129th Annual Meeting of the Geological Society of Japan

Presentation information

Session Oral

G1-2.sub-session02

[1oral501-07] G1-2.sub-session02

Sun. Sep 4, 2022 9:00 AM - 10:45 AM oral room 5 (Build. 14, 402)

Chiar:Masami WATANABE, Yoshihiro Takeshita, Muneki Mitamura, Yoshitaka Nagahashi(Fukushima University)

10:00 AM - 10:15 AM

[G2-O-5] Changes in the paleoenvironment over the past 600 years in Lake Nakaumi based on benthic foraminiferal assemblages

*Mika SHIMAIKE1, Akira TSUJIMOTO1, Kotaro HIROSE2, Koji SETO1, Hiroaki SHAKUTSUI3, Toshiaki IRIZUKI1 (1. Shimane University, 2. University of Hyogo, 3. Yachiyo Engineer. Co. Ltd)

Keywords:benthic foraminiferal, Lake Nakaumi, artificial modification, brackish water

島根県と鳥取県の県境に位置する中海は,砂州の発達により日本海と分断された汽水の海跡湖であり,中海は境水道を通じて日本海と,大橋川を通じて宍道湖とつながっている.中海では,戦後の食糧難を解決する目的で,国営の干拓および淡水化事業による埋め立てや水門・堤防の建設などの人工改変が行われたり,事業中止を受けて堤防の一部開削や撤去が行われたりするなど,過去約60年間の間に中海の環境は人為的に大きく改変された. 湖底堆積物は過去の環境変化を記録しており,中海ではこれまでにも堆積物中の貝形虫(入月ほか,2003;山田ほか,2015)や有孔虫(Nomura,2003)などを用いた人為的な環境変化に関する研究が行われてきた.本研究では,環境変化に鋭敏に反応する有孔虫化石を用いて,中海の生態系の動態を理解するとともに,人工改変等に関連した環境変化を議論することを目的とした. 試料は2017年に中海南部に流入する飯梨川の河口から北に約2 kmの地点Nk - 3C(水深約7.2 m)において採集され,コア長は183 cmであった.本コア試料は廣瀬ほか(2020)によって,年代モデルや地球科学的環境の変化が報告されており,基底部が西暦1400年頃と推定されている.有孔虫分析用試料については,63㎛の篩で水洗・乾燥処理を行った後,残渣試料を106㎛の篩でふるい,実体顕微鏡下で各試料から有孔虫を200個以上抽出し,種の同定を行った.その結果に基づき,種の相対産出頻度,単位重量当たりの個体数,種多様度を求めた.また,客観的に有孔虫群集とその変遷を把握するため,Qモードクラスター分析を行った. 分析に用いた47試料からは13属21種の有孔虫化石が産出し,過去約600年間の間に中海の有孔虫群集に大きな変化が生じていることが明らかとなった.産出した有孔虫は,その変化によって5つの有孔虫相に区分できた.phase 1(西暦1400年頃-1700年頃)では,現在の中海に優占するAmmonia beccariiTrochammina hadaiが変動を伴いながらも優占しており,Miliolinella subrotundaBuccella frigidaなどの浅海性種も連続的に産出している.A. beccariiT. hadaiは現在の中海において,塩分の影響を受けて分布が規制されており,塩分変動の影響が示唆される.phase 2(西暦1700年頃-1750年頃)では浅海性種であるElphidium cf. excavatumB. frigidaが減少し,多様性が低下している.また,Nomura (2003) で富栄養・湖水の停滞性の指標とされるT. hadaiの割合が増加していることから,一時的に湖水の停滞が生じた可能性がある.Phase 3(西暦1750年頃-1900年頃)では,浅海性種であるAmmonia tepidaM. subrotundaの増加が見られることから,水の循環がよくなったと推測できる.phase 4(西暦1900年頃-1970年頃)では前phaseまで増加を見せていたA. tepidaM. subrotundaが減少しており,人為的な環境変化の影響と考えられる.phase 5(西暦1970年頃以降)では,多様性の顕著な低下が特徴として挙げられる.1968年から始まった本庄工区を囲む堤防の建設により,中海の閉鎖性が増大したことが認められていることから,この時期の多様性の低下の原因の一つとして,堤防建設等による閉鎖性の増大が考えられる.

引用文献
廣瀬ほか(2020)Laguna vol. 27,p. 41-57 (2020)
入月ほか(2003)島根大地球資源環境学研報,no. 22, p. 149–160.
山田ほか(2015)第四紀研究,vol. 54, no. 2, p. 53–68.
Nomura(2003)Jour. Geol. Soc. Japan,vol. 109, no. 4, p. 197-214