3:30 PM - 3:45 PM
[T11-O-25] Roles in reef construction of microencrusters in the Panthalassan
Torinosu Limestone (Upper Jurassic) from Yura area, Wakayama Prefecture
Keywords:Late Jurassic, Panthalassa, reef, Torinosu Limestone, micoencrusters
後期ジュラ紀の礁はテチス海と古太平洋に広く分布しているが,従来,ヨーロッパに分布するテチス海の礁の形成様式が重点的に研究されてきた(e.g., Leinfelder et al., 1993).後期ジュラ紀に特徴的な礁の形成様式や海洋環境を理解するためには,両海域からの情報が必要である.本発表では,古太平洋で形成された鳥巣石灰岩の中でも,大型造礁骨格生物の産出が豊富な和歌山県由良地域に着目し,被覆性微生物類が礁の構築に果たす役割を検討する.
由良地域からは,層孔虫や六射サンゴ,ケーテテスなどの大型造礁骨格生物が豊富に産出する.被覆性微生物類として,Lithocodium,Bacinella,Girvanella,Ortonella,Thaumatoporellaが認められるが,その中でLithocodiumが最も占有的である.Lithocodiumは,内部の袋状構造とそこから複数分岐するフィラメント構造が発達する周囲のミクライト質の壁によって特徴付けられる.Lithocodiumは,主に層状ケーテテスの側面及び成長末端部を被覆するが,塊状群体六射サンゴの側面にも認められる.成長末端部を被覆するLithocodiumが微生物起源のミクライトと繰り返し累積したり,さらに層孔虫によって被覆される場合も観察される.Bacinellaは,スパーセメントで充填された不規則な網目状構造で特徴付けられる.Bacinellaは,ケーテテスの側面及び成長末端部を被覆するLithocodiumの袋状構造及びフィラメント構造を穿孔する場合がある.また,ドーム状層孔虫を放射状に分岐しながら穿孔するBacinellaを,さらに層状の層孔虫や微生物起源のミクライトが被覆する場合もある.Girvanellaはフィラメント状で特徴付けられる.Girvanellaは,層状ケーテテス内部の空隙の側面を成長方向に沿って充填する場合が認められ,その成長末端部で顕著である.Ortonellaは,フィラメントが束状に集合しドーム状を示す.Ortonellaは,層孔虫の側面を直接被覆する場合が観察される.最後に,Thaumatoporellaは,小胞が側方に連なる壁状の構造を示す.Thaumatoporellaと層状に広がる微生物起源のミクライトが繰り返し被覆する場合が観察される.
Lithocodiumなどの被覆性微生物類は,ケーテテスや六射サンゴなどの大型造礁骨格生物や他の種類の微生物類を被覆または穿孔する場合が認められ,骨格生物の枠組みを強固にする役割を果たしたと考えられる.さらに,層孔虫などの大型造礁骨格生物によってLithocodiumやBacinellaが被覆されることから,被覆性微生物類は大型造礁骨格生物が固着・被覆するための基盤を提供したと推察される.被覆性微生物類間などに認められる微生物起源のミクライトも被覆性微生物類と同程度に豊富であり,礁の構築には量的にも重要な役割を果たしている.
今後,さらに由良地域に分布する鳥巣石灰岩を広く検討し,被覆性微生物類の生態やそれらと大型造礁骨格生物の相互関係(例えば,Lithocodiumとケーテテスの優先的な被覆関係)及び礁の形成に果たした役割をより詳しく検討していく必要がある.
引用文献
Leinfelder, R.R., Nose, M., Schmid, D.U., & Werner, W. (1993). Microbial crusts of the Late Jurassic: composition, palaeoecological significance and importance in reef construction. Facies, 29, 195-229.
由良地域からは,層孔虫や六射サンゴ,ケーテテスなどの大型造礁骨格生物が豊富に産出する.被覆性微生物類として,Lithocodium,Bacinella,Girvanella,Ortonella,Thaumatoporellaが認められるが,その中でLithocodiumが最も占有的である.Lithocodiumは,内部の袋状構造とそこから複数分岐するフィラメント構造が発達する周囲のミクライト質の壁によって特徴付けられる.Lithocodiumは,主に層状ケーテテスの側面及び成長末端部を被覆するが,塊状群体六射サンゴの側面にも認められる.成長末端部を被覆するLithocodiumが微生物起源のミクライトと繰り返し累積したり,さらに層孔虫によって被覆される場合も観察される.Bacinellaは,スパーセメントで充填された不規則な網目状構造で特徴付けられる.Bacinellaは,ケーテテスの側面及び成長末端部を被覆するLithocodiumの袋状構造及びフィラメント構造を穿孔する場合がある.また,ドーム状層孔虫を放射状に分岐しながら穿孔するBacinellaを,さらに層状の層孔虫や微生物起源のミクライトが被覆する場合もある.Girvanellaはフィラメント状で特徴付けられる.Girvanellaは,層状ケーテテス内部の空隙の側面を成長方向に沿って充填する場合が認められ,その成長末端部で顕著である.Ortonellaは,フィラメントが束状に集合しドーム状を示す.Ortonellaは,層孔虫の側面を直接被覆する場合が観察される.最後に,Thaumatoporellaは,小胞が側方に連なる壁状の構造を示す.Thaumatoporellaと層状に広がる微生物起源のミクライトが繰り返し被覆する場合が観察される.
Lithocodiumなどの被覆性微生物類は,ケーテテスや六射サンゴなどの大型造礁骨格生物や他の種類の微生物類を被覆または穿孔する場合が認められ,骨格生物の枠組みを強固にする役割を果たしたと考えられる.さらに,層孔虫などの大型造礁骨格生物によってLithocodiumやBacinellaが被覆されることから,被覆性微生物類は大型造礁骨格生物が固着・被覆するための基盤を提供したと推察される.被覆性微生物類間などに認められる微生物起源のミクライトも被覆性微生物類と同程度に豊富であり,礁の構築には量的にも重要な役割を果たしている.
今後,さらに由良地域に分布する鳥巣石灰岩を広く検討し,被覆性微生物類の生態やそれらと大型造礁骨格生物の相互関係(例えば,Lithocodiumとケーテテスの優先的な被覆関係)及び礁の形成に果たした役割をより詳しく検討していく必要がある.
引用文献
Leinfelder, R.R., Nose, M., Schmid, D.U., & Werner, W. (1993). Microbial crusts of the Late Jurassic: composition, palaeoecological significance and importance in reef construction. Facies, 29, 195-229.