4:00 PM - 6:30 PM
[R4-P-12] Zircon U–Pb ages of pelitic gneiss and granite from a small outcrop in Kashinomure area in the north of Aso caldera, central Kyushu
Keywords:pelitic gneiss, granite, zircon U-Pb age, Kashinomure area, central Kyushu
中部九州には,阿蘇カルデラの形成に伴う大規模噴火活動により広範囲にわたって新生代火山堆積物類が分布しており,西南日本の基盤をなす中生代~古生代変成岩類・花崗岩類の分布連続性を不明瞭にしている.しかしながら,広域地質調査およびボーリング調査により,高温低圧型変成岩類および花崗岩類が地下に分布し,一部地表に露出していることが明らかになった(例えば笹田,1987;三好ほか,2011).これらの基盤岩類は112–78 Maの白亜紀の黒雲母(一部,白雲母またはホルンブレンド)K–Ar年代をしめすことから,領家帯の延長である可能性が指摘されている(笹田,1987).そこで,本研究は合戦群(かしのむれ)地域(現,阿蘇市一の宮町)に小規模に露出している変成岩類および花崗岩類から,岩石記載およびジルコンU–Pb年代測定を行い,それらの特徴から帰属を検討した.
阿蘇カルデラ北部に位置する合戦群地域には,東西約600 m ,南北約300 mの範囲で変成岩類,花崗岩類および少量の超苦鉄質岩類が地表に露出している(笹田,1987).笹田(1987)によれば,変成岩類は主に雲母片岩で,一部角閃石片岩が産する.雲母片岩および角閃石片岩の鉱物組合せはそれぞれ黒雲母+白雲母±菫青石(ピナイト化)+斜長石+石英および単斜輝石+ホルンブレンド+黒雲母+斜長石+石英である.これらの変成岩類は,白雲母含有黒雲母花崗岩,白雲母黒雲母花崗閃緑岩,ペグマタイト,アプライトからなる花崗岩類に貫入されている.超苦鉄質岩は転石としてのみ確認され,主に放射状のトレモラ閃石からなり少量の滑石および不透明鉱物を含む.そのほかに,160 mのボーリングコアから,カリ長石や珪線石(フィブロライト)を含む雲母片岩や片状花崗岩,塊状~片状トーナル岩,片状閃緑岩も認められている.この地域の雲母片岩,弱片状花崗岩は,それぞれ約83 Ma,81 Maの黒雲母K–Ar年代をしめす(笹田,1987).
合戦群地域から採取した変成岩類は,雲母質層と石英長石質層からなる片麻状構造を有するため,本研究では片麻岩とみなした.片麻岩は,白雲母および黒雲母によるデカッセイト組織で特徴づけられ,多くの場合,菫青石,紅柱石または白雲母の斑状変晶を含む.ただし,菫青石はピナイト化しており,稀に一部残存している.花崗岩類は等粒状組織をしめすが,著しく風化しており大部分が真砂化している.本研究では,菫青石(ピナイト化)含有紅柱石―黒雲母―白雲母片麻岩(53104A)および貫入している黒雲母―白雲母花崗岩(53104B)からジルコンを分離し年代測定した. 両岩相のジルコンの多くは自形で,明瞭~弱い波動累帯構造またはセクター構造を有し,高いTh/U比(> 0.2)をしめした.泥質片麻岩(53104A)のジルコンは1480, 1170, 980‒840, 650‒220 Maの年代と280–260 Maの年代ピークをしめした.一方,花崗岩(53104B)は集中した年代をしめし,102.5 ± 2.4 Maの加重平均年代が計算された.
合戦群地域の泥質片麻岩は,花崗岩に貫入され,デカッセイト組織の白雲母や黒雲母,斑状変晶の紅柱石,董青石を含むことから,花崗岩の貫入による高温低圧型の接触変成作用を受けた可能性が強く示唆された.また,1480‒220 Maの砕屑性ジルコン年代が得られ,その年代分布は,領家帯の原岩であるジュラ紀付加体よりも近隣の三郡―周防帯の結晶片岩の砕屑性ジルコン年代に類似する(Tsutsumi, 2003;Miyazaki et al., 2017).分析した両雲母花崗岩は102.5 ± 2.4 Maの火成活動年代をしめし,106.0 ± 1.0 MaのジルコンU–Pb年代をしめす両雲母花崗岩で特徴づけられる筒ヶ岳花崗岩に対比され得る(唐木田,1992;島田ほか,1999;堤,2019).筒ヶ岳花崗岩は合戦群地域西方に分布し,三郡―周防帯の結晶片岩類に貫入している(唐木田,1992;島田ほか,1999).以上の結果から,合戦群地域に産する泥質片麻岩は,大牟田地域と同様に周防帯の変成岩類が白亜紀花崗岩類の貫入により接触変成作用を受けた可能性が指摘できるが,西南日本の地質学的帯状配列を考慮すると,従来からの領家帯の西方延長についても岩石学的解析を含め慎重に再検討する必要がある.
