10:45 AM - 11:00 AM
[T1-O-13] Intensity evaluation of of element transfer and its controlling parameters: Differences between Northwest and South Pacific oceanic plates.
Keywords:Seafloor alteration , Element transfer analysis, Protolith reconstruction model, Machine-learning
海洋プレート上で生じる海洋底変質は、地球表層から地球内部までの一連の元素循環における起点である。海水との反応に伴って化学組成が改変された海洋プレートは、沈み込み帯を通じて地球内部へと入り、島弧玄武岩や海洋島玄武岩の微量元素濃度・同位体組成に影響を与える(Pietruszka et al. 2013)。海洋底変質による元素濃度変化は、原岩である玄武岩と変質作用の生成物である変質玄武岩の化学組成を比較することで解析されてきた(Kelley et al. 2003)。しかし、個々の変質岩試料に対する原岩にアクセスできるのは非常に稀であり、解析は依然として定性的な評価にとどまっている。したがって、海洋底変質に伴う定量的な元素移動量を解析するには、個々の変質岩試料に対して、原岩の組成を推定する必要がある。本研究は、変質岩の組成から原岩の組成を復元する地化学機械学習モデルによって定量的な元素移動量の推定を行い、異なる地域の変質岩試料から得られた元素移動量と変質作用の支配パラメータの関係性を評価した。
変質玄武岩の組成データは、北西太平洋(i.e., N10−35°, E140-160°)・南太平洋(i.e., S10-50°, W100-180°)の7つの深海掘削サイトから得られた計237試料の16元素(Rb, Ba, U, K, La, Ce, Pb, Sr, Nd, Y, Yb, Lu, Zr, Th, Ti, Nb)を先行研究からコンパイルした。各変質岩試料に対する原岩の組成は、機械学習モデルをベースとした原岩組成復元モデル(Matsuno et al. 2022)によって決定し、元素移動量を定量的に推定した。変質岩に残された原岩の痕跡として使用する不動元素は、Zr・Th・Ti・Nb とし、それ以外の12 元素の移動量を推定した。解析する2つの地域は、年代および堆積物の堆積速度が対照的であり(太平洋西部:130-170Myr、15mm/yr;太平洋南部:13.5-103.7Myr、0.01-0.1mm/yr)、これらのパラメータが海洋底変質へ与える影響を評価するのに適している。
各地域で推定された元素移動量からは、Rb・Ba・U・K・Pbで最大100倍の元素付加が見られる一方で、La・Ce・Sr・Nd・Y・Yb・Luでは元素移動が見られなかった。元素の付加が見られる物のうち、Rb・Kは、両地域で強い相関を持ち(R=0.842)、Saponiteなどの変質鉱物量比と相関が見られる(R〜0.5)。より年代が古い試料で付加傾向にあることから、海水との反応時間が変質鉱物の生成に伴うRb・Kの付加を促進すると考えられる。南太平洋地域では、Rb、Kが付加された試料において、Calcite veinと赤茶色の変色と共にBa・U・Pbの元素付加が見られた。その一方で、Pbの付加形態には、Calcite veinと赤茶色の変色を伴う場合と、変色などの特徴を持たない場合があり、後者の場合ではPbのみが付加していた。北西太平洋地域では、UとPbがそれぞれ独立した付加トレンドを示し、Uが付加されている試料では、変質鉱物に富む一方、Pbが付加されている試料では、南太平洋地域と同様に目立った特徴が見られなかった。北西太平洋地域の深さ521m-638mでは、Hydrothermal depositに伴うPbの付加が見られる一方で、その他では最大50%の溶脱が発生していた。両地域では、U・Pbの付加形態が異なるが、堆積速度に伴う堆積物の厚さの影響が考えられる。堆積速度の低い南太平洋では、堆積物の層が薄いため、継続的に酸化的な海水が供給される環境下での海水循環が起こる一方、堆積速度の高い北西太平洋では、堆積物の層が厚いため、プレート内での熱水循環が起きると考えられ、このような水の供給源・循環形態の違いが元素の付加・溶脱形態へ反映されている可能性がある。現在は、2地域7サイトから得られた試料の解析にとどまっているが、今後検証地域を広げ、各パラメータと海洋底変質のグローバルなトレンドを明らかにするとともに,沈み込み帯への各元素の供給量を定量的に評価する。
Pietruszka et al. 2013, Earth and Planetary Science Letters.
Kelley et al. 2003, Geochemistry, Geophysics, Geosystems.
Matsuno et al. 2022, Scientific Reports.
変質玄武岩の組成データは、北西太平洋(i.e., N10−35°, E140-160°)・南太平洋(i.e., S10-50°, W100-180°)の7つの深海掘削サイトから得られた計237試料の16元素(Rb, Ba, U, K, La, Ce, Pb, Sr, Nd, Y, Yb, Lu, Zr, Th, Ti, Nb)を先行研究からコンパイルした。各変質岩試料に対する原岩の組成は、機械学習モデルをベースとした原岩組成復元モデル(Matsuno et al. 2022)によって決定し、元素移動量を定量的に推定した。変質岩に残された原岩の痕跡として使用する不動元素は、Zr・Th・Ti・Nb とし、それ以外の12 元素の移動量を推定した。解析する2つの地域は、年代および堆積物の堆積速度が対照的であり(太平洋西部:130-170Myr、15mm/yr;太平洋南部:13.5-103.7Myr、0.01-0.1mm/yr)、これらのパラメータが海洋底変質へ与える影響を評価するのに適している。
各地域で推定された元素移動量からは、Rb・Ba・U・K・Pbで最大100倍の元素付加が見られる一方で、La・Ce・Sr・Nd・Y・Yb・Luでは元素移動が見られなかった。元素の付加が見られる物のうち、Rb・Kは、両地域で強い相関を持ち(R=0.842)、Saponiteなどの変質鉱物量比と相関が見られる(R〜0.5)。より年代が古い試料で付加傾向にあることから、海水との反応時間が変質鉱物の生成に伴うRb・Kの付加を促進すると考えられる。南太平洋地域では、Rb、Kが付加された試料において、Calcite veinと赤茶色の変色と共にBa・U・Pbの元素付加が見られた。その一方で、Pbの付加形態には、Calcite veinと赤茶色の変色を伴う場合と、変色などの特徴を持たない場合があり、後者の場合ではPbのみが付加していた。北西太平洋地域では、UとPbがそれぞれ独立した付加トレンドを示し、Uが付加されている試料では、変質鉱物に富む一方、Pbが付加されている試料では、南太平洋地域と同様に目立った特徴が見られなかった。北西太平洋地域の深さ521m-638mでは、Hydrothermal depositに伴うPbの付加が見られる一方で、その他では最大50%の溶脱が発生していた。両地域では、U・Pbの付加形態が異なるが、堆積速度に伴う堆積物の厚さの影響が考えられる。堆積速度の低い南太平洋では、堆積物の層が薄いため、継続的に酸化的な海水が供給される環境下での海水循環が起こる一方、堆積速度の高い北西太平洋では、堆積物の層が厚いため、プレート内での熱水循環が起きると考えられ、このような水の供給源・循環形態の違いが元素の付加・溶脱形態へ反映されている可能性がある。現在は、2地域7サイトから得られた試料の解析にとどまっているが、今後検証地域を広げ、各パラメータと海洋底変質のグローバルなトレンドを明らかにするとともに,沈み込み帯への各元素の供給量を定量的に評価する。
Pietruszka et al. 2013, Earth and Planetary Science Letters.
Kelley et al. 2003, Geochemistry, Geophysics, Geosystems.
Matsuno et al. 2022, Scientific Reports.