129th Annual Meeting of the Geological Society of Japan

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Session Oral

G1-1.sub-Session 01

[1oral201-12] G1-1.sub-Session 01

Sun. Sep 4, 2022 9:00 AM - 12:00 PM oral room 1 (Build. 14, 501)

Chiar:Keishi Okazaki, Yoshihiro Nakamura, Nana Kamiya

9:45 AM - 10:00 AM

[G1-O-4] Fluid activity at the deeper part of plate boundary: An example from Median Tectonic Line in Ohshika district, Nagano, Japan

*Yoshihiro Nakamura1, Kiran Sasidharan2, Satish-Kumar Madhusoodhan2 (1. Geological Survey of Japan, AIST, 2. Graduate School of Science and Technology, Niigata University)

Keywords:Median tectonic line, Carbonate minerals, Carbon and oxygen isotopes

地質時代に形成された沈み込み帯境界面は,現在観測される深部プレート境界面での流体活動や力学特性を陸上で観察できる貴重な地質記録である.最近Nakamura et al. (2022)は,三波川変成帯と領家変成帯が地下30km付近ですでに接合し,中央構造線が古第三紀のプレート境界面として機能していたことを報告した.つまり中央構造線に記録される断層岩とそれに伴う断層脈の特性から,各深度におけるプレート境界面での流体活動を追跡できる可能性がある. そこで本研究では,中央構造線中軸部に広く分布する炭酸塩脈を対象に詳細な記載と地球化学的研究を実施した.長野県大鹿村地域には,オレンジカタクレーサイトと呼ばれる鉄酸化物と炭酸塩脈からなる強変質帯が広く分布する.炭酸塩脈はウルトラマイロナイト面を切断し,左横ずれを示すポーフィルロクラストのテイルを充填している.一方で右横ずれを示す断層ガウジ中には,クラスト単体として存在するか,斜長石を置換している.このような微細観察からウルトラマイロナイトが形成される時期から脈形成が開始し,断層ガウジが形成されるときにはすでに沈殿が終了したと示唆される.
 この炭酸塩脈を南北20kmから計28試料採取し炭素酸素同位体分析を新潟大学にて実施した.採取した炭酸塩脈のXRD分析では,ほとんどがカルサイトであり一部ドロマイト試料も含まれている.δ13CV-PDBは–3.64‰から–10.9‰まで変動しδ18OV-SMOMも+11.04‰から+23.5‰まで変動した.本研究地域の炭素酸素同位体値は弱い正の相関を有する.このような炭素酸素同位体値の線形関係は2種類のCOH流体の混合で説明できる(Zhang and Hoefs, 1993). そこで我々の炭素酸素同位体分布を説明できるfluid Aとfluid Bをモデル計算した.大規模なせん断帯中のマイロナイトは天水起源の流体が地下10km付近まで浸透していることが,石英の酸素同位体値から明らかになっている(Fricke et al. 1992). そこでfluid A (δ13C=–3.5‰, δ18O = 0 ‰)を天水と仮定し,流体混合モデルの計算を行った.すると炭酸塩脈の炭素酸素同位体値を説明できるfluid Bはδ13C =–15 ‰, δ18O = +3 ‰となり,大きなδ13C値の変動が混合モデルから推定された.この値は泥質片岩中有機物(–25‰)の寄与を強く示唆しており,フランシスカン変成帯や三波川変成帯中の泥質片岩中炭酸塩脈と近い炭素酸素同位体値を示す(Bebout, 1995; Morohashi et al. 2008). つまりプレート境界下盤側の三波川変成岩の脱水反応で形成されたCOH流体がfluid Bの起源である可能性が高い.そして地下深部で形成された変成流体と天水がせん断帯を浸透する間に混合し断層面に炭酸塩脈を沈殿させたと考えられる.大鹿村地域では現在でもスラブ流体起源とされる塩水が中央構造線沿いに湧出しており,この塩水との関連も含めて議論を行う.

[引用] Bebout (1995), Chemical Geology; 126, 191–218. Fricke et al. (1992), CMP; 111,203–221. Morohashi et al. (2008), JMPS; 103, 361–364. Nakamura et al. (2022), JMG;40, 389–422. Zhang and Hoefs (1993), Mineral. Deposita; 28, 79–89.