4:00 PM - 6:30 PM
[R5-P-17] Stratigraphy and age of Goto Islands, Nagasaki Prefecture
Keywords:Late-Middle Miocene, Goto Islands
五島列島は長崎県本土の西方約100kmに位置し,北東-南西方向に配列する5つの島(福江島,久賀島,奈留島,若松島,中通島)と約140余りの小島からなる.五島列島の基盤岩類は中新世の堆積岩類からなる五島層群(植田,1961)とそれを覆う流紋岩類(五島酸性凝灰岩類)と15Maの花崗岩類(河田ほか,1994)からなる.我々は,五島層群および五島酸性凝灰岩類についての柱状図作成および年代測定により全体の層序を復元した.五島層群下部層(層厚300m+)は緑色火山砕屑岩,中部層(層厚約1000m)は泥岩優勢で,リップルラミナをもつ砂岩泥岩互層,上部層(層厚約1500m)は斜交層理を多く含む厚い砂岩を主体とする砂岩泥岩互層からなり,それを不整合で五島酸性凝灰岩(層厚およそ500-3000m)が覆う.
本研究では,五島層群中の凝灰岩や五島酸性凝灰岩中の流紋岩溶岩や火山砕屑岩についてジルコンのU-Pb年代測定を行った.また,斜交層理の発達する五島層群中の砂岩層において,Dickinson(1983)に基づく砂岩モード組成の測定と古流向測定を行い,堆積物の供給方向を推定した.
(U-Pb年代)五島層群下部層は塊状緑色火山砕屑岩を主体とし,下部は角礫を豊富に含み,上部ほど斜交層理を伴う火山砕屑岩に移り変わる.この火山砕屑岩中には18億から1億年前の年代を示す円磨されたジルコンが多く含まれる.そのうち角張った小さいジルコンから21.7±0.5Ma,22.6±0.5Maが得られた.奈留島では,五島層群中部層の砂岩泥岩互層中の酸性火山灰層が17.66±0.19Maを示した.福江流紋岩類は,流紋岩質の凝灰角礫岩と白色流紋岩を測定し,それぞれ16.36Ma±0.09Ma,16.80±0.36Maを示した.
(砂岩組成)モード組成は五島層群中部層の砂岩は石英約80%,長石約20%,岩片数%,五島層群上部層の砂岩は石英約90%,長石約10%,岩片数%であり,上部層は石英の量比が増加する.
(古流向)五島層群中部層の砂岩は砂泥互層中の比較的薄い砂岩層が多く,リップルラミナを持つものが多い.比較的厚い砂岩は,波高5 cm~30 cmの斜交層理を保存しており,古流向はNWからNEの範囲を示した.五島層群上部層は,厚い層厚をもつ砂岩層が卓越しており,そこで見られる波高20 cm~1,2mの斜交層理が示す古流向はほとんど南から北方向の流れを示した.
(まとめ)五島層群下部層の火山性砕屑岩は,20-18Ma頃,中部層の砂岩泥岩互層は17.5-17Ma,上部層は17-16.5Maに堆積したと考えられる.五島酸性凝灰岩(福江流紋岩類)は2カ所で16.5Maの年代が取得でき,五島層群の砂岩層堆積後に火山活動により形成したと考えられる.また,砂岩モード組成から中部層から上部層にかけて石英の量が増加し,厚い砂の層が形成する.中部層は北方向に幅広い方向の流れでできるが,波高の大きい上部層は南から北への方向を示した.つまり,丁度西南日本の回転時期(星,2018)に堆積場が大きく変化しており,蛇行河川から網状河川-河口デルタ環境への変化が起こったと考えられる.
〈引用文献〉
植田, 1961, 九州大学理学部研究報告 地質学, 5 (2), 51-61. /河田ほか, 1994, 5万分の1地質図幅「福江」調査報告, 地質調査所, 4-32. /Dickinson et al., 1983, GSA Bulletin, 94 (2), 222–235. /星, 2018, 地雑, 124 (9), 675-691.
本研究では,五島層群中の凝灰岩や五島酸性凝灰岩中の流紋岩溶岩や火山砕屑岩についてジルコンのU-Pb年代測定を行った.また,斜交層理の発達する五島層群中の砂岩層において,Dickinson(1983)に基づく砂岩モード組成の測定と古流向測定を行い,堆積物の供給方向を推定した.
(U-Pb年代)五島層群下部層は塊状緑色火山砕屑岩を主体とし,下部は角礫を豊富に含み,上部ほど斜交層理を伴う火山砕屑岩に移り変わる.この火山砕屑岩中には18億から1億年前の年代を示す円磨されたジルコンが多く含まれる.そのうち角張った小さいジルコンから21.7±0.5Ma,22.6±0.5Maが得られた.奈留島では,五島層群中部層の砂岩泥岩互層中の酸性火山灰層が17.66±0.19Maを示した.福江流紋岩類は,流紋岩質の凝灰角礫岩と白色流紋岩を測定し,それぞれ16.36Ma±0.09Ma,16.80±0.36Maを示した.
(砂岩組成)モード組成は五島層群中部層の砂岩は石英約80%,長石約20%,岩片数%,五島層群上部層の砂岩は石英約90%,長石約10%,岩片数%であり,上部層は石英の量比が増加する.
(古流向)五島層群中部層の砂岩は砂泥互層中の比較的薄い砂岩層が多く,リップルラミナを持つものが多い.比較的厚い砂岩は,波高5 cm~30 cmの斜交層理を保存しており,古流向はNWからNEの範囲を示した.五島層群上部層は,厚い層厚をもつ砂岩層が卓越しており,そこで見られる波高20 cm~1,2mの斜交層理が示す古流向はほとんど南から北方向の流れを示した.
(まとめ)五島層群下部層の火山性砕屑岩は,20-18Ma頃,中部層の砂岩泥岩互層は17.5-17Ma,上部層は17-16.5Maに堆積したと考えられる.五島酸性凝灰岩(福江流紋岩類)は2カ所で16.5Maの年代が取得でき,五島層群の砂岩層堆積後に火山活動により形成したと考えられる.また,砂岩モード組成から中部層から上部層にかけて石英の量が増加し,厚い砂の層が形成する.中部層は北方向に幅広い方向の流れでできるが,波高の大きい上部層は南から北への方向を示した.つまり,丁度西南日本の回転時期(星,2018)に堆積場が大きく変化しており,蛇行河川から網状河川-河口デルタ環境への変化が起こったと考えられる.
〈引用文献〉
植田, 1961, 九州大学理学部研究報告 地質学, 5 (2), 51-61. /河田ほか, 1994, 5万分の1地質図幅「福江」調査報告, 地質調査所, 4-32. /Dickinson et al., 1983, GSA Bulletin, 94 (2), 222–235. /星, 2018, 地雑, 124 (9), 675-691.