9:30 AM - 9:45 AM
[T5-O-3] Microscopic observation of green quartz collected from Zaimoku site at the Mogami Town
Keywords:green quartz, microscopic observation, Zaimoku site, Late Jomon period
1.はじめに
三澤(2020)は,山形県最上町の縄文時代晩期の材木遺跡で表面採集された緑色の玉類やその石材が緑色の石英からなる岩石であることを報告し,緑色石英を手がかりにして,縄文時代終末期の東北地方中南部地域の物流について考察している.この緑色の岩石は,東北大学の辻森樹氏,長瀬敏郎氏,台湾中央研究院地球科学研究所の飯塚義之氏によって,ほぼ石英からなり,Crを含む微少な鉱物(緑泥石)が含まれる岩石であることが鑑定されている.また,三澤は,このような緑色の石英岩の産地を調べるために,何人もの地質,岩石,鉱物学の専門家(フォッサマグナミュージアム宮島宏氏,益富地学会館の石橋隆氏,秋田大学鉱業博物館の西川治氏,宮島氏を経由して国立科学博物館の松原聰氏等)に岩石を見てもらっているが,今のところ類似するものの情報は得られていない. 今回は緑色石英の肉眼観察,岩石薄片の記載を行い,材木遺跡周辺の地質構成から産地の推定ができるかどうかを検討する.
2.岩石薄片試料の肉眼観察
薄片作成のために切断された断面を観察すると,1mm前後の丸みをおびた粒子の集合であり,丸みを帯びた粒子が目立つが,入り組んだ境界をなすところも見られる.粒子は緑色を帯びたものも,白色のものもある. また所々に空隙がある.三澤(2020)によると,他の試料も含めて空隙には錐状の結晶(石英)が見られるものがある.
3.偏光顕微鏡観察
大部分は径0.5-1mmの石英からなり,ごく微量の白雲母等を含む.石英は空隙部以外の大部分は他形で,モザイク組織を示す.粒界が入り組んだものもある.粒界を横切る微細な粒子の配列したヒールドマイクロクラックが卓越した1方向に発達している.空隙には,結晶面を持つ自形結晶(図2)がみられる.石英には波動消光をなすものが多く,また放射状の消光(ラメラ?)を持つ粒子(図1)も多い.放射状の消光の中心部にはダスト状の微粒子が集合しているのが見られる. 白雲母は0.1mm以下で,石英の包有物としても少量見られるが,石英の粒界に沿って並ぶもの,粒界に放射状に集合したものがある.
4.材木遺跡周辺の地質と石英岩について
材木遺跡は約80万年前の向町カルデラ内に位置する.カルデラ壁をなすのは先新第三紀の変成岩類(阿武隈変成岩),白亜紀花崗岩,中新統の及位層,金山層であり,カルデラ内には一刎層が堆積している(山形応用地質研究会,2016).周辺の河床礫を観察すると,石英脈は緑色変質した安山岩や凝灰岩中に見られるものがほとんどである.しかしこれらの石英脈は白色のもので筆者がこれまで見てきたものと同様のものであり,緑色のものは見つかっていない.一刎層(礫層)の礫も,周囲の基盤岩類や新第三系に由来するものからなる.依然として緑色石英の産地や地質体の候補が絞られてない状況である.
文献
三澤裕之(2020)最上町材木遺跡で採集した緑色の石英についてー縄文時代終末期の東北地方中南部地域の物流に関する一考察ー.山形考古,49,1-11.
山形応用地質研究会(2016)山形県地質図(10万分の1)説明書 .山形大学出版会,61p
三澤(2020)は,山形県最上町の縄文時代晩期の材木遺跡で表面採集された緑色の玉類やその石材が緑色の石英からなる岩石であることを報告し,緑色石英を手がかりにして,縄文時代終末期の東北地方中南部地域の物流について考察している.この緑色の岩石は,東北大学の辻森樹氏,長瀬敏郎氏,台湾中央研究院地球科学研究所の飯塚義之氏によって,ほぼ石英からなり,Crを含む微少な鉱物(緑泥石)が含まれる岩石であることが鑑定されている.また,三澤は,このような緑色の石英岩の産地を調べるために,何人もの地質,岩石,鉱物学の専門家(フォッサマグナミュージアム宮島宏氏,益富地学会館の石橋隆氏,秋田大学鉱業博物館の西川治氏,宮島氏を経由して国立科学博物館の松原聰氏等)に岩石を見てもらっているが,今のところ類似するものの情報は得られていない. 今回は緑色石英の肉眼観察,岩石薄片の記載を行い,材木遺跡周辺の地質構成から産地の推定ができるかどうかを検討する.
2.岩石薄片試料の肉眼観察
薄片作成のために切断された断面を観察すると,1mm前後の丸みをおびた粒子の集合であり,丸みを帯びた粒子が目立つが,入り組んだ境界をなすところも見られる.粒子は緑色を帯びたものも,白色のものもある. また所々に空隙がある.三澤(2020)によると,他の試料も含めて空隙には錐状の結晶(石英)が見られるものがある.
3.偏光顕微鏡観察
大部分は径0.5-1mmの石英からなり,ごく微量の白雲母等を含む.石英は空隙部以外の大部分は他形で,モザイク組織を示す.粒界が入り組んだものもある.粒界を横切る微細な粒子の配列したヒールドマイクロクラックが卓越した1方向に発達している.空隙には,結晶面を持つ自形結晶(図2)がみられる.石英には波動消光をなすものが多く,また放射状の消光(ラメラ?)を持つ粒子(図1)も多い.放射状の消光の中心部にはダスト状の微粒子が集合しているのが見られる. 白雲母は0.1mm以下で,石英の包有物としても少量見られるが,石英の粒界に沿って並ぶもの,粒界に放射状に集合したものがある.
4.材木遺跡周辺の地質と石英岩について
材木遺跡は約80万年前の向町カルデラ内に位置する.カルデラ壁をなすのは先新第三紀の変成岩類(阿武隈変成岩),白亜紀花崗岩,中新統の及位層,金山層であり,カルデラ内には一刎層が堆積している(山形応用地質研究会,2016).周辺の河床礫を観察すると,石英脈は緑色変質した安山岩や凝灰岩中に見られるものがほとんどである.しかしこれらの石英脈は白色のもので筆者がこれまで見てきたものと同様のものであり,緑色のものは見つかっていない.一刎層(礫層)の礫も,周囲の基盤岩類や新第三系に由来するものからなる.依然として緑色石英の産地や地質体の候補が絞られてない状況である.
文献
三澤裕之(2020)最上町材木遺跡で採集した緑色の石英についてー縄文時代終末期の東北地方中南部地域の物流に関する一考察ー.山形考古,49,1-11.
山形応用地質研究会(2016)山形県地質図(10万分の1)説明書 .山形大学出版会,61p