129th Annual Meeting of the Geological Society of Japan

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Session Oral

T5.[Topic Session]Glocal stratigraphy and geochronology

[2oral201-12] T5.[Topic Session]Glocal stratigraphy and geochronology

Mon. Sep 5, 2022 8:45 AM - 12:15 PM oral room 2 (Build. 14, 101)

Chiar:Reishi Takashima, Yuji Orihashi(Hirosaki Univ.), Hiroyuki HOSHI

11:00 AM - 11:15 AM

[T5-O-8] Carbon isotope stratigraphy and radiometric ages of the Upper Jurassic to Lower Cretaceous (Shishiori and Oshima groups) in Kesennuma-Oshima, Miyagi, Japan

*Takumi Otsubo1, Reishi Takashima2, Azumi Kuroyanagi2, Toshiro Yamanaka3 (1. Tohoku University, 2. The Tohoku University Museum, 3. Tokyo University of Marine Science and Technology)

ジュラ紀末期/ジュラ系最上部から前期白亜紀/下部白亜系にかけては多くのステージ境界においてGSSP(Global Boundary Stratotype Section and Point)が定まっていない.その理由として,この時代の地層はヨーロッパを中心に各地でアンモナイト化石に基づく詳細な生層序が確立されているものの,Primary markerとして広域対比に有効な化石種があまり見出せないことや,候補となる境界層付近の露出,層序の連続性に問題がある場合が多いことが挙げられる.また,GSSPの候補地のほとんどはヨーロッパにあるが,これらの地域の下部白亜系に凝灰岩がほとんど挟まらないために,生基準面の年代値が明らかでないことが多く,各ステージ境界の年代値についてもこれまで改訂が続けられてきた(高嶋ほか, 2018; Shimokawa, 2010 ).このような背景から最上部ジュラ系から下部白亜系のステージ境界の年代値は不確実性が高く,更なる検討が必要であると考えられる.一方,下部白亜系バランギニアン階には炭素同位体比が大きく正にシフトするWeissert Eventと呼ばれるイベントが見出されている.このイベントはParaná Etendeka Large Igneous Provinceの形成,世界的な寒冷化,浅海域における炭酸塩プラットフォームの溺死などに関連し,生態系に大きな影響を及ぼしたと考えられている(Weissert et al., 1998; Erba and Tremolada, 2004; Möller et al., 2020).Weissert Eventにおける炭素同位体比の正のエクスカーションはヨーロッパ各地で広く見出されていることから,グローバルな対比基準面となる可能性が高い.しかしながら,このWeissert Eventの炭素同位体比の正のエクスカーションは,日本を含む北太平洋地域での検討例や報告はこれまでにない. 気仙沼大島に分布する鹿折層群小々汐層,大島層群長崎層および鼎浦層は,アンモナイト化石や放散虫化石によると最上部ジュラ系チトニアン階からバランギニアン階に対比され,Weissert Event層準を含む可能性が示唆される.また,これらの地層には凝灰岩や溶岩,凝灰角礫岩などを伴っており,放射年代の測定にも適している.そこで,本研究では小々汐層から鼎浦層にかけての区間から泥岩を採集し,その全岩の炭素同位体比を測定するとともに,長崎層に挟まる凝灰岩からはジルコンを抽出し,そのU-Pb年代を測定した.炭素同位体比の測定は東京海洋大学で実施し,年代測定はアリゾナ大学レーザークロンセンターに依頼した.炭素同位体比に関しては,-27.5 ‰~-25.0 ‰の間で変動し,長崎層の中部に2 ‰の顕著な正のエクスカーションを見出すことができた.一方.この正のエクスカーション層準の7~8 m下位に挟まる凝灰岩から,136.1±1.0 Maという年代値が得られた.この年代値は,Gale et al. (2020) に基づくとバランギニアンの前期~中期に相当し,奈良ほか(1994)や竹谷(2013)により示されている小々汐層,長崎層の放散虫化石やアンモナイト化石に基づく生層序の結果とも概ね調和的であった.先述した凝灰岩のU-Pb放射年代値や,既に報告されている上位の鼎浦層のK-Ar放射年代値(柴田,1985),鼎浦層の同層準に当たるとされている原地山層のU-Pb放射年代値(杉山・植田,2018)なども考慮すれば,この炭素同位体比の正のエクスカーションはWeissert Eventに相当する可能性が高いと考えられる.
引用文献
Erba and Tremolada, 2004, Paleoceanogr., 19, PA1008. Gale et al., 2020, In Geologic time scale 2020, vol. 2 1023-1086. Laskar et al., 2004, Astrophys., 428, 261-285. Möller et al., 2020, Mar. Micropaleontol., 157, 101875. 奈良ほか,1994,福島県立博紀, 8, 29-63. Shimokawa, A., 2010, Ph.M. Thesis, University of North Carolina at Chapel Hill., 46p. 杉山雄亮・植田勇人,2018,JPGU 2018 年大会講演要旨,SGL31-01. 高嶋ほか,2018,地質雑, 124, 381–398. 竹谷陽二郎,2013,福島県立博紀, 27, 1-24. 土谷ほか,1997,岩手大学教育学部研究年報, 57, 53-73. Weissert et al., 1998, Palaeogeogr., Palaeoclimatol., Palaeoecol., 137, 189-203.