129th Annual Meeting of the Geological Society of Japan

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symposium

S2. [Symposium]Geology in the Anthropocene: Frontiers in boundary studies on age and material

[2oral213-27] S2. [Symposium]Geology in the Anthropocene: Frontiers in boundary studies on age and material

Mon. Sep 5, 2022 1:30 PM - 5:45 PM oral room 2 (Build. 14, 101)

Chiar:Yukio Isozaki, Hodaka Kawahata, Azumi KUROYANAGI

2:30 PM - 2:45 PM

[S2-O-5] Marine biodiversity in the Anthropocene

*Moriaki YASUHARA1 (1. The University of Hong Kong)

海洋における人新世の気候変動の影響は陸域における暴風雨や山火事のようにはっきりとは目に付かないかもしれない.しかし,海水の温度,酸性度,酸素含有量の少しの変化が海洋生物に大きな影響を与えうる.種によっては移動することによってこのような変化に対応するが,移動能力の低い生物は変化に適応するかさもなければ絶滅する.このような異なる気候変動への対応を無数の種がとることにより近い将来,例えば数世紀先,の生物群集・生物多様性の構造が決定される.しかし,断片的な歴史資料や長くとも20年程度に限られる生物学的なモニタリングからこのような過去,現在,未来の生物多様性・生物群集構造の趨勢や気候変動との関わりを理解することは非常に難しい.そこで,一つのアプローチとして,堆積物コア中の化石記録を過去の生態系を見,将来に備えるための「タイムマシーン」として使うことが挙げられる (Yasuhara et al., 2020a; Yasuhara and Deutsch, 2022).このような方向性の研究を生物学的な観測データ・研究と比較することにより,海洋の温暖化がドミノ効果的な種の高緯度方向への移動を引き起こしていることがわかってきた.つまり,海洋温暖化と溶存酸素量の低下により,熱帯域の種は過剰な高水温とそれに伴う低酸素環境を避け中緯度域に移動し,中緯度域の種はさらに高緯度に移動する,そして極域の種は逃げ場がなく絶滅するかもしれない (Yasuhara and Deutsch, 2022).この結果,熱帯域の多様性は低下し,中緯度域にピークを持つ二峰性の多様性の緯度勾配が発達する (Yasuhara et al., 2020b).極域の多様性は低緯度域からの種の流入によって高められるが,極域の固有種は高い絶滅リスクにさらされる.このような大規模な生物多様性・群集構造の再編成はすでに最終氷期以降の温暖化期,つまり,産業革命以前から始まっており,人新世の二酸化炭素排出により加速している.熱帯域の海水温は現在すでに海洋生物にとって高すぎるレベルにあり,熱帯域の種多様性の低下が生物学的な観測データからもすでに検出されている.近い将来のさらなる人為的温暖化は熱帯の生物多様性をかつて過去数百万年間無かったレベルまで低下させるかもしれない (Yasuhara et al., 2020b).

参考文献
Yasuhara, M., Huang, H.-H.M.§, Hull, P., Rillo, M.C., Condamine, F.L., Tittensor, D.P., Kučera, M., Costello, M.J., Finnegan, S., O’Dea, A., Hong, Y., Bonebrake, T.C., McKenzie, N.R., Doi, H., Wei, C.-L., Kubota, Y., Saupe, E.E., 2020a. Time machine biology: Cross-timescale integration of ecology, evolution, and oceanography. Oceanography: 33(2), 16–28.

Yasuhara, M., Wei, C.-L., Kucera, M., Costello, M.J., Tittensor, D.P., Kiessling, W., Bonebrake, T.C., Tabor, C.R., Feng, R., Baselga, A., Kretschmer, K., Kusumoto, B., Kubota, Y., 2020b. Past and future decline of tropical pelagic biodiversity. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America: 117, 12891–12896.

Yasuhara, M., Deutsch, C. A., 2022. Paleobiology provides glimpses of future ocean: Fossil records from tropical oceans predict biodiversity loss in a warmer world. Science: 375 (6576), 25–26.