8:30 AM - 8:45 AM
[R1-O-3] Petrography of gabboric xenoliths sampled from northern offshore Oshima-Oshima volcano, Hokkaido
Keywords:Oshima-Oshima volcano, gabbroic xenoliths
渡島大島は北海道西方に位置しており、東北日本弧の中で最も背弧側に位置する火山である。渡島大島火山からはこれまでduniteやwehrlite、hornblende gabbroといった超塩基性岩・塩基性岩からなる捕獲岩が採取されている(Yamamoto, 1984, 北海道大学理学部紀要; 二宮・荒井, 1992, 火山)。二宮・荒井(1992, 火山)で報告された複合捕獲岩であるharzburgiteは東北日本弧下の上部マントル由来と考えられているが、他の超塩基性岩・塩基性岩捕獲岩は渡島大島火山の玄武岩質マグマだまりからの結晶分化作用に由来すると考えられている(Yamamoto, 1984, 北海道大学理学部紀要)。
2020年8月に学術研究船「白鳳丸」によるKH-20-7航海にて、1741年に大規模山体崩壊を起こした渡島大島火山の周辺海底の海洋地質調査が行われた(石塚ほか、有元ほか、本大会発表参照)。渡島大島北側の海底に確認されている山体崩壊で形成した流れ山地形から採取された玄武岩と玄武岩質安山岩にはんれい岩捕獲岩を発見した。この捕獲岩はおそらく渡島大島の西山火山を形成する玄武岩質マグマだまりに関連すると考えられ、マグマだまり内部のプロセスを記録する可能性を持つ。そこで本研究は渡島大島火山下のマグマだまりの状況について検討するために、得られたはんれい岩捕獲岩の温度圧力条件や形成過程などを明らかにすることを目的とした。
岩石試料はドレッジによって2地点から採取した3試料を用いた。得られたはんれい岩捕獲岩の大きさは3x3 cm程度であり、玄武岩と玄武岩質安山岩にそれぞれ包有されていた。肉眼観察からは輝石の配列などによる面構造・線構造は確認できなかった。はんれい岩捕獲岩の構成鉱物は主に斜長石、かんらん石、単斜輝石、直方輝石、不透明鉱物(イルメナイトとマグネタイト)からなるかんらん石はんれい岩であった。3試料のうち2試料は角閃石を含んでいた。
微細構造観察において、3試料ともに半自形~他形の斜長石と他形のかんらん石・単斜輝石・直方輝石・角閃石からなるgranular textureが観察された。波動消光などの結晶内変形構造が一部の斜長石や輝石に確認できたがほとんどの鉱物にこうした結晶内変形構造は見られなかった。一部の斜長石に累帯構造が確認できた。かんらん石は内部に針状の酸化鉄物質の晶出が確認でき、全体的に赤みを呈していた。はんれい岩捕獲岩と母岩の周囲には反応縁が形成しており、細粒化していた。こうした反応縁による細粒化ははんれい岩捕獲岩の内部にも確認できた。かんらん石はんれい岩の主要鉱物の化学組成についてEPMA(産総研 地質調査総合センター 共同利用実験室所有)を用いて分析した。かんらん石はんれい岩3試料において、斜長石のコア部はAn83-An94、リム部ではAn45-An87の範囲を示した。単斜輝石はaugite組成を示し、Mg#(Mg/(Mg+Fe)))は同じような値を示した(Mg#77-Mg#81)。直方輝石はhypersthene組成を示した。また、かんらん石はんれい岩2試料において、Mg#は同じ値(Mg#76-Mg#78)を示すが、かんらん石はんれい岩1試料は他の2試料よりやや高い値(Mg#78-Mg#95)を示した。かんらん石はんれい岩2試料に確認した角閃石はすべてpargasite組成を示した。主要鉱物(斜長石・かんらん石・単斜輝石・直方輝石・角閃石)の結晶方位はSEM-EBSD-EDS(産総研 地質調査総合センター 共同利用実験室所有)を用いて分析した。角閃石を含まないかんらん石はんれい岩1試料については、斜長石・かんらん石で集中を示したが,他の角閃石を含むかんらん石はんれい岩では分析した鉱物すべてに特徴的な集中が認められなかった。
