10:30 AM - 10:45 AM
[T6-O-8] (Invited)Tectonic reconstruction of the Honshu Arc: Constraints from zircon U-Pb ages and whole-rock geochemistry of the granitic rocks from the Sea of Japan
Keywords:Sea of Japan, Granites, Zircon age, Backarc spreading
日本海は中期中新世にユーラシア大陸東縁の大陸リフト・背弧海盆として形成され、日本列島形成において最も重要なテクトニックイベントである。日本海の背弧海盆としての特徴は起伏に富んだ複雑な海底地形を示すことであり、Tamaki (1988)は海底地形・地質と地震波構造探査の検討から、日本海北部の平坦な水深3,000 m前後の日本海盆は背弧拡大で形成された海洋地殻から構成されているのに対し、大和堆に代表されるような中~南部に分布している地形的な高まりは、リフティングによって分断された大陸地殻である可能性を指摘している。実際にこれらの高まりからは、花崗岩・変成岩・流紋岩などの大陸・島弧的な岩石が採集されている(例えば新野, 1933)。
日本海拡大のタイミングについて、星(2018)は拡大に伴う西南日本の回転運動は18~16 Maの間に起こり、15 Maには回転が終了していたことを古地磁気と年代の再検討から示した。一方で海盆底から掘削された玄武岩の年代測定から、海盆は20 Ma頃あるいはそれ以前から拡大開始しており(Kaneoka et al., 1992)、回転運動を伴わない前駆的なリフティングが漸新世から起こっていたことも明らかになっている。
海盆内の高まりから採集された花崗岩類からは主にジュラ紀~白亜紀のK-Ar年代が報告されており(例えばLelikov and Pugachev, 2016)、朝鮮半島・沿海州や西南日本に分布する同時代の花崗岩類と一連の活動によって形成された可能性が示唆されているが、Kaneka and Yuasa (1988)は佐渡島北東沖の向瀬で採集された花崗岩から22 MaのAr-Ar年代を得ており、リフティングに伴う花崗岩質マグマ活動の存在も示唆されている。
日本列島に分布する地質帯の起源・成因解明には、日本海拡大以前の本州弧(西南日本・東北日本)と中国大陸・朝鮮半島との位置関係が鍵となる。日本海の拡大史を明らかにするためには海盆内の高まりの地殻構造と形成年代を制約することが重要であり、本研究では1970~1980年代に旧地質調査所が日本海において実施したドレッジ調査によって採取された花崗岩類について、記載岩石学・全岩化学組成分析に加えて国立極地研究所設置の高分解能二次イオン質量分析計(SHRIMP-II)を用いたジルコンU-Pb年代測定を実施した。
その結果、拓洋堆・北隠岐堆・朝鮮海台から採集された花崗岩類からは拓洋堆(270 Ma)・北隠岐堆(179 Ma)・朝鮮海台(177 Ma)のペルム紀~ジュラ紀の年代が得られた。これは飛騨帯における2回の花崗岩質マグマ活動時期(ペルム紀~三畳紀とジュラ紀)(例えばHorie et al., 2010)と対応しており、さらには最近Isozaki et al. (2021)が報告した沿海州のLaoelin-Grodekov帯の花崗岩類の活動時期(約250 Ma)とも一致することから、日本海拡大前にはこれらの地域が一連の地質帯であったことを強く示唆している。一方で大和堆南部から採取された花崗閃緑岩からは25 Maの年代が得られ、日本海拡大初期のリフティングに伴う花崗岩質マグマ活動が存在していることも明らかになった。この時期の花崗岩は本州弧あるいは大陸側においてもほとんど報告されておらず、リフティング初期において局所的に活動した可能性が高い。
本研究では日本海花崗岩類の岩石学・地球化学的特徴とその年代について、飛騨帯・ユーラシア大陸東縁部のものと対比を行い、その起源について検討する。
Horie et al. (2010) Precambrian Research, 183, 145–157.
星博幸 (2018) 地質学雑誌, 124, 675–691.
