129th Annual Meeting of the Geological Society of Japan

Presentation information

Session Oral

G1-3. sub-Session 03

[2oral511-19] G1-3. sub-Session 03

Mon. Sep 5, 2022 1:30 PM - 3:45 PM oral room 5 (Build. 14, 402)

Chiar:Takeshi Yoshida, Hidekazu Yoshida, Shinji Takeuchi

2:30 PM - 2:45 PM

[G3-O-9] Characteristics of mass transport within the Toki granite, central Japan: Result of through diffusion experiment

*Eiji Sasao1, Hiroaki Murakami1, Yusuke Ozaki3, Takashi Yuguchi2 (1. Tono Geoscience Center, JAEA, 2. Faculty of Science, Yamagata University, 3. Horonobe Underground Research Center, JAEA)

Keywords:Toki granite, through diffusion experiment, transport

はじめに
 地下深部では,物質移動経路周辺の母岩への元素のマトリクス拡散や収着により,物質の希釈や移動の遅延が起こるため,マトリクス拡散の理解は重要な課題の一つである。
 岐阜県南東部に分布する土岐花崗岩では,岩石ブロックを用いた拡散試験が行われ,岩石ブロックの中心部に設置されたトレーサー添加孔にウラニン(フルオレセンナトリウム)を添加してから約13か月後にトレーサー添加孔から数十mm の範囲でウラニンが分布すること,ウラニンは主に斜長石内部で認められることが明らかにされている(石橋ほか,2016)。この結果は,鉱物内部の微小空隙が数cm以上にわたって連結することを示唆する。
 土岐花崗岩では,主に斜長石とカリ長石の内部に微小空隙が見出されている(Yuguchi et al., 2019,2022)。そこで,鉱物中の微小空隙が物質移動特性に及ぼす影響を明らかにするための最初のステップとして,空隙率測定と透過拡散試験を行った。本発表では,その結果を報告する。

実施内容
 本研究では,岐阜県瑞浪市に所在した瑞浪超深地層研究所の換気立坑に沿って掘削されたボーリングコア,13試料を使用した。試料は地表からの深度約200m~約530mの範囲のもので,すべて土岐花崗岩である。空隙率測定と透過拡散試験には,採取したコアから直径25mm,厚さ5mmの円盤状に加工・研磨した試料を使用した。
 空隙率は,山口ほか(1999)に従い,水飽和法で測定した。
 透過拡散試験では,アクリル製の試料ホルダーにエポキシ樹脂を用いて測定試料を固定した後,試料ホルダーの両側に2つの容器(高濃度側リザーバー・低濃度側リザーバー)を密着させた。高濃度側リザーバーにはトレーサーとして塩化ルビジウム(RbCl)・塩化バリウム(BaCl2)を各1mmol/Lとウラニンを500mg/Lを含む溶液を, 低濃度リザーバーには超純水を各々約100 mL満たした。試験中の濃度変化は,低濃度側リザーバーから5mL溶液を分取し,ウラニン,Ba,Rb,Clの濃度測定により把握した。なお,低濃度リザーバーから溶液を分取した後は水頭差が出ないよう,超純水を5mL添加し,希釈されたトレーサー濃度は計算で補正した。透過拡散試験は151日間(3623時間)行い,この間に12回,溶液を採取した。

結果
 透過拡散試験の結果から得られた低濃度側リザーバーの各トレーサーの濃度変化を1次元有限差分法で計算し,計算結果と観測結果の誤差を最小化することで実効拡散係数Deと収着容量αを算出した。誤差の最小化処理はNelder-Mead法(Nelder and Mead 1965)に基づいた.
 各トレーサーのDeの平均値は以下の通りとなった(括弧内は最小値と最大値を示す);ウラニン:3.0×10-13(3.5×10-14~1.1×10-12),Ba:3.7×10-13(1.0×10-13~1.0×10-12),Rb:1.3×10-12(4.4×10-13~2.3×10-12),Cl:8.6×10-13(2.6×10-13~1.9×10-12)。また,αの平均値は以下の通りである;ウラニン:0.003(0.00002~0.02),Ba:0.44(0.00001~0.92),Rb:0.53(0.00002~1.33),Cl:0.001(0.00001~0.02)。
 この結果,ウラニンのDeが比較的小さく,RbのDeは比較的大きいことがわかった。また,αについては陽イオンで大きく,ウラニンと陰イオンで小さい。陽イオンのαが高いのは,微小空隙周辺に収着されることによる陽イオン加速の効果のためと考えられる。また,陰イオンのαが低いのは,微小空隙周辺に収着されず,かつ鉱物表面の電気二重層表面が負に帯電していることによる陰イオン排除効果のためと考えられる。
 一方で,空隙率とDeやαとの間には相関は認められなかった。この点については,今後,鉱物レベルでの空隙の分布や連続性を調査し,鉱物中の微小空隙と物質移行の関係を検討する予定としている。

 本研究はJSPS科研費21H01865の助成を受けたものです。また,元素分析は原子力機構東濃地科学センター年代測定技術開発グループの皆様にお願いしました。ここに記して感謝します。

文献
石橋ほか(2016)原子力バックエンド研究,23,121–130.
Nelder and Mead(1965)Comput. J.,7,308–313.
山口ほか(1999)放射性廃棄物研究,3,99–107.
Yuguchi, et al.(2019)Am. Mineral.,104,536–556.
Yuguchi, et al.(2022)Am. Mineral.,107,476–488.