129th Annual Meeting of the Geological Society of Japan

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Session Oral

T5.[Topic Session]Glocal stratigraphy and geochronology

[2oral201-12] T5.[Topic Session]Glocal stratigraphy and geochronology

Mon. Sep 5, 2022 8:45 AM - 12:15 PM oral room 2 (Build. 14, 101)

Chiar:Reishi Takashima, Yuji Orihashi(Hirosaki Univ.), Hiroyuki HOSHI

10:45 AM - 11:00 AM

[T5-O-7] Apatite U–Pb dating of Dinosaur teeth in the Gobi Desert, Mongolia: the first attempt

Myu TANABE1, Kentaro CHIBA2, *Kazumas AOKI1 (1. Okayama University of Science, Center for Fundamental Education, 2. Okayama University of Science, Faculty of Biosphere-Geosphere Science)

Keywords:Dinosaur , Apatite, U-Pb, Mongolia

モンゴル国ゴビ砂漠では、中生代から新生代にかけて堆積した地層から脊椎動物化石が数多く発見されており、特に後期白亜紀の地層は、恐竜に代表される豊富な脊椎動物化石産地として世界的に知られている。脊椎動物化石を含む地層の堆積年代は、動物相の進化-多様性を議論する上で非常に重要な情報であるため、これまでに凝灰岩中のジルコンを使ったU-Pb年代測定や玄武岩中の角閃石を使ったK-Ar年代測定、さらにはカリーチ中のカルサイトを使ったU-Pb年代測定(Kurumada et al., 2020)などから、その堆積年代の制約が行われてきた。しかし、ゴビ砂漠では、そういった鍵層が確認されないことが多く、また確認されたとしても意味のある年代値が得られるとは限らず、このことがアジア大陸間のみならず北米大陸や南米大陸といった他の大陸間との脊椎動物の比較・進化に関する議論の障壁となっていた。この問題を解く鍵の1つとして、脊椎動物の骨や歯化石のアパタイトU-Pb年代測定が挙げられる。骨や歯は化石化過程においてハイドロキシアパタイトからフルオロアパタイトに再結晶化し、その際にウランを取り込むため、U-Pb年代測定が適応できる(Sano et al., 2006; Greene et al., 2018; Barreto et al., 2022)。本研究ではモンゴル白亜紀系最上部層のネメグト層に注目した。ネメグト層の堆積年代は、産出化石の比較と層序から白亜紀後期マーストリヒチアン(約7200-6600万年前)とされているが,年代測定法による具体的な年代値の報告はこれまでにない。そこで、この堆積年代を絶対年代値から検証するため、ゴビ砂漠西部ブギンツァフ地域ネメグト層中部ユニットから採取したタルボサウルス(ティラノサウルス科)の歯化石に対し、LA-ICP-MS を使ったアパタイトU-Pb年代測定を試みた。得られたREEパターン(PAASで規格化)はどの試料も基本的には同じ形状を示し、LREEが減少し、HREEにかけて上昇またはフラットな形状であった。Y濃度に関しても試料ごとに多少の濃度の違いはあるが、その多くは1000 ppm以上であった。Greene et al. (2018)により提案されているY濃度を指標とした変質試料のスクリーニング法を適用したところ、全ての試料が化石化後に変質作用を受けていることが分かった。実際にほとんどの試料は50–25Maの年代値を示し、推定される年代値(後期白亜紀)に比べ若かった。一方、1つの試料から化石化後の変質の影響が少ない領域が確認され(Y濃度が500 ppm程度)、 その領域から得られた年代値は66.2 ± 2.5 Maであった。この年代値はマーストリヒチアンの年代範囲に収まる。したがって、変質を被っている試料とはいえ、その値はタルボサウルス歯の化石化年代の下限値として捉えることができる。さらに、化石含有層の形成はその化石化より前であることを考慮すると、本研究結果が示すネメグト層の堆積・形成時期は「66.2 ± 2.5 Ma以前」である。本研究だけでは堆積年代に関するこれ以上の制約はできない。しかし、化石種比較研究や層序学的研究から推定されるネメグト層の堆積年代(マーストリヒチアン)をサポートする結果がタルボサウルス歯化石の直接年代測定から初めて得られたことは、恐竜を含む動物相の進化・多様性を議論する上で大きな進展と言えるだろう。また、Yスクリーン法が歯化石の変質指標として強力なツールであることを再確認できたことも重要な結果の1つといえるだろう。今後、歯化石試料をさらに増やすことで、モンゴル白亜系化石含有層の堆積年代をより正確に制約していく。 Kurumada et al., 2020. Terra Nova, doi.org/10.1111/ter.12456. Sano et al., 2006, Geochemical Journal, 40, 171–179. Greene et al, 2018, Chemical Geology, 493, 1–15. Barreto et al., 2022, Journal of South American Earth Science, 116, 103774.