日本地質学会第129年学術大会

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シンポジウム

S2.[シンポ]人新世における地質学:年代境界・物質境界研究のフロンティア(一般公募なし)

[2oral213-27] S2.[シンポ]人新世における地質学:年代境界・物質境界研究のフロンティア(一般公募なし)

2022年9月5日(月) 13:30 〜 17:45 口頭第2会場 (14号館101教室)

座長:磯崎 行雄(東京大学)、川幡 穂高(早稲田大学理工学術院,東京大学大気海洋研究所 )、黒柳 あずみ(東北大学)

16:15 〜 16:30

[S2-O-11] 岩石と水の境界:反応と破壊の結合した動的な岩石学のフロンティア

*宇野 正起1 (1. 東北大学)

キーワード:岩石ー流体反応、流体活動時間、地殻破壊、透水率、地化学機械学習

岩石と水の境界は,地震発生やマグマ生成など地球内部の動的な現象の現場である.従来,変成岩や深成岩などの完晶質の岩石は静的な場で,百万年スケールで温度と圧力に応じて静々と反応するというイメージが主流であった.しかしながら近年,岩石と水の境界である反応帯や鉱物脈では,数百年から数年,さらには数時間程度のかなり短時間の破壊や流体移動,反応輸送現象を読み解くことが出来るようになってきた(e.g., John et al., 2013; Beinlich et al., 2020 Nature Geoscience).
 例えば,地殻深部で形成された高温変成岩中の鉱物脈は10時間程度の短時間の流体活動を記録しており,火山下の深部低周波地震や群発地震など現在進行中の地球物理現象と比較できるようになってきた(Mindaleva, Uno et al., 2020 Lithos).また,かんらん岩とH2OやCO2との反応は,体積膨張を伴うため,破壊や変形を引き起こす.最新の室内実験では,かんらん岩と水の反応組織(メッシュ組織)は,反応によって岩石が破壊して,水の流れや反応が加速された結果,形成された組織であることがわかってきた(Uno et al., 2022 PNAS).
 また,地質学において岩石と水の反応は,多くの場合,反応後の物質しか手に入らず,反応前の物質は分からない,そのため反応プロセスが分からない,ということがよくある.近年の地球化学と機械学習の発展によって,反応前の物質(=原岩)の化学組成を,反応後の岩石の化学組成から復元出来るようになってきた(Matsuno, Uno et al., 2022 Sci. Rep.).
 鉱物脈をみてあなたは何年でできたと思うだろうか?蛇紋岩のメッシュ組織からどんな反応プロセスを想像するだろうか?変質した玄武岩からもとの岩石を想像できるだろうか?時間と空間の限界に挑戦する,岩石―水反応の動的な描像をお伝えしたい.

【引用文献】
John et al. (2012) Nature Geoscience, 5, 489–492.
Beinlich et al. (2020) Nature Geoscience, 13, 307–311. Mindaleva, Uno et al. (2020) Lithos, 372–373, 105521.
Uno et al. (2022) Proceedings of the National Academy of Sciences, 119 (3) e2110776118.
Matsuno, Uno et al. (2022) Scientific Reports, 12 (1) 1385.