128th JGS: 2021

Presentation information

Oral

T5.[Topic Session]Culture geology

[3ch401-06] T5.[Topic Session]Culture geology

Mon. Sep 6, 2021 8:30 AM - 10:45 AM ch4 (ch4)

Chiar:Norithito Kawamura, Masaki Umeda, Hisashi Suzuki, Ohtomo Yukiko

10:00 AM - 10:15 AM

[T5-O-4] Possibility of correlation between Teshima-ishi and the stone lantern in Suga Shrine, Santo, Asago City, Hyogo Prefecture, Japan

*Norithito Kawamura1 (1. University of Hyogo)

Keywords:stone material, Modern age, Teshima-ishi, stone lantern, stone works

概要
 兵庫県朝来市山東町柊木の寿賀神社には,但馬地方ではほかに見られない石材を用いた燈籠が1基ある.その特徴的な岩相と帯磁率の値から,この燈籠の石材は香川県小豆郡土庄町の豊島産の「豊島石」と対比可能である.風化が著しい様子から,燈籠は近世以前の製作と推察される.近世の「豊島石石造物」は香川,岡山両県をはじめ,四国全域や中国地方・九州北部,京阪神には知られている(松田,2009).本報告では,燈籠の「豊島石」との対比の根拠を示すとともに,但馬地方南部の朝来市の神社に設置された経緯について推測する.

調査方法
 燈籠および豊島石丁場露頭で岩石の帯磁率の測定とその観察を行った.調査対象の丁場は,日本応用地質学会中国四国支部豊島石研究チーム(2009),長谷川(2010)を参考に,豊島(香川県小豆郡土庄町豊島家浦,同唐櫃,同甲生(転石のみ)),小豆島(土庄町滝宮),男木島(高松市男木町),女木島(同女木町),屋島(同屋島西町)とした.
 調査方法は川村・崎山(2021)と同様である.つまり,調査を非破壊で行うため,石材表面の色調,組織,構成鉱物を肉眼で観察した.また,野外調査と同じ機器を用いて帯磁率を測定した.
 帯磁率は,露頭や転石では植物に覆われていない平坦面を選んで20点ずつ測定した.測定点の間隔は5 cm以上空けるが,全測定点が1 m四方の区画内に収まるようにした.測定機器には携帯型帯磁率計(Terraplus社製KT-10)を使用した.なお同機器の「コア直径」の設定はしていない.燈籠は,笠,火袋,中台,柱,台座などの部材から構成されるが,柱の部材を対象に帯磁率の測定を竿の側面で行った.

燈籠の岩相記載
 件の燈籠はいずれも同様の岩相の石材から構成されている.竿の部材の岩相は,暗灰色の砂質ユニットと細礫サイズの淡褐灰色の軽石質ユニットの互層で構成されている.

燈籠の部材の帯磁率
 竿の部材のうち,砂質ユニット8.2×10-4SI,軽石質ユニットの帯磁率は,6.0×10-4SI,7.5×10-4SIである.

燈籠の石材と類似した豊島石露頭の岩相と帯磁率
 豊島石は,暗灰色の火山礫凝灰岩で,径数 cm以下の黒色を呈する玄武岩の岩片を多く含む(西山ほか,2014).しばしば最大径数cmの軽石を含む層が挟在する.
 豊島甲生の転石は7.5~11×10-4SI,屋島の登山道わきにあるいわゆる「洞窟」の露頭では8.8~13×10-4SIである.そのほかの豊島石の露頭で寿賀神社の燈籠の岩相と類似するものは,燈籠よりも帯磁率は比較的高い値(1×10-3SI以上)を示す.

対比
 寿賀神社の燈籠の柱は,帯磁率特性から豊島甲生の豊島石と対比可能である.

課題
 なぜ,但馬の内陸部に豊島石石造物が見られるのかについては,社殿建築にかかわった大工が淡路島からきていることが関係すると推察される.今後はこの点についての検証が必要である.

謝辞 本研究の費用の一部は,日本学術振興会科研費(基盤研究(B)課題番号 17 H02008,研究代表者 鈴木寿志)によった.ここに記して感謝の意を表する.

文献
長谷川修一(2010)讃州豊島石の特性と豊島石石造物の時空分布に関する調査.財団法人福武学術文化振興財団平成 20 年度瀬戸内海文化・研究活動支援調査・研究助成報告書,142p.
川村教一・崎山正人(2021)兵庫県養父市関宮町及び大屋町とその周辺に分布する 近世・近代の蛇紋岩石造物の石材産地と用途の変遷.人と自然,31,41-54.
松田朝由(2009)豊島石石造物の研究 I.財団法人福武学術文化振興財団 平成19 年度瀬戸内海文化・研究活動支援調査・研究助成報告書,157p.
日本応用地質学会中国四国支部豊島石研究チーム(2009)讃州豊島石の応用地質学的研究事始.日本応用地質学会中国四国支部平成 21 年度研究発表会発表論文集,59-64.
西山賢一・宮本和季・長谷川修一(2014)香川県に分布する豊島石製石造文化財の風化程度の評価.徳島大学総合科学部 自然科学研究,28, 4,45–53.