

[R22-O-9] Variations of Terrestrial and Marine Organic Burial Rates during Phanerozoic and Their Relationships with Atmospheric Oxygen Level

*Kazuhiro Aoyama1, Eiichi Tajika1, Kazumi Ozaki2 (1. Department of Earth and Planetary Science, Graduate School of Science, The University of Tokyo, 2. Department of Environmental Science, Toho University)

Keywords:carbon cycle, C/S ratio, land plants, atmospheric oxygen level, Phanerozoic

大気中の酸素濃度は,顕生代を通じて大きく変動し,節足動物の巨大化や恐竜の繁栄など,生物の変遷にも影響を与えてきたと考えられている[1].顕生代初期まで,生物による基礎生産や有機物の埋没の大部分は,海洋域のみで生じていたといえる.オルドビス紀からシルル紀にかけて植物が陸上に進出し,それによって陸域においても基礎生産や有機物の埋没が大規模に生じるようになったことで,現在のように,有機物の生産と埋没が,陸と海で生じるようになったと考えられる.有機物の埋没は大気酸素の正味の供給過程であるため,陸と海における埋没の変動は大気酸素濃度の変遷に大きく影響を与えたはずである.しかし,海水の炭素及び硫黄同位体比データを用いた従来の物質循環モデル研究において,陸域及び海洋域を区別した有機物埋没率の変動やそれらの酸素濃度への影響は推定されてこなかった.

そこで本研究では,炭素・硫黄循環結合モデルGEOCARBSULF[2, 3, 4, 5, 6]を改良し,有機物埋没率を陸域と海洋域に分離することでこの問題について検討を行った.富酸素海洋環境には硫酸イオンが豊富に含まれる一方,陸域淡水環境には硫酸イオンはほとんど含まれない.このため,堆積物中の有機炭素と黄鉄鉱硫黄の比 (C/S比) には大きな違いが生じる[7].この堆積環境によるC/S比の違い及び,モデルから復元される全球的な有機炭素と黄鉄鉱硫黄の埋没率の比を用いることで,全球的な有機物埋没率を陸域と海洋域に分離することを試みた.

その結果,陸域における有機物埋没は,維管束植物が出現した後,最古の森林が形成されたシルル紀からデボン紀にかけて初めて有意に生じることが示された.そして,大量の石炭が生成された石炭紀後半からペルム紀前半にかけては,陸域における有機物埋没率が大きく増加するという,従来の推定[8, 9]を裏付ける結果が得られた.また,大量絶滅境界であるペルム紀/三畳紀境界 (P/T境界) やフラニアン期/ファメニアン期境界 (F/F境界) において陸域における有機物埋没率は大きく低下する一方,海洋域における有機物埋没率は,おそらく大規模で長期間にわたる海洋無酸素イベント (OAE) の発生と関連して増加するという結果が得られた.

顕生代における大気酸素濃度変動に関しては,カンブリア紀~オルドビス紀では海洋域の影響のみしかみられないが,シルル紀~デボン紀では陸域の影響がみえはじめ,石炭紀~白亜紀には主に陸域の影響が,新生代は陸域と海洋域の両方の影響が大きかったという結果が得られた.これは,陸上植物の進出と分布域の拡大,超大陸の内陸部における大森林の発達及び湿地帯の形成による陸上植物の埋没率の増加,ヒマラヤ造山運動に伴う侵食率の増加とそれによる海洋域での堆積速度及び有機物埋没効率の増加といった,陸域と海洋域における変動を反映していると考えられる.

引用文献
[1] Ward P., 2006, Out of Thin Air: Dinosaurs, Birds, and Earth's Ancient Atmosphere. National Academy Press.
[2] Berner, R. A., 2006. Geochimica Et Cosmochimica Acta. 70, 5653-5664.
[3] Berner, R. A., 2006. American Journal of Science. 306, 295-302.
[4] Berner, R. A., 2008. American Journal of Science. 308, 100-103.
[5] Berner, R. A., 2009. American Journal of Science. 309, 603-606.
[6] Royer, D. L., Donnadieu, Y., Park, J., Kowalczyk, J., Godderis, Y., 2014. American Journal of Science. 314, 1259-1283.
[7] Berner, R. A. and Raiswell, R., 1983. Geochimica Et Cosmochimica Acta. 47, 855-862.
[8] Berner, R. A., 1998. Philosophical Transactions of the Royal Society of London Series B: Biological Sciences. 353, 75-81.
[9] Berner, R. A., 2003. Nature. 426, 323-326.