129th Annual Meeting of the Geological Society of Japan

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Session Oral

G1-3. sub-Session 03

[2oral511-19] G1-3. sub-Session 03

Mon. Sep 5, 2022 1:30 PM - 3:45 PM oral room 5 (Build. 14, 402)

Chiar:Takeshi Yoshida, Hidekazu Yoshida, Shinji Takeuchi

3:15 PM - 3:30 PM

[G3-O-12] Hydro-mechanical characterization of calcium carbonate concretions

*Shinji Takeuchi1, Satoshi Goto1, Sachiko Nakamura2, Hidekazu Yoshida2 (1. Nihon University, 2. Nagoya University)

Keywords:calcium carbonate concretion, hydraulic properties, mechanical properties

1.はじめに
 近年の研究により,炭酸塩コンクリーションは海底堆積物中に埋没した生物遺骸から拡散した有機酸と海水中のカルシウムイオンとの過飽和・沈殿反応により,数年~数十年という地質学的に極めて短期間で形成された(Yoshida et al., 2015など).このコンクリーションは形成後,数万年~数千万年の長期間に渡って安定的に存在することから,この特性を地下構造物の亀裂などの空隙構造へのシーリングに応用することが検討されている.しかし,シーリング機能を工学的観点から評価する上で重要な水理・力学特性が検討された事例はほとんどない.そこで本研究では,天然の炭酸塩コンクリーションを用いて,透水特性や硬度特性に関する検討を行なった.対象とした試料は,神奈川県三浦半島に分布する前~中期中新世の葉山層群および岐阜県瑞浪市に分布する中新世瑞浪層群から採取した炭酸塩コンクリーションである.対象地域の葉山層群は付加体で(Yamamoto et al.,2017)),瑞浪層群は内湾性の環境で(入月・細山,2006),それぞれ形成されたと考えられている.
2.試験方法
 水理特性は,空隙率測定と変水位透水試験により行なった.空隙率測定は,岩石片試料の乾燥重量と湿潤重量及び体積を測定することで算出した.また,変水位透水試験は,コンクリーション部と周辺母岩部の試料を直径5cm,厚さ約3cmの円筒形に成型し,JIS A 1218に準拠して実施した. 力学特性は,Proceq社のエコーチップ硬さ試験装置(EQUITIP3®)を用いた.この装置は超鋼製のボールチップの試料表面への打撃速度と跳ね返り速度の比から硬度(HL値)を求めるものであり,HL値は一軸圧縮強度と相関性を有する(川崎ほか,2002).
3.実施結果
3-1.水理特性
(1) 空隙率: 採取したコンクリーションおよび周辺母岩の空隙率を測定した結果,葉山層群のコンクリーションの空隙率は1.5~2.0%,周辺母岩は45~55%であった.また,瑞浪層群のコンクリーションは3.0~8.0%,周辺母岩では30~40%であった.コンクリーション部は周辺母岩よりも一桁程度低い空隙率を示しており,緻密であることが分かる.
(2) 室内透水試験 :変水透水試験の結果,葉山層群中の軟質のコンクリーションの透水係数は約8.0×10-8(m/s)であり,コンクリーションの周辺母岩の透水係数は約2.0×10-7(m/s)であった.また,葉山層群中の硬質のコンクリーションは,2.0~3.5×10-9(m/s)の透水係数を示した.一方,瑞浪層群のコンクリーションは,9.5×10-10~8.5×10-9(m/s)の値を示した.
3-2.硬度測定
 エコーチップでの硬度測定の結果,全ての試料においてコンクリーション中心部から同外縁部,さらには周辺母岩部に向けて硬度(HL値)が低下する傾向を示した.また,個々の試料におけるコンクリーション部のHL値は概ね同等の値を示した.さらに硬質のコンクリーションでは両地域で同程度のHL値(700~800)を示した.
4まとめ
 中新統の葉山層群および瑞浪層群中のコンクリーションと周辺母岩を対象に,水理・力学特性について検討した結果,コンクリーション部の空隙率,透水係数,硬度は一部の軟質の試料を除けば両層群ともに同程度で,周辺母岩と比較して透水係数,間隙率は低く,硬度はより高いことが明らかとなった.両層はほぼ同じ地質年代で,付加体と内湾性の堆積物という形成環境の違いはあるものの水理・力学特性に関わる物性値は同程度であることから,生命体の死滅後,短期間で硬化したコンクリーションは堆積環境やその後の変形作用の影響を大きく受けることなく,長期間にわたって安定的に存在したことを示唆している.この特性は,コンクリーションの長期間のシーリング性能の健全性を工学的に評価する上で重要な知見である.
文献)
入月俊明・細山光也(2006)日本地方地質誌4 中部方,pp.368-369,朝倉書店.
Yamamoto Y. et al.(2017) Techtonophysics, 710, pp81-87.
川崎 了ほか(2004)応用地質,43, 4 ,pp.244-248.
Yoshida H. et al.(2015) Scientific Reports, doi:10.1038/srep14123.