129th Annual Meeting of the Geological Society of Japan

Presentation information

Session Oral

G1-1.sub-Session 01

[1oral201-12] G1-1.sub-Session 01

Sun. Sep 4, 2022 9:00 AM - 12:00 PM oral room 1 (Build. 14, 501)

Chiar:Keishi Okazaki, Yoshihiro Nakamura, Nana Kamiya

11:00 AM - 11:15 AM

[G1-O-9] fluid source in the diagenesis of pelagic sediments

*Hitomi MIZUNO1, Asuka Yamaguchi1, Akira Ijiri3, Takashi Sano2 (1. AORI, the university of Tokyo, 2. Department of Geology and Paleontology, National Museum of Nature and Science, 3. Graduate School of Maritime Sciences, Kobe University)

沈み込み帯における水の挙動は地震発生に関係していると考えられている。珪質軟泥は、海洋底の年齢が古く海溝の水深が炭酸塩保証深度を超える冷たい沈み込み帯に供給される主要な構成物であり、その脱水がプレート境界断層の発達に関与している可能性がある(Kameda et al., 2012; Kimura te al., 2012)。本研究では日本海溝のような冷たい沈み込み帯における流体の挙動を理解するために、美濃帯犬山セクションをその陸上アナログとして研究した。犬山セクションは分厚い層状チャートが60 m.y.以上の期間にわたって堆積しており、古い海洋プレートの沈み込みで形成されたことを示唆している(Matsuda and Isozaki, 1991)。犬山セクションでは、赤色チャートの層の中に2-10 mおきに白色チャートの層がみられ、これは流体の通り道であったと考えられている(Kameda et al., 2012)。白色チャートを形成するために必要な流体の量は単位質量あたりの珪質軟泥から脱水する水の量よりも明らかに多く (Yamaguchi et al. 2016)、外部からの移流があると考えられる。本研究では冷たい沈み込み帯に供給される流体の起源を制約するため、チャートの露頭や研磨片、薄片の観察を行うとともにチャートの中の様々な沈殿タイミングの石英に対し酸素同位体比と微量元素の分析を行った。チャート中の石英の形態は赤色チャート、白色チャート、石英脈の3つに大別され、また先に述べた順番に沈殿している (Kameda et al., 2012)。本研究では赤色チャート、白色チャート、石英脈中の石英についてそれぞれの酸素同位体比及び微量元素の値を測定し、石英を沈殿させた流体の起源を議論する。 酸素同位体比について、赤色チャート7試料、白色チャート4試料、石英脈3試料の測定をActivation Laboratories Ltd.に依頼した。その結果、赤色チャートはδ18O=-3.70~10.00‰、白色チャートはδ18O=-1.00~14.00‰、石英脈はδ18O=0.55~13.00‰となった。一方、白色チャート3試料について高知コアセンターの酸素同位体分析ライン(Ijiri et al., 2014)で分析したところδ18O=26.6~25.5‰となった。Kameda et al. 2012の計算によると、日本海溝における石英の沈殿は70℃前後で開始し100~130℃で終了する。同位体平衡の元、70℃及び130℃で石英が沈殿したと仮定すると、流体のδ18OはActivation Laboratories Ltd.で測定された値を採用すると-29.56~-11.86‰ (70℃) 、-21.14~-3.44‰ (130℃) 、高知コアセンターで測定された値を採用すると-0.4~0.7‰ (70℃) 、8.1~9.2‰ (130℃) となる。Activation Laboratories Ltd.のデータから計算された流体のδ18O値は天水、高知コアセンターで測定したデータから計算された流体のδ18O値は海洋地殻やマントルウェッジ由来の、深部からの水が起源であると考えられる。このため、差異が生じた理由を検討し、流体の起源を制約するために微量元素の分析を行う予定である。
引用文献
Ijiri et al., 2014. Journal of Quaternary Science, 29, 455-462.
Kameda et al., 2012. Earth Planet. Sci. Lett., 317–318, 136–144.
Kimura et al., 2012. Earth Planet. Sci. Lett., 339–340, 32–45.
Matsuda, T., Isozaki, Y., 1991. Tectonics, 10, 475–499.
Yamaguchi et al., 2016. Tectonophysics, 686, 146–157.