Isozaki et al. (2021) Bulletin of the National Museum of Nature and Science. Series C, 47, 25–39.
Kaneoka & Yuasa (1988) Geochemical Journal, 22, 195–204.
Kaneoka et al. (1992) Proceedings of the Ocean Drilling Program, Scientific Results, 127/128, 819-836.
Lelikov & Pugachev (2016) Petrology, 24, 196–213.
新野弘 (1933) 地質学雑誌, 40, 86–100.
Tamaki, K. (1988) Bulletin of the Geological Survey of Japan, 39, 269-365.
日本海拡大のタイミングについて、星(2018)は拡大に伴う西南日本の回転運動は18~16 Maの間に起こり、15 Maには回転が終了していたことを古地磁気と年代の再検討から示した。一方で海盆底から掘削された玄武岩の年代測定から、海盆は20 Ma頃あるいはそれ以前から拡大開始しており(Kaneoka et al., 1992)、回転運動を伴わない前駆的なリフティングが漸新世から起こっていたことも明らかになっている。
海盆内の高まりから採集された花崗岩類からは主にジュラ紀~白亜紀のK-Ar年代が報告されており(例えばLelikov and Pugachev, 2016)、朝鮮半島・沿海州や西南日本に分布する同時代の花崗岩類と一連の活動によって形成された可能性が示唆されているが、Kaneka and Yuasa (1988)は佐渡島北東沖の向瀬で採集された花崗岩から22 MaのAr-Ar年代を得ており、リフティングに伴う花崗岩質マグマ活動の存在も示唆されている。
日本列島に分布する地質帯の起源・成因解明には、日本海拡大以前の本州弧(西南日本・東北日本)と中国大陸・朝鮮半島との位置関係が鍵となる。日本海の拡大史を明らかにするためには海盆内の高まりの地殻構造と形成年代を制約することが重要であり、本研究では1970~1980年代に旧地質調査所が日本海において実施したドレッジ調査によって採取された花崗岩類について、記載岩石学・全岩化学組成分析に加えて国立極地研究所設置の高分解能二次イオン質量分析計(SHRIMP-II)を用いたジルコンU-Pb年代測定を実施した。
その結果、拓洋堆・北隠岐堆・朝鮮海台から採集された花崗岩類からは拓洋堆(270 Ma)・北隠岐堆(179 Ma)・朝鮮海台(177 Ma)のペルム紀~ジュラ紀の年代が得られた。これは飛騨帯における2回の花崗岩質マグマ活動時期(ペルム紀~三畳紀とジュラ紀)(例えばHorie et al., 2010)と対応しており、さらには最近Isozaki et al. (2021)が報告した沿海州のLaoelin-Grodekov帯の花崗岩類の活動時期(約250 Ma)とも一致することから、日本海拡大前にはこれらの地域が一連の地質帯であったことを強く示唆している。一方で大和堆南部から採取された花崗閃緑岩からは25 Maの年代が得られ、日本海拡大初期のリフティングに伴う花崗岩質マグマ活動が存在していることも明らかになった。この時期の花崗岩は本州弧あるいは大陸側においてもほとんど報告されておらず、リフティング初期において局所的に活動した可能性が高い。
本研究では日本海花崗岩類の岩石学・地球化学的特徴とその年代について、飛騨帯・ユーラシア大陸東縁部のものと対比を行い、その起源について検討する。
Horie et al. (2010) Precambrian Research, 183, 145–157.
星博幸 (2018) 地質学雑誌, 124, 675–691.
Isozaki et al. (2021) Bulletin of the National Museum of Nature and Science. Series C, 47, 25–39.
Kaneoka & Yuasa (1988) Geochemical Journal, 22, 195–204.
Kaneoka et al. (1992) Proceedings of the Ocean Drilling Program, Scientific Results, 127/128, 819-836.
Lelikov & Pugachev (2016) Petrology, 24, 196–213.
新野弘 (1933) 地質学雑誌, 40, 86–100.
Tamaki, K. (1988) Bulletin of the Geological Survey of Japan, 39, 269-365.