129th Annual Meeting of the Geological Society of Japan

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symposium

S2. [Symposium]Geology in the Anthropocene: Frontiers in boundary studies on age and material

[2oral213-27] S2. [Symposium]Geology in the Anthropocene: Frontiers in boundary studies on age and material

Mon. Sep 5, 2022 1:30 PM - 5:45 PM oral room 2 (Build. 14, 101)

Chiar:Yukio Isozaki, Hodaka Kawahata, Azumi KUROYANAGI

4:00 PM - 4:15 PM

[S2-O-10] Tipping point of water and carbon cycles in the Earth’s interior

*Ikuo Katayama1 (1. Hiroshima University)

Keywords:Earth’s interior, Water cycle, Carbon cycle, Dynamic equilibrium, Environment

地球史を通じて安定的な表層環境がこれまで維持されてきたのは,地球内部での水と炭素循環の動的な平衡が維持されてきたからである(e.g., Tajika and Matsui, 1992; Kasting and Holm, 1992)。とくに炭素循環は,ウォーカーフィードバックにより表層での気候の安定化に寄与し,40億年以上ものあいだ地球が水惑星として存在する大きな要因となったと考えられる。炭素は,火山による脱ガスにより地球内部から放出される一方,海洋プレートに取り込まれた堆積物の沈み込みによって地球内部へと運び込まれる。この地球内部での炭素の放出と吸収の動的平衡が成立すること,そして地球史を通じた太陽放射の変化に対応することで地球表層での安定的な環境が維持されてきた。しかし,物質循環の駆動力である地球内部の熱源は地球史を通じて減少し続けており,プレートテクトニクスの抑制や停止によって未来の地球ではこの動的平衡が破綻する可能性が高い。現在の地球においても,温度低下によりプレートの脆性領域が広がるなど,動的平衡が破綻する兆候が見え始めていると考えられる。近年の地球物理観測では,海溝付近のプレートが折れ曲がるアウターライズ領域において,引張場での断層形成により海水がマントルまで浸透している証拠が数多く報告されている(e.g., Grevemeyer et al. 2018)。マントルと炭素が高い親和性をもつことから,そのような断層沿いでは炭酸マグネシウムの形成など海水中の炭素がマントルへ固定化されると予想される。その場合,従来想定されていた以上の多量の炭素が地球内部へと取り去られることで,現在の地球においてもすでに炭素循環の動的平衡が破綻しているのかもしれない。これまで地球システムとしての物質循環と自己調整機構によって安定的な表層環境が維持されてきたが,現在は大きな転換期を迎えており,不可逆で不安定な状態に移行していると考えられる。本講演では,最新の地球物理観測や実験データに基づいてこの仮説を検証するとともに,地球システムでの水と炭素の動的平衡が破綻する場合にどのような地球環境変動が待ち受けているかについて議論したい。

Grevemeyer, I., Ranero, C., and Ivandic, M. (2018) Structure of oceanic crust and serpentinization at subduction trenches. Geosphere 14, 395–418.
Kasting, J. and Holm, N. (1992) What determines the volume of the oceans? Earth Planet. Sci. Lett. 109, 507–515.
Tajika, E. and Matsui, T. (1992) Evolution of terrestrial proto-CO2 atmosphere coupled with thermal history of the earth. Earth Planet. Sci. Lett. 113, 251–266.