本講演ではこれらのはんれい岩捕獲岩の詳細な微細構造観察・鉱物化学組成・結晶方位分析の結果を報告するとともに、かんらん石はんれい岩形成時の温度圧力条件や形成過程について議論する。
2020年8月に学術研究船「白鳳丸」によるKH-20-7航海にて、1741年に大規模山体崩壊を起こした渡島大島火山の周辺海底の海洋地質調査が行われた(石塚ほか、有元ほか、本大会発表参照)。渡島大島北側の海底に確認されている山体崩壊で形成した流れ山地形から採取された玄武岩と玄武岩質安山岩にはんれい岩捕獲岩を発見した。この捕獲岩はおそらく渡島大島の西山火山を形成する玄武岩質マグマだまりに関連すると考えられ、マグマだまり内部のプロセスを記録する可能性を持つ。そこで本研究は渡島大島火山下のマグマだまりの状況について検討するために、得られたはんれい岩捕獲岩の温度圧力条件や形成過程などを明らかにすることを目的とした。
岩石試料はドレッジによって2地点から採取した3試料を用いた。得られたはんれい岩捕獲岩の大きさは3x3 cm程度であり、玄武岩と玄武岩質安山岩にそれぞれ包有されていた。肉眼観察からは輝石の配列などによる面構造・線構造は確認できなかった。はんれい岩捕獲岩の構成鉱物は主に斜長石、かんらん石、単斜輝石、直方輝石、不透明鉱物(イルメナイトとマグネタイト)からなるかんらん石はんれい岩であった。3試料のうち2試料は角閃石を含んでいた。
微細構造観察において、3試料ともに半自形~他形の斜長石と他形のかんらん石・単斜輝石・直方輝石・角閃石からなるgranular textureが観察された。波動消光などの結晶内変形構造が一部の斜長石や輝石に確認できたがほとんどの鉱物にこうした結晶内変形構造は見られなかった。一部の斜長石に累帯構造が確認できた。かんらん石は内部に針状の酸化鉄物質の晶出が確認でき、全体的に赤みを呈していた。はんれい岩捕獲岩と母岩の周囲には反応縁が形成しており、細粒化していた。こうした反応縁による細粒化ははんれい岩捕獲岩の内部にも確認できた。かんらん石はんれい岩の主要鉱物の化学組成についてEPMA(産総研 地質調査総合センター 共同利用実験室所有)を用いて分析した。かんらん石はんれい岩3試料において、斜長石のコア部はAn83-An94、リム部ではAn45-An87の範囲を示した。単斜輝石はaugite組成を示し、Mg#(Mg/(Mg+Fe)))は同じような値を示した(Mg#77-Mg#81)。直方輝石はhypersthene組成を示した。また、かんらん石はんれい岩2試料において、Mg#は同じ値(Mg#76-Mg#78)を示すが、かんらん石はんれい岩1試料は他の2試料よりやや高い値(Mg#78-Mg#95)を示した。かんらん石はんれい岩2試料に確認した角閃石はすべてpargasite組成を示した。主要鉱物(斜長石・かんらん石・単斜輝石・直方輝石・角閃石)の結晶方位はSEM-EBSD-EDS(産総研 地質調査総合センター 共同利用実験室所有)を用いて分析した。角閃石を含まないかんらん石はんれい岩1試料については、斜長石・かんらん石で集中を示したが,他の角閃石を含むかんらん石はんれい岩では分析した鉱物すべてに特徴的な集中が認められなかった。
本講演ではこれらのはんれい岩捕獲岩の詳細な微細構造観察・鉱物化学組成・結晶方位分析の結果を報告するとともに、かんらん石はんれい岩形成時の温度圧力条件や形成過程について議論する。