引用文献
唐木田(1992)中部九州「九州地方」共立出版,Miyazaki et al. (2017) Island Arc,三好ほか(2011)地質学雑誌,笹田(1987)地質調査所月報,島田ほか(1999)熊本地学会誌,Tsutsumi et al. (2003) Journal of Mineralogical and Petrological Sciences,堤(2019)2019年鉱物科学会年会講演要旨
阿蘇カルデラ北部に位置する合戦群地域には,東西約600 m ,南北約300 mの範囲で変成岩類,花崗岩類および少量の超苦鉄質岩類が地表に露出している(笹田,1987).笹田(1987)によれば,変成岩類は主に雲母片岩で,一部角閃石片岩が産する.雲母片岩および角閃石片岩の鉱物組合せはそれぞれ黒雲母+白雲母±菫青石(ピナイト化)+斜長石+石英および単斜輝石+ホルンブレンド+黒雲母+斜長石+石英である.これらの変成岩類は,白雲母含有黒雲母花崗岩,白雲母黒雲母花崗閃緑岩,ペグマタイト,アプライトからなる花崗岩類に貫入されている.超苦鉄質岩は転石としてのみ確認され,主に放射状のトレモラ閃石からなり少量の滑石および不透明鉱物を含む.そのほかに,160 mのボーリングコアから,カリ長石や珪線石(フィブロライト)を含む雲母片岩や片状花崗岩,塊状~片状トーナル岩,片状閃緑岩も認められている.この地域の雲母片岩,弱片状花崗岩は,それぞれ約83 Ma,81 Maの黒雲母K–Ar年代をしめす(笹田,1987).
合戦群地域から採取した変成岩類は,雲母質層と石英長石質層からなる片麻状構造を有するため,本研究では片麻岩とみなした.片麻岩は,白雲母および黒雲母によるデカッセイト組織で特徴づけられ,多くの場合,菫青石,紅柱石または白雲母の斑状変晶を含む.ただし,菫青石はピナイト化しており,稀に一部残存している.花崗岩類は等粒状組織をしめすが,著しく風化しており大部分が真砂化している.本研究では,菫青石(ピナイト化)含有紅柱石―黒雲母―白雲母片麻岩(53104A)および貫入している黒雲母―白雲母花崗岩(53104B)からジルコンを分離し年代測定した. 両岩相のジルコンの多くは自形で,明瞭~弱い波動累帯構造またはセクター構造を有し,高いTh/U比(> 0.2)をしめした.泥質片麻岩(53104A)のジルコンは1480, 1170, 980‒840, 650‒220 Maの年代と280–260 Maの年代ピークをしめした.一方,花崗岩(53104B)は集中した年代をしめし,102.5 ± 2.4 Maの加重平均年代が計算された.
合戦群地域の泥質片麻岩は,花崗岩に貫入され,デカッセイト組織の白雲母や黒雲母,斑状変晶の紅柱石,董青石を含むことから,花崗岩の貫入による高温低圧型の接触変成作用を受けた可能性が強く示唆された.また,1480‒220 Maの砕屑性ジルコン年代が得られ,その年代分布は,領家帯の原岩であるジュラ紀付加体よりも近隣の三郡―周防帯の結晶片岩の砕屑性ジルコン年代に類似する(Tsutsumi, 2003;Miyazaki et al., 2017).分析した両雲母花崗岩は102.5 ± 2.4 Maの火成活動年代をしめし,106.0 ± 1.0 MaのジルコンU–Pb年代をしめす両雲母花崗岩で特徴づけられる筒ヶ岳花崗岩に対比され得る(唐木田,1992;島田ほか,1999;堤,2019).筒ヶ岳花崗岩は合戦群地域西方に分布し,三郡―周防帯の結晶片岩類に貫入している(唐木田,1992;島田ほか,1999).以上の結果から,合戦群地域に産する泥質片麻岩は,大牟田地域と同様に周防帯の変成岩類が白亜紀花崗岩類の貫入により接触変成作用を受けた可能性が指摘できるが,西南日本の地質学的帯状配列を考慮すると,従来からの領家帯の西方延長についても岩石学的解析を含め慎重に再検討する必要がある.
引用文献
唐木田(1992)中部九州「九州地方」共立出版,Miyazaki et al. (2017) Island Arc,三好ほか(2011)地質学雑誌,笹田(1987)地質調査所月報,島田ほか(1999)熊本地学会誌,Tsutsumi et al. (2003) Journal of Mineralogical and Petrological Sciences,堤(2019)2019年鉱物科学会年会講演要旨