129th Annual Meeting of the Geological Society of Japan

Presentation information

Session Oral

G1-2.sub-session02

[1oral501-07] G1-2.sub-session02

Sun. Sep 4, 2022 9:00 AM - 10:45 AM oral room 5 (Build. 14, 402)

Chiar:Masami WATANABE, Yoshihiro Takeshita, Muneki Mitamura, Yoshitaka Nagahashi(Fukushima University)

10:15 AM - 10:30 AM

[G2-O-6] Characteristics of Periglacial Slope Sediments in the Nortern Hidaka Mountains, Hokkaido, Japan

*Hiromichi KOYASU1, Yoshihiro KASE1, Gentaro KAWAKAMI1, Satoshi ISHIMARU1, Kenji NISHINA1 (1. Geological Survey of Hokkaido)

Keywords:periglacial slope sediments, high quality boring core, X-ray computed tomography, formation processes, Hokkaido

はじめに
北海道には周氷河性斜面が広く分布する(小泉,1992).周氷河性斜面の堆積物は,一般的に不淘汰で角礫が主体なため,礫の産状に着目されてきた(山本,1989など).一方,凍結融解作用により不淘汰な堆積物中にもシルトを主体とする構造が存在し,斜面災害との関連を指摘されるが(石丸,2017),そのような構造の詳細な記載例は少なく,形成プロセスも不明な点が多い.本発表では,北海道における周氷河性斜面堆積物の特徴を記載し,形成プロセスを考察する.
調査地域の地形と地質および調査手法
調査地域は標高500- 1000 mで,概ね30°以下の緩傾斜な山地が分布する.本研究では日勝峠および狩勝峠周辺における日高山脈西山麓の泥質片岩,片麻岩および花崗閃緑岩分布地域において高品質ボーリング掘削を実施した.コアは肉眼観察により層相を区分するとともに,X線CT撮影によりコアの礫質褐色土における成層構造および礫の配列方向を記載した.
結果
泥質片岩分布地域
層相 風化基盤岩上の堆積物は層厚2.5 mで,表層から黒土,礫質褐色土となる.黒土は層厚50 cmで,最上部10 cmは礫を殆ど含まない.下方に向けて有機質は減少するが礫の含有量は増加し,礫質褐色土に漸移する.礫質褐色土の礫は細~中礫径の角礫で,平板な泥質片岩からなり,下方に向けて礫の径と量が増大する傾向がある.基盤岩は泥質片岩で,多く含まれる黒雲母に沿って片理が発達する.最上部はジグソー状に破砕するが下方に向けて破砕の程度は減少し,風化基盤岩の上面から1 m以深は硬岩となる.
成層構造および礫の配列方向 多くの層準で礫は強く配列するが,長軸に卓越する方向はない.砂が多い部分はあるが成層構造は不明瞭である.最下部の約50 cmでは礫の長軸と配列の最大傾斜方向が一致する傾向にある.
片麻岩分布地域
層相 風化基盤岩上の堆積物は層厚3.6 mで,表層から黒土,礫質褐色土となる.黒土は層厚70 cmで礫を殆ど含まない.礫質褐色土の礫は片麻岩で細~中礫径の角礫からなる.最上部30 cmは細礫混じりの砂質シルトからなる.砂質シルト以深では礫が多い層と少ない層を繰り返しながら,礫の量および礫径が下方に向けて増大する傾向がある.最下部60 cmでは基質が減少し粗粒化する.基盤岩は白黒の縞状構造が明瞭な片麻岩で,片理面には黒雲母が多く含まれる.最上部ではジグソー状に破砕するが,下方に向けて破砕の程度は減少し,風化基盤岩の上面から1 m以深は硬岩となる.
成層構造および礫の配列方向 砂質シルトおよび礫の少ない部分でも明瞭には成層しない.全体的に礫の配列は弱く,礫の長軸には卓越する方向はないが,下部の約60 cmでは礫の長軸と礫の配列の最大傾斜方向が一致する傾向にある.
花崗閃緑岩類分布地域
層相 風化基盤岩上の堆積物は層厚2.5 mで,表層から黒土,Ta-dテフラ(9 ka),礫質褐色土となる.礫質褐色土は花崗岩類の角礫を含む.最上部20 cmは礫が少なく砂質シルトが多い.礫は角礫で細礫径が多いが,中礫径も散見され,定方向に配列する.中部の1.5 mでは,礫は細~中礫径の角礫となる.礫質褐色土の下部40 cmには礫を含まない砂の薄層が頻繁に挟在し,基底部の砂層はシルト質で,10 cm程になる.基盤岩である黒雲母花崗閃緑岩は,最上部では粘土質に風化し軟岩状になる.粘土質風化部のより下方では鉱物粒子が分離し結合が弱く,風化程度は下方に向けて弱くなる.
成層構造および礫の配列方向 最上部では礫の比較的少ない細粒部があるものの明瞭には成層しない.中部では部分的に礫が弱く配列することがあるが礫に卓越する長軸方向はない.下部では明瞭な砂の薄層と並行に礫が配列し,礫の長軸方向は最大傾斜方向と直交する傾向がある.
周氷河性斜面における堆積物の形成プロセス
礫質褐色土は黒土ないしTa-dの層序的下位にあること,En-aテフラ(19-21 ka)を欠くことから,最終氷期以降の周氷河環境で形成されたと考えられる.礫質褐色土下部は,泥質片岩と片麻岩分布地域では,礫の長軸と配列方向が一致すること(French, 2017)から,典型的な周氷河プロセスのソリフラクションで形成されたと考えられる.一方,花崗閃緑岩分布地域おける礫質褐色土下部のシルト質砂層は成層構造が明瞭で礫の長軸と最大傾斜方向が直交すること(山本, 1998)から,地表の掃流により運搬堆積した可能性がある.また,礫質褐色土の上部では礫の長軸に卓越する方向が確認されず,周氷河以外のプロセスが寄与した可能性も示唆される.
文献
French (2017). Wiley; 石丸 (2017). 防災研資,411,17-24; 小泉(1992). 地理評A, 65, 132-142;山本(1989). 第四紀研, 28, 139-157; 山本(1998).地形, 19, 243-259.