128th JGS: 2021

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R5 [Regular Session]Regional geology and stratigraphy, chronostratigraphy

[3poster24-33] R5 [Regular Session]Regional geology and stratigraphy, chronostratigraphy

Mon. Sep 6, 2021 4:00 PM - 6:30 PM poster (poster)

4:00 PM - 6:30 PM

[R5-P-16] Lower Pleistocene age model and calcareous nannofossil biohorizons for the Northwestern Pacific region based on detailed chronostratigraphic analysis in the Kazusa Group, Boso Peninsula, Japan

*Koji Kameo1, Daisuke Kuwano2, Soki Hirota2, Shota Sugizaki3, Kanako Mantoku4, Yoshimi Kubota5 (1. Department of Earth Sciences, Chiba University, 2. Graduate School of Science and Engineering, Chiba University, 3. Japan Petroleum Exploration Co. Ltd., 4. National Institute of Environmental Studies, 5. National Museum of Nature and Science)

Keywords:Pleistocene, age model, Calcareous nannofossils

地層の年代を決定するための「基準」として,さまざまな年代層序学的手法および年代学的手法が用いられていることは周知の通りであるが,化石,古地磁気,同位体および放射年代測定などのうち,どの手法に重点が置かれているかは取り扱う時代によって異なる(Gradstein et al., 2020).とくに白亜紀以降の年代決定に有効な石灰質ナノ化石では,東部赤道太平洋と赤道大西洋の深海底コア,そして地中海の陸上セクションを用いて評価された基準面がよく用いられる.しかしながら,そうした年代決定基準のすべてが汎世界的とは限らないので,それらの基準面を基本としながらも,対象とする地域における時間の物差しとなる年代尺度を確立する必要がある.ところが,本邦を含む北西太平洋地域ではそうした尺度を構築するために適切な深海堆積物もごくわずかで,基準面そのものの時間分解能が高いわけではない.そこで本研究では,房総半島の上総層群を用いて,千年もしくはそれより短い時間間隔という,高い時間分解能での年代層序学的解析を実施し,本邦を含む北西太平洋地域における詳細な年代決定を可能にする下部更新統の標準的な年代モデルを構築することを目的として,酸素同位体層序,石灰質ナノ化石と浮遊性有孔虫化石の検討を行っている.これまで我々の研究グループでは,上総層群国本層,梅ヶ瀬層,大田代層,黄和田層の一部分を研究対象とし,130万年前から80万年前を集中的に検討してきた.その結果,詳細な酸素同位体層序を年代モデルのリファランスとして設定し,それと石灰質ナノ化石基準面との対応を詳細に明らかにすることができたので報告する. 取り扱ったセクションはいずれも豊富に石灰質微化石を含み,詳しい年代層序学的検討が可能である.これまでに明らかにできた石灰質ナノ基準面と対応する同位体ステージ(MIS)は以下の通りである.
Reticulofenestra asanoiの産出上限:梅ヶ瀬層上部,MIS 24(椙崎・亀尾, 2018)
Gephyrocapsa parallelaの産出下限:大田代層上部,MIS 30(廣田ほか,2021;本研究)
Large Gephyrocapsaの産出上限:黄和田層最上部,MIS 37(Kuwano et al., 2021)
Helicosphaera selliiの産出上限:黄和田層上部,MIS 40(Kuwano et al., 2021)
これらを年代値に換算すると,いずれも千年もしくはそれ以下の誤差範囲で化石基準面の年代を決定できるので,基準面は極めて高い時間決定精度を持つ.この結果は,佐藤ほか(1988),佐藤ほか(1999)辻ほか(2005)の結果をおおむねサポートするだけでなく,その精度をより高めたものとなった.また,下部—中部更新統の境界に設定された「千葉セクション」の検討結果によれば,Matuyama–Brunhes境界付近に中型(4 µm以上)のGephyrocapsa属の一時的な消滅という,新しいイベントが存在する可能性が示唆されている(Kameo et al., 2020).このイベントは現在型のGephyrocapsa属の出現と関係する可能性があるので,グローバルに追跡できるかどうかを検討する必要がある.さらに今後は,鮮新世型から更新世型の微化石タクサへの移り変わりの時期に相当し,現在型の海洋浮遊性生物の成立過程を明らかにする上で重要な時代であるにもかかわらず,十分な年代尺度が確立された例が極めて少ない130万年前から200万年前までの時代の検討が必要である.
謝辞:本研究の一部に研究坑井JNOC TR-3号井の試料を利用した.独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構には同坑井の利用を許可していただいた.石油資源開発株式会社辻隆司氏にはコアの深度等についてご教示いただき,元日本天然ガス株式会社三田勲博士には試料の利用に関してご協力いただいた.以上の方々に深く謝意を表する次第である.
文献:Gradstein et al., 2020, Geologic Time Scale 2020. 1357 pp., Elsevier. 廣田ほか,2021,日本地質学会第128年学術大会講演要旨. Kameo et al., 2020, Prog. Earth Planet. Sci., 7:36. https://doi.org/10.1186/s40645-020-00355-x Kuwano et al., 2021, Stratigraphy, 18, 103–121. 佐藤ほか,1988,石技誌,53,475–491. 佐藤ほか,1999,地球科学,53,265–274. 椙﨑翔太・亀尾浩司,2018.日本地質学会第125年学術大会講演要旨. 辻ほか,2005,地質学雑誌,111,1-20.