128th JGS: 2021

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Poster

R4 [Regular Session]Metamorphic rocks and tectonics

[3poster15-23] R4 [Regular Session]Metamorphic rocks and tectonics

Mon. Sep 6, 2021 4:00 PM - 6:30 PM poster (poster)

4:00 PM - 6:30 PM

[R4-P-13] U-Pb zircon age of Grt-Bt gneiss in Akebono Rock, Prince Olav Coast, East Antarctica

*Sotaro Baba1, Kenji Horie2, Tomokazu Hokada2, Mami Takehara2, Atsushi Kamei3, Ippei Kitano4, Yoichi Motoyoshi2 (1. University of the Ryukyus, 2. National Institute of Polar Research, 3. Shimane University, 4. Tochigi Prefectural Museum)

Keywords:Lützow Holm Complex, East Antarctica

世話人からのハイライト紹介:東南極のリュツォ・ホルム岩体,あけぼの岩に産する片麻岩の変成年代が前期新原生代であることを明らかにした研究である.これまで当岩体で広く受け入れられている変成年代は後期新原生代であり,前期新原生代の変成年代は日の出岬以外に認められていなかった.本研究の結果は,前期新原生代の変成作用が記録された範囲が従来よりも広いことを示し,リュツォ・ホルム岩体の変成イベントの再考が必要である可能性を示唆する.参考:ハイライトについて
リュツォ・ホルム岩体は東南極プリンス・オラフ海岸からリュツォ・ホルム湾に分布し,角閃岩相からグラニュライト相の高度変成岩類から構成される(Motoyoshi et al., 1989; Hiroi et al., 1991).リュツォ・ホルム岩体の変成度は,東端の新南岩から南西に向かって累進的に上昇すると考えられ,角閃岩相帯,遷移帯,グラニュライト帯に区分されている(Hiroi et al., 1991).主要な変成年代は600-520 Maとされるが (Dunkley et al., 2020),プリンス・オラフ海岸の日の出岬からは600-520 Maの年代は得られず,1073 Maの原岩年代と970Maの変成年代が得られている(Shiraishi et al., 1994; Dunkley et al., 2020).また,日の出岬は角閃岩相帯に位置するものの,変トーナル岩中の塩基性〜中性片麻岩ブロックはグラニュライト相条件を示すことが報告されている(Hiroi et al., 2008).我々は日の出岬の周辺露岩を含めて,変成変形作用の再検討進めている.
 あけぼの岩はプリンス・オラフ海岸の中央部,日の出岬の北東約12 km,角閃岩相帯に属する露岩である.あけぼの岩の西部地域に認められる剪断帯にはマイロナイト及びL-Sテクトナイトが産し,それらから推定された温度圧力条件は650-750℃,4-6 kbarであることが報告されている(Baba et al., 2021),また,これらの周囲に産するザクロ石角閃岩は650-700℃, 8±0.5 kbarの温度圧力条件を示す.あけぼの岩においてAl2SiO5鉱物を含む泥質片麻岩の産出は少なく, 藍晶石を含むザクロ石-黒雲母片麻岩が1試料のみ採取された.泥質片麻岩は主にザクロ石,黒雲母,石英,斜長石から構成され,カリ長石,藍晶石,グラファイト,イルメナイト,ルチル,ジルコンを伴う.ザクロ石は斑状変晶(〜0.8mm)として産し,顕著な組成累帯構造(正累帯構造)を示す.藍晶石は柱状結晶(〜0.2mm)として産し,石英や斜長石と接する.ザクロ石,黒雲母,斜長石の組成から求めた温度圧力条件は650-700℃,8±1kbarを示し,シュードセクションモデルから見積もられた条件も概ね一致する.
 このザクロ石-黒雲母片麻岩について,SHRIMP-IIを用いてU-Pb ジルコン年代測定を実施した.1121〜1014 Maおよび972〜904 Ma(n = 65)の2つ年代クラスターが特定され、後者の加重平均年代は937±6Mであった.この年代はジルコンのリムから得られた年代に一致し,Th/U は著しく低い値(< 0.08)を示すことから変成作用の年代であると解釈される.今回得られた年代は,あけぼの岩の角閃岩相変成作用が,リュツォ・ホルム岩体で広く受け入れられている新原生代後期からカンブリア紀の変成作用よりもかなり早い時期に起こったことを示している.この結果はプリンスオラフ海岸地域におけるリュツォ・ホルム岩体の変成イベントについて根本的な見直しが必要であることを示している.

引用文献 Baba et al., 2021, Antarctic Sci. 33, 52–72. Dunkley et al., 2020, Polar Sci. 26, 100606. Hiroi et al., 1991, Geological Evolution of Antarctica, 83-87. Hiroi et al., 2008, Geol. Soc. Sp. Publ., 43, 339-350. Motoyoshi et al., 1989, Geol. Soc. Sp. Pub., 43, 325-330. Shiraishi et al., 1994, J. Geology 102, 47–65.