10:30 AM - 10:45 AM
[G7-O-3] Age and frequency of turbidite deposition in the Nankai Trough - A study using nondestructive analyses of physical property and element composition, and radiocarbon dating -
Keywords:turbidite, Nankai Trough, paleoearthquake
南海トラフでは,古文書・遺跡・津波堆積物の研究から繰り返し発生する海溝型巨大地震が報告されているが,海域からの古地震の情報は限られる(Garrett et al., 2016, Earth-Science Reviews).海底試料の分析が進めば,より長期にわたるセグメントごとの破壊の時空間分布が解明されると考えられる.最近では2020年に表層科学掘削プログラム(SCORE)が東海沖で行われ,平均して200年間隔のタービダイトの挟在の報告があるが(池原ほか,2020,GSJ地質ニュース),より広域にわたる試料を用いた研究が必要な状況にある.
本研究では,南海トラフの志摩半島沖から潮岬沖のコア試料において,X線CT画像・帯磁率等の非破壊物性測定,XRFコアスキャナーを用いた非破壊元素濃度分析を行い細粒タービダイトの認定を行った.また,浮遊性有孔虫に加えて全有機炭素(TOC)の放射性炭素年代を用いて堆積年代を求めた.X線CTスキャナは肉眼で識別が困難な細粒タービダイトも明瞭に捉えられるが,生物擾乱を受けた層ではその認定が困難である.そのような場合でも帯磁率や元素濃度(Fe, Ca, K, Mn, Br等)の増減の傾向からタービダイトの存在を推定することができる.さらに肉眼では判別困難なタービダイトの泥質部と半遠洋性泥の境界を後者の方が元素濃度の変動が小さいことから境界位置の推定ができる.ただし,タービダイトの元素濃度の増減の傾向は地点ごとで異なり,供給源の堆積物の違いを反映しているものとみられる.
年代決定ではタービダイト直下の半遠洋性泥中の浮遊性有孔虫殻の放射性炭素年代がよく用いられるが,測定に十分な量の有孔虫が得られないことが多い.そのため堆積物の全有機炭素(以下,TOC)の放射性炭素年代を本研究では用いたが,様々な起源の有機物に由来するため年代決定の信頼性に問題がある.そこで,多点での浮遊性有孔虫とTOCの放射性炭素年代を比較し両者の年代差を調べた.その結果,志摩半島沖では報告済みの新宮沖(中澤ほか,2018,地質学会要旨)や熊野沖(三浦ほか,2020,地震学会要旨)と同じくその差は1,000から1,600年ほどTOCの方が古い年代となり,潮岬沖ではその差が2,000年前後となった.しかし,各地点内では年代差に系統的な変化が認められないため,TOCの放射性炭素年代値から該当する年代差を引くことにより堆積年代が求められ,他の手法に比べて連続的な年代の推定が可能であることを示した.
各種分析で推定したタービダイトの枚数と堆積年代をまとめた結果,志摩半島沖では12,000〜20,000年の期間において150〜200年に1回程度のタービダイトの挟在が推定された.しかし,若い年代ではタービダイトの挟在がほとんど見られなかった.この地点の北20 kmの地点では,3,000〜4,000年前の時期において最短170年,最長 680年間隔のタービダイトの堆積が報告されており(池原,1999,堆積学研究),タービダイトの堆積範囲が完新世以降に陸側へ縮小したことに起因していると考えられる.潮岬沖では現在から1万年前の期間において300年に1回程度のタービダイトの挟在が推定された.南海トラフ海域で報告されているプレート境界地震の発生間隔と比較すると少ない頻度となっている.これは,地震の規模と震源との距離(Usami et al., 2018, Geoscience Letters)や供給源となる地層の状態(堆積物が準備されているかどうか)などが影響するため,地震履歴を評価するためには多点の試料を用いた研究が必要である.
本研究は,令和3年度原子力施設等防災対策等委託費(海域の古地震履歴評価手法に関する検討)事業の受託研究の一部として実施された.
本研究では,南海トラフの志摩半島沖から潮岬沖のコア試料において,X線CT画像・帯磁率等の非破壊物性測定,XRFコアスキャナーを用いた非破壊元素濃度分析を行い細粒タービダイトの認定を行った.また,浮遊性有孔虫に加えて全有機炭素(TOC)の放射性炭素年代を用いて堆積年代を求めた.X線CTスキャナは肉眼で識別が困難な細粒タービダイトも明瞭に捉えられるが,生物擾乱を受けた層ではその認定が困難である.そのような場合でも帯磁率や元素濃度(Fe, Ca, K, Mn, Br等)の増減の傾向からタービダイトの存在を推定することができる.さらに肉眼では判別困難なタービダイトの泥質部と半遠洋性泥の境界を後者の方が元素濃度の変動が小さいことから境界位置の推定ができる.ただし,タービダイトの元素濃度の増減の傾向は地点ごとで異なり,供給源の堆積物の違いを反映しているものとみられる.
年代決定ではタービダイト直下の半遠洋性泥中の浮遊性有孔虫殻の放射性炭素年代がよく用いられるが,測定に十分な量の有孔虫が得られないことが多い.そのため堆積物の全有機炭素(以下,TOC)の放射性炭素年代を本研究では用いたが,様々な起源の有機物に由来するため年代決定の信頼性に問題がある.そこで,多点での浮遊性有孔虫とTOCの放射性炭素年代を比較し両者の年代差を調べた.その結果,志摩半島沖では報告済みの新宮沖(中澤ほか,2018,地質学会要旨)や熊野沖(三浦ほか,2020,地震学会要旨)と同じくその差は1,000から1,600年ほどTOCの方が古い年代となり,潮岬沖ではその差が2,000年前後となった.しかし,各地点内では年代差に系統的な変化が認められないため,TOCの放射性炭素年代値から該当する年代差を引くことにより堆積年代が求められ,他の手法に比べて連続的な年代の推定が可能であることを示した.
各種分析で推定したタービダイトの枚数と堆積年代をまとめた結果,志摩半島沖では12,000〜20,000年の期間において150〜200年に1回程度のタービダイトの挟在が推定された.しかし,若い年代ではタービダイトの挟在がほとんど見られなかった.この地点の北20 kmの地点では,3,000〜4,000年前の時期において最短170年,最長 680年間隔のタービダイトの堆積が報告されており(池原,1999,堆積学研究),タービダイトの堆積範囲が完新世以降に陸側へ縮小したことに起因していると考えられる.潮岬沖では現在から1万年前の期間において300年に1回程度のタービダイトの挟在が推定された.南海トラフ海域で報告されているプレート境界地震の発生間隔と比較すると少ない頻度となっている.これは,地震の規模と震源との距離(Usami et al., 2018, Geoscience Letters)や供給源となる地層の状態(堆積物が準備されているかどうか)などが影響するため,地震履歴を評価するためには多点の試料を用いた研究が必要である.
本研究は,令和3年度原子力施設等防災対策等委託費(海域の古地震履歴評価手法に関する検討)事業の受託研究の一部として実施された.